プレッシャーがかかる場面では緊張しすぎて必ず失敗してしまう。調子のいい時と悪い時で波があり、うまくいくかどうか自信がない。そのように悩んではいませんか?

どんな人も、プレッシャーのかかる場面では少なからず緊張してしまうもの。しかし、同じ状況でも安定して高いパフォーマンスができ、成果を上げ続けられる人もいますよね。

そこで今回ご紹介したいのが「プレ・パフォーマンス・ルーティン」というもの。プレッシャーのかかる場面の連続であるスポーツの世界を参考に、ビジネスシーンで本番に強くなる方法を学びましょう。

プレ・パフォーマンス・ルーティンとは?

ルーティンなら聞いたことがあるという方も多いでしょう。日課や、決まった手順で行う動作のことを指します。プレ・パフォーマンス・ルーティンとは、スポーツ心理学の用語で、ルーティンの中でも特に本番のパフォーマンスの前に行うもののこと。

日本体育大学准教授の高井秀明氏は、次のように述べています。

プレ・パフォーマンス・ルーティンは、より良好なパフォーマンスを生み出すための道筋(必要なことは何か、何かをすべきかなど)が立てられているかどうかを確認する、合理的な手段として存在します。

(引用:キャリアコンパス|自信や集中力が断然UP! アスリートが実践する「プレ・パフォーマンス・ルーティン」とは

つまり、プレ・パフォーマンス・ルーティンを取り入れることで、本番でのパフォーマンスを明確にイメージすることができ、集中力を高めて緊張を抑えられるようになるのです。例えば、ラグビーの五郎丸歩選手の五郎丸ポーズや、プロ野球のイチロー選手が打席に立つ前にする動作などが、これに当たります。

ルーティンといえば、陸上競技短距離のウサイン・ボルト選手が走る前に行う、弓を引くような動作を思い浮かべる方もいらっしゃるかもしれませんが、あの動作はプレ・パフォーマンス・ルーティンには当てはまりません。なぜなら、プレ・パフォーマンス・ルーティンは、本番のパフォーマンスにつながるような動作のことを指すためです。

ウサイン・ボルト選手のしぐさは観客を盛り上げるため、あるいはおまじないの一環として行っているという見方ができ、直接結果に関わるとはいえません。反対に、例えばイチロー選手の打席に立つ前の動作は、バットの重さや相手との距離感などを測ることにより、パフォーマンスの向上につなげられるのです。

ゲン担ぎとの違いもここにあります。例えば、大事な試合の前にはカツ丼を食べるというゲン担ぎをする場合、それが直接試合結果を左右するわけではありません。また、どの種目であってもカツ丼を食べるのに変わりはありません。それに対し、プレ・パフォーマンス・ルーティンは、後に続くパフォーマンスにつながりのある動作をする必要があるため、パフォーマンスの内容や種類によって変化していきます。

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ルーティンの完遂のみに注力することが大切

五郎丸ポーズを五郎丸選手と一緒に考案した、園田学園女子大学教授の荒木香織氏は、プレ・パフォーマンス・ルーティンには以下の3つのメリットがあると言います。

①同じ動作を練習し、プレーがスムーズになる
②動作に集中することで、外的(歓声や相手の動き)及び内的(不安、心配)障害を取り除ける
③ルーティーンで決めた動作を修正することで、プレーの改善ができる。キックをミスしたら、次の動作を調整することで、プレーの成功率を上げる

(引用元:「五郎丸選手とルーティーンを生み出したコーチが伝授 “勝ち”に結びつく 「メンタルの作り方」INTERVIEW 3 荒木香織(ラグビー日本代表チームメンタルコーチ)」,日経情報ストラテジー, 2016年2月号, p.88.)

荒木氏は、プレ・パフォーマンス・ルーティンは精神統一や成功を向上させるものではないと言います。プレ・パフォーマンス・ルーティンは、あくまでルーティンを完遂できたかどうかに照準を合わせたものなのだそう。

スポーツ心理学では、プレ・パフォーマンス・ルーティンそのものがパフォーマンスの強化・向上に寄与していると証明されています。自分で決めた動作をすることだけに集中することで、不安感の低下や自信のアップにつながり、結果的にパフォーマンスが向上するのです。

緊張する場面では必ず失敗してしまう、うまくいくか自信が持てないという方も、ルーティンのみに集中することで、周囲の声や自分の内から湧いてくるプレッシャーから解放されることができるのです。

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自分の癖を言語化し、ルーティンの原形を作る

スポーツの世界で使われているプレ・パフォーマンス・ルーティンですが、ビジネスシーンでも十分に活用することが可能です。例えば大事なプレゼンや商談の前に行えば、余計な不安や周りの動きにプレッシャーを感じることなく、集中力を高められるでしょう。では、私たちはどのように取り入れればいいのでしょうか。

五郎丸ポーズやイチローのルーティンは、すべてを一から作り上げたというわけではありません。その原形があり、ブラッシュアップさせた結果今のようなものになったのです。そのため、まずは何気なくしている自分の癖を言葉にして書く、つまり言語化する必要があります。

その癖をもとに、どうすればルーティンを完遂することのみに注力できるのかを考え、修正を適宜加えながら実践してみましょう。そうして言葉にしておけば、パフォーマンスがうまくいかなかった場合にもすぐに客観的に見直すことができます。

例えば、私は昔から緊張すると息を吐かなくなるという癖がありました。そこで、意識して息をフッと吐き出すようにしてみると、身体の固さも解れるようになったのです。

このように、皆さんもまずは自分の癖を見つめ直してみましょう。調子が良い時にのみしている癖などがあれば、それを普段から取り入れてみるのもいいのではないでしょうか。逆に調子の悪い時にしている癖があれば、別の動作に置き換えてみるのがおすすめです。

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五郎丸ポーズは、完成までに4年もの歳月がかかったのだそうです。日々の取り組みの中で自分にあったプレ・パフォーマンス・ルーティンを作りあげ、プレゼンや商談といった勝負に挑むようにしましょう。

(参考)
「五郎丸選手とルーティーンを生み出したコーチが伝授 “勝ち”に結びつく 「メンタルの作り方」INTERVIEW 3 荒木香織(ラグビー日本代表チームメンタルコーチ)」,日経情報ストラテジー, 2016年2月号, p.88.
Get Navi web|五郎丸ポーズの意味は……「特にない」!? ルーティーンの共作者、荒木香織メンタルコーチがその秘密を語る!
キャリアコンパス|自信や集中力が断然UP! アスリートが実践する「プレ・パフォーマンス・ルーティン」とは