途切れた集中、回復するのに27分。作業環境は「邪魔されない」でデザインすべし!

「やろうと思ったことがちっとも進まない!」目の前の作業に集中しようと決めても、突如スマホやパソコンの画面に現れるSNSの通知に気をそらされ、作業を中断してしまうことはありませんか。ほんの少しだけSNSをチェックするつもりが、気が付くと何十分も経っていたという経験をしたことがある方も少なくないはずです。

このように注意散漫になってしまうとき、みなさんはうまく対処することができていますか。瞑想する、ガムを噛むなど、集中するためのテクニックはいろいろと説かれていますが、今回ご紹介するのは「デザインで解決する」という集中法。

世界では、人の注意散漫をデザインで解決しようという新しい取り組みが行われつつあります。集中の仕組みを心理学的に捉え、それを補うことができるデザインが生み出されているのです。

集中力に関する悩みをデザインで解決するとはどういうことなのか、私たちが実践できることは何か、実例を交えてご紹介します。

チャットアプリへのひと工夫

私たちが一度集中を切らすと、再び集中した状態に戻るのにかかる時間はどれくらいだと思いますか? カリフォルニア大学アーバイン校で情報科学を研究するグロリア・マーク氏によれば、人が集中した状態で知的活動を行っているときに、それを遮るような刺激を与えられると、再び集中した状態に戻るまでに23分要するのだそうです。

こうした研究からは、少しだけSNSを確認するつもりが20~30分くらいならあっという間に経ってしまうということはいたって当然の現象であることがわかりますね。

特にチャットアプリなどでこの現象が起こりやすい原因は、チャットアプリがメッセージの送受信を容易にすることだけを目的として作られているからである。このように分析するのは、Google傘下のAptureという企業のCEOを務めたのち、現在はデザイナーとして活躍するトリスタン・ハリス氏です。

彼は、新しいチャットアプリのデザインは「思いやりを基本としたもの」であるべきだと提言しています。彼の描く理想のチャットアプりのデザインを、具体的なシーンを想定して見ていきましょう。

ジョンがナンシーに、チャットアプリで連絡を取ろうと思っている。一方のナンシーは、現在勉強中で、どうしても集中していたい。そのため彼女は、SNSの画面にある「集中ボタン」を押しておいた。ジョンが「あのファイルを送って」とナンシーにメッセージを送ったが、彼の画面には「いまナンシーは集中しているため、それが解除されるまでメッセージは保留しておきます」との表示。ナンシーは集中力を乱されることなく、勉強に没頭し続ける……。

チャットアプリに、こうした思いやりの機能がデザインされていれば、お互いの注意を乱すことがないのでとても便利であるといえます。このように、使い手の求める機能をデザインによって達成しようという流れが起こりつつあるのです。

皆さんがお使いのチャットアプリにこうした機能が無いとしても、少しのことで同様の効果を得ることはできます。例えば、○時までは集中して勉強すると決めたら、Twitterで宣言しておく。その時間まではスマートフォンの電源を切っておく。機内モードなどにしてネットワークを遮断しておく。集中するには「ツールのデザイン」にもひと工夫が必要なのです。

集中力を持続させるための学習環境

家具デザイン会社Steelcaseのプロダクトマネージャーであるマーク・ウォルターズ氏は、集中力とデザインの関係にいち早く注目し、家具で生活を支えることを思いつきました。彼は大学で自習する学生を見て、次のように語っています。

私たちは学生が複数のラウンジ家具を移動しながら、環境を変えているのを目にした。彼らは集中できるように家具を動かして、外界からの邪魔を排除しようとしただけでなく、デバイスや資料が見やすいようにラウンジの位置も変えていた。チェアを座るだけのものではなく、作業面としても利用していた。

(引用元:Steelcase|「注意力散漫対策」としてのデザイン

このような潜在的なニーズを元に生み出された学習用家具には、周りを誰かが歩いても気にならないような個別ブース型に設計されたものや、机が傾斜になっておりパソコンを使った作業に適したもの等があり、単なる機能以上の使い心地が実現されています。

皆さんも集中力を持続させたいときには、デスク周りの環境をアレンジしてみてはいかがでしょう。本棚に余計な本や漫画は置かない。つい音楽をかけたくなるなら、プレイヤーを机の上に出しておかない。自分のことを誘惑するあらゆるものは、作業するときの視界から取り除くのです。長期的にその環境で集中し続けることを想定して、思い切って部屋の模様替えをしてみてもいいかもしれません。

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デザインとは、問題を解決すること

チャットアプリや学習用家具の例で見たように、デザインは、これまで担ってきた以上の性質を帯びるようになってきました。

デザインの最初の目的は「最小限の機能性」です。ペンだったら書けるということが設計の必須条件になります。

第2の目的は「付加的な機能性」。この段階で追求するのは、単に書けるペンを作るだけでなく、より軽くすることやインクの無駄をなくすなどの工夫。このように製品本来の機能を高める進化を「プロダクトアウト」と言います。

そして最後の目的は「製品の基本的な役割以上の機能性」です。ここでは、使い手の求める機能を達成することや、不便を解消することを目指して製品を改良する「マーケットイン」という手法を用います。先ほどの学習用家具の例でいえば、本来、机の役割に「集中力を長持ちさせる」という機能はありませんが、集中できないという不便を解消するために、集中力を高めるための工夫をこらした製品が作られたのです。

Steelcaseの副社長ジェームス・ルドウィグ氏は、デザインのあり方を次のように述べています。

デザインとは問題解決である。私たちは今日、ワーカーが直面している問題のひとつを「注意力散漫」と判断し、それを解決するために思案を重ねてきた。

(引用元:同上)

デザインの3つの目的は、どれも利用者の問題解決のためにあるもの。機能のレベルが上がれば上がるほど、利用者がどんな環境で製品を使い、何に困っているのかを、想像力を働かせて見つけることが必要となります。このような気づきは、普段の生活の中でも見出されますが、上述の心理学研究などと組み合わせてより効果的な改善がなされているのです。

*** もしあなたが目の前のことに集中できない環境にいるのならば、身の回りの製品のデザインを変えることで作業が捗るようになるかもしれません。

集中に限らず、何か改善したいこと、解消したい悩みなどがあったら、解決の1つの方法であるデザイン的アプローチにぜひ注目してみてください。

(参考) GALLUP|Too Many Interruptions at Work? TED|注意散漫を防ぐより良い技術 Steelcase|「注意力散漫対策」としてのデザイン

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