せっかく集中していたのに、何かの音でそれが途切れてしまった……。そんな経験はありませんか?
身近な例で言うと、自室で勉強に集中していたが、家族が帰宅した時の玄関の音で集中が途切れた、といったようなことです。そんな時、一度途切れた集中力を取り戻すのは、ゼロから集中しようとする時よりも難しく感じるのではないでしょうか。実は、一度集中力が途切れてしまうと、再び集中するには平均で25分ほどもかかると言われているのです。
せっかく生まれた集中を途切れさせてしまわないためにはどうすればよいのでしょう。私のイチオシは「環境音」を味方につけるという方法です。
静かすぎても逆にダメ?
集中力が途切れる原因のうち大きな割合を占めているのが、「外部から来る音」だと言われています。
それならば静かな場所で勉強すればよいのでは……と考えてみても、実はそれが逆効果になってしまうこともあります。
いろんな音が聞こえてくると、集中力が邪魔されそうと思ってしまいます。 ところが、静かすぎても集中力が欠けるということが研究によって分かっています。 フランスのある脳科学者は、実験で防音壁に囲まれた無音の部屋に動物を入れたところ、集中力が徐々に低下していき、さらに学習能力も低下することを示しました。
(引用元:産業保健新聞|静かすぎても居心地悪い? 職場の音環境)
図書館などの静かな環境の中にいると、周囲から入る音の情報が少なくなりますよね。しかしその分、誰かの足音や咳払い、ひそひそ話をする声までもが、集中している人の神経を必要以上に逆撫ですると言われています。
ですから、集中力を保つために一番向いている環境は、音のしない静かな環境ではなく、「無視できる適度な雑音で満たされている環境」だと言えるのです。
音楽ではなく“環境音”を流そう
適度な音がある方が良いということで、音楽を聴く人も多いとは思います。ですが音楽は集中するのに邪魔になることもあります。
人間の注意をもっとも惹きつけやすいのは「言葉」や「人の声」なので、歌詞のある音楽は集中力を削ぐ原因となります。また、歌詞のないクラシックなどでも、そもそも音楽が「人に聞かせる」ものである以上、聞いているうちにメロディーや演出によって注意が惹かれる場面が出てくるでしょう。
こうした理由から、集中には「音楽」は適しません。かわりにおすすめしたいのが、「環境音」です。環境音とは身の回りの雑音のことであり、日常の中に溢れている音。環境音を耳にすることで、私たちはいつもの環境にいることを感じてリラックスすることができます。その結果、パフォーマンスを適度に発揮することができるようになるのです。
環境音の効果とは?
どの程度の雑音・環境音があれば集中力は高まるのかについても研究は進んでいます。アメリカで行われた環境音に関する研究によれば、
50デシベル(デジベルは音の大きさの単位)程度の静かな環境(例えば図書館など)で作業をするよりも、70デシベルのノイズがある環境(カフェなど)の方がクリエイティブになる(創造性が高まる)
(引用元:MEN-ZINE|環境音にこだわって仕事をクリエイティブに!環境音の意外な役割とは)
ということが分かっています。敢えて雑音の多いカフェなどでの作業を好む人は、この効果を、経験上知っているのかもしれませんね。
また、ある工場で、環境音の効果を実証する実験が行われました。その実験では、ただひたすら検品し続けるという単調な作業でありながら、小さなミスも許されない、集中力の必要とされる仕事を長時間行う作業員に、イヤホンで自然の音を聞かせました。すると、一日の作業ペースが目に見えて向上したと言うのです。
これらの研究結果から、環境音は集中に適しているということがおわかりいただけるでしょう。
環境音が聞けるwebサービス
インターネット上にはたくさんの環境音がきけるwebサービスがありますが、ここでは筆者のおすすめを2つ紹介します。
(1) hipstersound(http://hipstersound.com/)
hipstersoundは、カフェの音を流すことに特化したサービスです。
海外のカフェやレストランの音がいくつかのシチュエーションで用意されていて、流しながら作業をするとカフェにいるような気分になれます。
筆者は普段カフェで作業することが多いので、家にいながらカフェのような雰囲気が味わえて気に入っています。自室よりカフェの方が集中できるという人に特におすすめのサービスです。
さらにこのサービスでは、カフェの音に加えて雨音や風の音、暖炉の音などを自由に組み合わせることができるので、実際にカフェに行ったようなリアリティを感じながら作業ができるのも魅力です。
(2)Noisli(https://www.noisli.com/)
Noisliは、雨音や雷、木の葉、風、電車などの様々な要素を組み合わせて、オリジナルの環境音が作れるサービスです。
ホワイトノイズやピンクノイズ(※)なども選択することができるので、自然の音だけではなく幅広い「集中するための音」を作り出すことができます。(※ホワイトノイズは「シャー」と聞こえる雑音、ピンクノイズは「ザー」と聞こえる雑音)
既成の環境音でしっくりくるものがない、こんな環境音が欲しい、などの要望がある人にとっては、自分に最適な環境音を作り出せる、非常にありがたいサービスだと言えるでしょう。
色々な要素があって、いじっているだけで楽しくなるのも、筆者がおすすめするポイントです。
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お気に入りの環境音を聞いていると、心がリラックスして作業もはかどることでしょう。
どうも集中が続かなくて……という人は、一度環境音を試してみると良いかもしれませんね。
(参考)
産業保健新聞|静かすぎても居心地悪い? 職場の音環境
MEN-ZINE|環境音にこだわって仕事をクリエイティブに!環境音の意外な役割とは
BANQMOSH|カフェや雨音などの環境音を無料で聴けるWebサービス15選まとめ
NHK|ガッテン! 脳もビックリ! 集中力アップ大作戦
Wikipedia|ホワイトノイズ