「要領がいい人」になれる仕事の進め方。「要領をよくしたい」と思うほど、じつは要領は悪くなる

ノートパソコンで要領よく仕事をしているビジネスパーソン

日本企業の問題点として、「生産性の低さ」がよく指摘されます。多忙なビジネスパーソンなら、「なるべく要領よく仕事を進めたい」と思う人も多いはずです。

ところが、脳の機能を活かした人材開発を行う作業療法士の菅原洋平さんは、「要領をよくしたい」と思うほど要領は悪くなると言います。要領をよくするにはどうすればいいのでしょうか。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹

【プロフィール】
菅原洋平(すがわら・ようへい)
1978年8月30日、青森県生まれ。作業療法士。ユークロニア株式会社代表。国際医療福祉大学卒業後、作業療法士免許を取得。民間病院精神科勤務後、国立病院機構にて脳のリハビリテーション業務に従事。その後、脳の機能を活かした人材開発を行なうビジネスプランをもとにユークロニア株式会社を設立。現在、東京・ベスリクリニックにて外来を担当するかたわら、企業研修を全国で展開している。『あなたの人生を変える睡眠の法則』(自由国民社)、『「めんどくさい」が消える脳の使い方』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『「できない自分」を脳から変える行動大全』(扶桑社)、『「やらなきゃいけないのになんにも終わらなかった……」がなくなる本』(WAVE出版)など著書多数。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。

メールにすぐ返信する人は、要領が悪い

「要領がいい」「要領が悪い」という言葉は日常的にもよく使われます。では、それぞれどういう意味なのでしょう。私の考えでは、要領がいいとは、「自分の行動が目的に確実につながっていると認識し、その目的に向かって最短距離で歩んでいけること」です。

一方の要領が悪いとは、シンプルに「目的を見失っていること」だと私は定義づけています。目的が見えていないのですから、どんな行動をするべきかもわかりません。それでは成果を挙げづらくなるのも当然です。

そして、要領がいい人と悪い人には、それぞれの行動に明白な特徴があります。仕事の場における具体例を挙げてみます。メールを受け取った場面がわかりやすいでしょう。意外に感じる人もいると思いますが、要領が悪い人にはすぐに返信しようとする人が多いのです。

本人としては「要領よく仕事を進めよう」と考えてすぐに返信をするのですが、そのあとでもともと進めていた作業に戻るときに、「あれ? なにをしていたんだっけ?」「どこまでやったんだっけ?」と思い出さなければならないため、時間のロスが発生するのです。その結果、本人の意図とは裏腹に作業効率は低下してしまうことがよく起こります。

逆に要領がいい人の場合、自分の作業が完結するまではそれに集中するという特徴が見られます。極端な話、欠席や会議中ということにして周囲からの連絡をブロックするのです。

もちろん本当に緊急の内容については対応しますが、自分が携わっている仕事の全体像を見て、「これらについては急いで返信したところですぐに進展するものではないから、あとでまとめて返信しよう」というように考えます。そうして「いまやるべきこと」に集中できるため、時間のロスがなくなり作業効率が上がるのです。

メールにすぐ返信する人は、要領が悪いことについて語る菅原洋平さん

普段の仕事は、普段通りにこなせばいい

先に挙げたメールにすぐ返信しようという人の例にも当てはまりますが、「要領をよくしよう」と考える人ほど、じつは要領が悪くなる傾向にあります。このことは、アスリートの研究によっても明らかになっています。

トップアスリートは、「普段通りのプレーをするだけ」といった言葉をよく使います。これは、仕事においても同様ではないでしょうか。

気負わず普段通りに仕事をすればいいだけのことなのに、「要領よくしよう」「パフォーマンスを上げよう」などと余計な思いをもつと、まわりが見えにくくなったり力んでしまったりして、逆に要領は悪くなり、パフォーマンスも下がっていくのです。

たしかに、仕事のなかには重要な商談やプレゼンなど、緊張度を高めてしっかりと臨まなければならない場面も存在します。でも、普段の仕事は欲張らずに普段通りにこなそうとするほうが、要領よく進められるのです。

普段通りに要領よく仕事をこなすビジネスパーソン

脳はシングルタスクしかこなせない

また、「要領よくしよう」と考えるほど要領が悪くなる原因には、「あれもこれも」とマルチタスクで仕事をしようとすることにもあります。

こういう人は「作業の途中でもほかのことに手をつけて同時進行で進めるほうが効率的だろう」と考えるのですが、その考えは脳の仕組みに合っていません。じつは、脳はひとつの作業、シングルタスクしかこなせないようにできているのです。

ですから、要領よくしたいのであれば、なによりもシングルタスクを心がけるのをおすすめします。慣れ親しんだ仕事のやり方を変えるのは勇気が必要ですし、ガラッと変えた結果、逆にパフォーマンスが落ちる可能性がないわけではありません。

ただ、脳の原理としてシングルタスクしかこなせないのは紛れもない事実ですから、これまでマルチタスクで仕事をしていた人も、とりあえず「実験してみる」という気持ちで、シングルタスクで仕事をしてみてください。

その結果、「思ったより早く仕事が終わった」「ほかのことが気にならなくなった」など、「快適だ」という感覚を得られたなら、シングルタスクで仕事を進めることを続けましょう。きっと、これまでよりずっと「要領がいい人」になれるはずです。

「要領がいい人」になれる仕事の進め方についてお話しくださった菅原洋平さん

【菅原洋平さん ほかのインタビュー記事はこちら】
仕事のミスを誘発する「ワーキングメモリ」低下のサイン。あなたはいくつ当てはまる?
マルチタスクによる脳への負担を減らす方法。「○○を正す」のが意外と効果的
テレワーク疲れを “脳” から解消する3つの秘策。「4-6-11の法則」で仕事効率アップ!
勉強がはかどる “体調” を科学的に解明。「勉強できない」のは神経状態が勉強に適していないだけ
【チャートで診断】あなたの勉強スタイルはどれ? 学習が確実にはかどる “理想モード” への導き方
「勉強に適した体」をつくれば「勉強できる人」に絶対なれる。注目すべきは “この3要素”
要領よく仕事ができる人は「ワーキングメモリ」の働かせ方がうまい。コツは15分の使い方にあり!
要領がいい人は、必ず紙に書いている。質のいい仕事をスムーズに進めるための「手書き」の方法

会社案内・運営事業

  • 株式会社スタディーハッカー

    「STUDY SMART」をコンセプトに、学びをもっと合理的でクールなものにできるよう活動する教育ベンチャー。当サイトをはじめ、英語のパーソナルトレーニング「ENGLISH COMPANY」や、英語の自習型コーチングサービス「STRAIL」を運営。
    >>株式会社スタディーハッカー公式サイト

  • ENGLISH COMPANY

    就活や仕事で英語が必要な方に「わずか90日」という短期間で大幅な英語力アップを提供するサービス。プロのパーソナルトレーナーがマンツーマンで徹底サポートすることで「TOEIC900点突破」「TOEIC400点アップ」などの成果が続出。
    >>ENGLISH COMPANY公式サイト

  • STRAIL

    ENGLISH COMPANYで培ったメソッドを生かして提供している自習型英語学習コンサルティングサービス。専門家による週1回のコンサルティングにより、英語学習の効果と生産性を最大化する。
    >>STRAIL公式サイト