皆さんのペンケースには、どんな文房具が入っていますか?
日常的に使う道具には意外と個性が出るもので、人によって持っているものも様々ではないかと思います。お店で新しい文具に出合ったり、お気に入りのものにこだわったりするのは、とても楽しいものですよね。
このように人の好みが表れるペンケースの中身ですが、実はそのなかには、仕事に良い影響を与えるものとそうでないものとが存在しています。
はっきり言いましょう。良くないペンケースとは、沢山の筆記具が詰め込まれているペンケース。逆に良いペンケースというのは、とにかく中身の少ないペンケースのことなのです。このことについて、詳しくお伝えしていきたいと思います。
なぜ、ペンケースの中身が少ない方が良いの?
筆記具は少ない方が良いというのを聞いて、何で? と思う人は少なくないかもしれません。現在は様々なアイデア商品も出ていますし、色の種類や、芯の太さも性質も千差万別です。目的に合わせて、それぞれに適した筆記具を揃える方が理想的のように思えますよね。
でも実際はそうではないのです。ステーショナリーディレクターとして商品企画やPRコンサルティング、執筆業など、多彩な活動を行う筆記具のスペシャリスト、土橋正さんは次のように語っています。
モノが少ないと、たとえばどのペンを使おうかと「選ぶ」必要がなくなって、すぐに必要なペンが手に取れて仕事に向かえる。仕事でいちばんパワーを注ぐべきは「選ぶ」ではなく、「考え」て「創造する」ことだと思う。モノが少ないと、それがスムーズにできる手応えがある。
(引用元:東洋経済オンライン|仕事道具を減らすと、集中力がみなぎる)
仕事の上で大切なのは、どの筆記具を使うのかというところではないはずです。
確かに多種多様な筆記具を使いこなし、カラフルな色分けや目的に合った記述方法で情報を整理することに意味がないとは言えないでしょう。しかし、書く手段の選択肢が増えることは、その分脳のリソースを圧迫することでもあります。「アイデアを生む」とか「素早く処理する」などの仕事の本題とっては「ノイズ」になってしまいかねないのです。
筆記具を多く持ちすぎることによって、脳が余計なことを考えなければならなくなるのは、とてももったいないこと。仕事のクオリティを上げたいなら、ペンケースの中身には十分注意が必要です。
中身を一度並べてみよう
自分のペンケースには無駄があるのかないのか、普段何となく使っていると、判断するのが難しいかと思います。
そこで一度、中身を全て取り出してみましょう。そしてそれらの筆記具を、使用頻度の高い順に机の上に一列に並べてみてください。そうして見てみると、意外と使用頻度の高い筆記具は、一部のものに偏っていることに気付くでしょう。
たとえ、すべての筆記具をバランスよく使っていたとしても「これとこれ、区別する必要ないかも……」、と思うものもあるのではないでしょうか。
普段あまり使わないものや区別することにそれほど意味がないものは、思い切って取り除いてしまってください。これが、仕事を効率化するための第一歩になるのです。
シャープペンよりボールペンへ
ペンケースの中身を整理する上で筆者がオススメするのは、シャープペンを使うのをやめてボールペンへと乗り換えることです。
「ボールペンは消せないから不便」と考える人もいるかもしれませんが、実際に「消せないと困る」という状況は、そう多くありません。もし書き間違えてしまっても、ササッと二本線で消してしまえば事足ります。
しかも、文字を消すためには「消しゴム」も持っておく必要がありますし、替えの芯も一緒に持ち歩かないといけません。これが、ペンケースを圧迫する大きな原因のひとつになります。
大学生や社会人にもなると、高校生までと違い公的な書類に記入することも増えていると思いますが、そういった書類には消すことのできるシャープペンは使用できません。
こうした事情を考えてみれば、シャープペンとボールペンを使い分けることに躍起になるよりも、普段から筆記具はボールペンに絞ってしまう方が、ペンケースの中身をすっきりさせることができるのです。
小さいペンケースを買おう
ペンケースの中身に気を使うだけでなく、ペンケース自体にどのようなものを選ぶのかも重要なポイントです。
ペンケースは、なるべく小さなものを選びましょう。
大容量のペンケースというのは便利そうに思いますが、実際は結構かさばりますし、そして何より「とりあえず……」と不要なペンをいろいろと放り込んでしまう原因になります。そうして放り込んだペンに埋もれて「今使いたいペン」が取り出せなくなってしまったら、そのせいで仕事が一瞬ストップしてしまうことにもなりかねません。
小さいペンケースの最大の魅力は、「無駄なペンが増えなくなる」こと。そのため「必要なものを、探す手間なくすぐに取り出すことができる」のです。
最初は「本当にこれだけで大丈夫だろうか……」と不安になるでしょう。ですが、実際にやってみると、少ない筆記具でも何とかなるということに気が付きます。むしろその方が、意識せずにすぐに筆記具を手にできる快適ささえ感じるはずです。
ちなみに筆者は、ペンを三本しか差すことのできないペンケースを愛用しており、筆記具はそれで完結しています。書類記入用のボールペンと、普段使いの万年筆が青と赤で二色。それだけです。差す場所も固定されるタイプのペンケースなので、使いたいペンを探す手間は一切ありません。
ペンケースの中身を限りなくシンプルにすると、メモを取ろうと思ったその瞬間に手の中に筆記具がある、そんな感覚で筆記具を使うことができるようになります。
手に馴染む一本を見つけよう
最後に、良い筆記具とは何なのか、について考えてみたいと思います。
特別な機能や個性を持った「主張の強い筆記具」を持つことにも意味はありますが、これまで見てきたように、実際は仕事の上でマイナスになることもあり得ます。
筆記具に限らず、道具の理想的な状態とは「手足のように扱える状態」であるはず。ならば、理想的な筆記具には、存在を忘れるほどに手に馴染み、自然と字を書けることが求められるのです。
筆者はそういう意味で万年筆を愛用していますが、何を自然と感じるのかは人それぞれ。ペンの太さや質感、書き味まで、好みの幅は人によって大きく違うと思います。
もしも今まで筆記具にこだわったことがないのなら、一度文具屋に足を運んで色々なペンで試し書きしてみると良いかもしれません。
*** ペンケースというものは、仕事をする上で要となる持ち物だと言えることがお分かりいただけたと思います。ペンケースの中身をシンプルにまとめ、無駄の少ない効率的な仕事を実現してください。
(参考) 日経ウーマンオンライン|紙と青ペンさえあれば脳のやる気スイッチは入れられる 日刊ケネミック|幸せになりたきゃ万年筆を買いなさい 東洋経済オンライン|仕事道具を減らすと、集中力がみなぎる EDiT|モノを減らせばアイデアがもっと生まれる!ミニマリズム的仕事術のススメ。