ライターをやっていると、様々な知識に触れることができます。Study Hackerで記事の執筆をしていくうちに、効率的な学びの方法を発見するために、脳科学や行動科学の知見から、ビジネスマンのための仕事術に至るまで、様々な知識を吸収してきました。まだ学生の身なので、机上の空論という面ももちろんあるでしょう。 それでも私自身が大変勉強になりましたので、ここで一度、それらをまとめておこうと思います。
1.その人の能力ではなく、環境に目を向けてみる。
「ケーキを二人で分けて、両者が納得できるように分配する場合にどうしたら良いでしょうか」という有名な問題があります。この問題の解答は「ケーキを切った人が後から選ぶ」で、これは切り方を平等にするのが目的ではなく、あくまで「両者が納得」するための方法。仮に大きさにあまりに差があっても、それは切った人の責任なので切ってない人が選べば両者納得できるわけです。
ですがここで「ケーキを切る人の技術を磨く」「能力の高い人に切らせる」と解答したらどうでしょうか。人間ですから、どんなに正確に切れるはずの人でも手が震えたり、魔が差したりするはずです。きっと喧嘩が始まるでしょう。手にはナイフを持っていますから、大変なことになってしまうかもしれません。これは、「誤差が生じる可能性があることを無視して、ルールを決めた」ことに問題があります。
これで分かるように、この問題の本質は、その人の性質や能力、モチベーションに頼るのではなく、「ミスが起きない、納得できるシステムや仕組みを構築するべき」ということ。特に職場では、この思想を徹底すべきです。
「ミスをするな、時間を守れ!」と怒鳴り散らす前に、勤怠表を見直したり小さな問題も報告しやすい環境をつくるなど、問題の背景にも目をむけましょう。「営業レポートをしっかり書け! 絶対忘れるな!」と繰り返す前に、レポート記入に必要以上の労力を取られていないか、そもそも本当に本当に必要な内容か、吟味をしましょう。 大切なのは正確に目的を達成することであって、個人攻撃することではないはずです。「人は必ずミスをする」ということを前提に、ミスを起こさないシステム・仕組みを構築するほうに意識を向けましょう。
2. ものを伝える時は、相手になりきって想像してみる。
仕事の指示でも、プライベートな連絡でも、相手の状況や理解度、知識の背景などを無視してただ一方的にこちらの言い分を伝えるだけでは、正しいコミュニケーションとは言えません。それはキャッチボールで、相手に取れない球を放るようなもの。自己満足に過ぎないからです。コミュニケーションは、自分の「送信」と相手の「受信」の1セットで初めて成立します。
ちゃんと説明したはずなのに意図とズレていたり、正しく理解されていなかったり。「そんなの、ちゃんと聞いていない相手、きちんと確認していない相手の自己責任だ」と言う人がいるかもしれません。しかし、報告しろと言いながら、具体的な報告の方法に関する指示があやふやだった、というようなこともまた存在します。
こちらの意図が正しく伝わっていなかった場合、あなたの「伝え方」に問題がなかったか、もう一度考えてみましょう。忙しい人にはメールを送り、都合が良くなった時に読んでもらうのがベストですが、ここで「メールを送ったこと」でこちらの仕事が終わったと思っては、これもまた一方的なコミュニケーション。忙しい相手ならタイミングを見て、「○月×日にこんなメールを送っています」という確認も大切です。
学生ならLINEが一番目に止まるツールです。何が一番伝わりやすいか、そして確実に伝わっているか、また、それを読んだらどうリアクションして欲しいかまで正しく伝わっているかなど、徹底的に考えましょう。
3. 「頑張らせる」のではなく「頑張りたくなる」環境をデザインする。
何事にも熱心にアツく創意工夫をもって取り組む人がいる一方、悪気はないのだけれど、やる気がイマイチ出ない人、ノルマを淡々とこなすだけの指示待ち系の人もいます。彼らに「頑張れよ!」「ちゃんとやってよ!」と言うだけでは、何も変わりません。他人のモチベーションを高めるのは、たいへん難しいものなのです。
そんな時は、相手が思わずがんばりたくなるよう工夫しましょう。相手がどんなことに喜びを感じるのか。何をやりがいとしているのか。どんな目標を持っているのか。それをまず対話により聞き出すのです。対話以外にも、じっとその人を観察していることで見えてくることもあるでしょう。 その上で、今の業務や勉強がいかに意義のあるものかを折に触れて伝えましょう。その際に、本人がモチベーションを感じる内容とリンクできればベストです。
「この仕事は(あなたの目標としている)視野を広げることにつながるはずだよ!」 「数字集めの仕事ばかりで単調で意義が感じられないかもしれないが、その数字を集めてこういう資料になる。これが営業部の提案の大事な根拠になる」 「今のアポ取りは嫌なことも多いと思うが、そこで顧客のニーズのヒアリングもできるようになる。その知識を持って、来年はこんな仕事を任せたいと思っている」
社会人が仕事を面白く感じられない、やる気が出ない一番の原因は「仕事そのものが楽しくない」ということでしょう。実際に楽しくない雑務はたくさん存在するので、それを言葉を操って面白いものに見せるのには限界があります。それなら、その仕事にどんな意義があるか、次はどんな展開を考えているか、などしっかりと説明をして本人を納得させてあげましょう。 やる気が出ないのは、その人のせいだけではありません。「やる気の出る見せ方」をしていない側にも原因があるのです。
4. 劣等感もコンプレックスも要らない。「全ては自分次第」なのだから。
他人の成果、能力にあこがれを覚えるのは、自然なことです。
しかし、これが行き過ぎると劣等感やコンプレックスにつながります。勉強会に出席した友達をFacebookで見かけると焦燥感を覚え、自分より良い成績を出している同期を見ると、「どうして私は……。」と不満を感じるのです。しかしどう感じるかは、全て「自分次第」。友人や先輩を羨むのではなく、自分もその域に到達するために、何ができるか、具体的なひとつひとつの行動を冷静に考えればいいのです。
また、もしあなたが勉強会や社内競争に興味・関心を持っているわけではない場合。単にそうした活動、行動に対してぼんやりと「羨ましい」と感じているのなら、なおさら意味のないことです。自分を見つめ、「自分にとって価値のあることは何か」を冷静に判断してください。自分に直接関係がない分野ならますます、コンプレックスや劣等感は全く必要がないのです。
最後に: 実践したければ、まず行動するしかない。
と、ここまで散々偉そうなことを言ってきましたが、私はひとりの学生に過ぎません。自分自身にこういった経験はほとんどないものの、おそらく偉業を成し遂げた人たちは、ここにあることをすべて実践し、行動に移してきた人たちなのでしょう。
行動科学や脳科学の世界では、継続や実践のために必要なのは「小さな行動」だと言われています。マッチョになりたいと思ったら、まずは家で5回腹筋する。環境汚染を止めたいなら、ゴミの分別を守る。まず小さなステップを登ることが、脳を活性化させ、行動を習慣にするんだとか。
これまで挙げたことも、どんなに小さなことでも行動に移さねば意味がありません。家庭内のルールを見直してみるとか、学校のクラス会で提案してみるとか、同僚へのメールの書き方を変えてみるとか、小さなことでもいいんです。一歩踏み出してみてください。