もっと “記憶に残る” 学習を。脳が「勝手に覚えてくれる」記憶のテクニック

真面目に勉強しているのに、あまり記憶が定着していない気がする……。そんな風に感じたら、いろんな記憶のテクニックを試してみてはいかがでしょう。今回はさらに「混合スタイルのテクニック」をご紹介します。

記憶のメカニズム

◆記憶の種類

記憶には、言葉で表現できる陳述記憶と、言葉で表現できない非陳述記憶があります。

【陳述記憶】は宣言的記憶とも呼ばれ、「エピソード記憶(実際に体験した出来事や、小説・映画など)」と「意味記憶(足し算や掛け算、単語や年号など、知識の記憶)」の2つに分類されます。「エピソード記憶」は、物語のように前後のつながりがあるため、記憶されやすいのが特徴。一方「意味記憶」は、つながりのない暗記なので忘れやすいのが特徴です。

【非陳述記憶】は、潜在記憶とも呼ばれています。「手続き記憶」「プライミング」などに分類されますが、注目すべきは箸の使い方から楽器の演奏など、一度覚えたらなかなか忘れない、練習を繰り返しカラダが覚える「手続き記憶」です。

◆記憶の3段階

記憶は以下のように3段階で構成されています。

1.【記銘(符号化)】――五感から入った情報は、まず最初に脳の「海馬」という場所に一時保存 2.【保持(貯蔵)】――必要だと判断された情報は大脳皮質に貯蔵 3.【想起(検索)】――貯蔵された情報を海馬が取り出して思い出す。あるいは別の神経回路メカニズムで思い出す(※1)

基本的に、2段階目で“必要”と判断されるのは、人間が生きていくために必要な情報のみ。しかし、東京大学薬学部教授の池谷裕二氏は、何度も復習することで無意識の記憶が暗記を助け、しっかりと覚えられるといいます。また、脳科学者の柿木隆介氏は、感情が大きく揺り動かされたり、何度も経験したりすると記憶が定着し、しかも想起されやすいと述べています。

(※1)理化学研究所のプレスリリース(2017年4月7日)によると、痛みや嫌悪感といった「恐怖記憶」をともなうエピソード記憶は、体験後1日時点での想起は海馬が記憶された情報を取り出すが、学習後2週間以降になると海馬を使わず想起されるとのこと。

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記憶のテクニック

脳のメカニズムから考えると、何度も繰り返して学習するのはもちろんのこと、単体で記憶するよりもエピソードで覚えたほうが記憶に残りやすく、また、強く印象に残るよう工夫することがポイントです。そこで、それらを踏まえた記憶のテクニックを、効果が高まるよう2つのワザをミックスしてご紹介します。

1.「手書き」+「ビジュアル化」

脳科学教育研究所・所長の桑原清四郎氏は手書きの勉強について、「脳の視覚処理系」だけでなく、「触覚の処理系」も使うことから、脳が活発に動くので記憶の定着に有効だといいます。

また、米プリンストン大学とカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の研究者らも、パソコンに打ち込むより手書きでノートを取る学生の方が、総じて成績が良いと確認しています。

そこで、手書きで勉強する際、資格スクール講師で司法書士の碓井孝介氏にならい内容を「チャート化」し、文字だけではなくビジュアルとして覚えることをおすすめします。なおかつ関連する情報をまとめて覚えると、より一層記憶でき、想起しやすくなりますよ。「マンダラ化」でもいいでしょう。

2.「カラダを動かす」+「リズム運動」

ギネスブック「記憶力世界一」記録保持者のエラン・カッツ氏は、「体を揺さぶりなら勉強すると集中力が高まる効果は科学の面からも証明されている」とし、「歩きながら学んだほうが、じっと座っているより2倍の効果がある」といいます。

精神科医・受験技術研究家の和田秀樹氏も、ただ黙々と勉強するのではなく、声に出して読んだり、自宅を歩き回ったりして暗記することを提唱しています。

カラダを動かしながら勉強すると、手書きと同じく脳が活性化し、血液循環も良くなります。さらに、リズムよくカラダを揺らしたり、リズミカルに歩くことで、記憶のメカニズムにも大きくかかわっているというセロトニンが分泌され、より学習力を高めてくるはず。ただし、歩き回るのは自宅など人が少ない室内が原則です。

3.「環境を変える」+「自分テスト」

池谷裕二氏は復習する際、情報を暗記する「入力」だけではなく、覚えた内容をテストなどで確かめる「出力」も大事だと述べています。

アメリカのベストセラー『脳が認める勉強法』でも、自己テストは最も効果の高い学習テクニックだと伝えており、「復習に時間を使うなら自己テストをしたほうが、記憶の定着と理解がはるかに向上する」としています。また、同書には、「いろいろな環境で勉強するほど、勉強したことの記憶が鮮明になり、長く記憶に残る」とも記されています。

そこで、おすすめは、いつも勉強している場所を離れて、例えばカフェや図書館、あるいは公園へと移動して「自己テスト」を行うこと。問題集を繰り返し解くことは、移動している最中でも電車などで行えるはず。いいリフレッシュにもなりますよ。

*** 脳科学者の茂木健一郎氏は、大好きだった赤毛のアンの原書を繰り返し読んでいたら、英語が読めるようになったそうです。ぜひご紹介したテクニックを活用しながら、繰り返し復習してガッツリ記憶してくださいね。

(参考) 理化学研究所|海馬から大脳皮質への記憶の転送の新しい仕組みの発見 60秒でわかるプレスリリース Wikipedia|記憶 Study Hacker|勉強の「経験値」をあげる! 『エピソード記憶』と『学習転移』でレベルアップする方法。 Study Hacker|「一度にまとめて」よりも効果大! 記憶に有利な『細切れ学習』毎日続ける3つのコツ コラム Study Hacker|覚えても、思い出せなければ意味がない。「思い出す」が楽になる、3つの暗記テクニック Study Hacker|7回教科書を読むと脳が勝手に覚えてくれる! 繰り返し読み勉強法の驚きの効果 PRESIDENT Online|「復習4回」で脳をダマすことができる PRESIDENT Online|ギネス認定! 「世界一の暗記王」記憶の引き出し整理術【1】 WSJ|あなどれない「手書き」の学習効果 マイナビ 学生の窓口 フレッシャーズ|脳科学者に聞いた、書くと覚えやすいのはほんと? 「記憶」する上で「書く」ことの重要性とは ダイヤモンド・オンライン|受験生必見!学習効果を高める6つのテクニック 脳が認める勉強法 GShift|反省と記憶、脳内物質

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