「ニュース、みてますか?」
そう問われて「はい」と自信を持って答えられる人がどれくらいいるでしょうか。 今はテレビや新聞、ネットなど、様々な媒体で気軽にニュースを見られる時代になりました。 にもかかわらず、世の中で起こっている出来事に対し、積極的に関心を持ってニュースを見ている人は非常に少ないように思います。
ニュースってなんだか堅苦しくてつまらない。
そんな風に感じているとしたら、それは大きな間違いです。見方を変えれば、ニュースは知的好奇心をくすぐる、とても「おもしろい」ものなのです。
ニュースを楽しく見る方法を教えてくれるのがこの一冊です。
『ニュース、みてますか? -プロの「知的視点」が2時間で身につく』 杉江義浩 著 ワニブックス 2015年
著者の杉江義浩氏は、放送プロデューサーで、池上彰氏と共に、NHK「週刊こどもニュース」に携わっていた人物です。ニュースの発信者であり、長年ニュースを読み続けてきた受信者でもあります。ニュースを楽しむプロと呼んで差し支えないでしょう。 本書を読めば、そんな杉江氏の「知的視点」の一端を知ることができます。
ここでは本書で紹介されている、ニュースの見方のいくつかを紹介したいと思います。
「消息筋によると……。」の正体とは
ニュースで「消息筋によると……。」や、「政府高官によると……。」などと言う表現をよく聞きますよね。一体誰のことかはっきりせず、信用していい情報なのか分からないと感じたことはありませんか。 これは実は、厳密に定義されているのです。いくつか例を挙げると次の通り。
「政府筋」→「内閣官房副長官のうちの誰か」 「政府首脳」→「内閣官房長官」 「政府周辺」→「首相秘書官」 「権威筋」→「その問題について決定権を持っている人」
なぜこのように置き換えているのかというと、「取材源の秘匿」という原則があるため。取材源を明確にしないことを条件に得た情報であるので、ズバリ名指しすることはできないのです。 とはいえこの置き換えを知っていれば誰が言ったことかは明確。一歩深くニュースに踏み込むことができるのですね。
埋もれた大ニュースを掘り起こす方法
ニュースには優先順位があります。新聞であれば載る面や記事の大きさ、テレビであれば放送時間の長さによって扱いに差が付けられています。 実は、大きなニュースが小さく扱われてしまう日というのが存在します。
例えば、「東京で四十年ぶりの大雪」が降ったとします。これは大きなニュースとして扱われるでしょう。 テレビでは白く染まった東京の街や、吹雪の中歩く人々、電車の遅延を表す電光掲示板ばかりが繰り返し流れるはずです。 しかし、その裏には大雪のために放送されていない大ニュースが隠れている可能性があるのです。
こういう、扱いの大きいニュースがある日こそ、それ以外の小さな記事や、合間のニュースに注目してみてください。扱いの大きさに惑わされずに、大事なニュースを手に入れましょう。
媒体のメリット、デメリットを知ること
先程も述べたように、現代では様々な媒体で情報を得ることができます。もちろん、自分が便利だと思う方法でニュースを得るのが得策です。 しかし、媒体によってメリット、デメリットがあることも理解しておかなければなりません。
<ネット> 一番気軽に読むことができ、多くの記事が無料です。その反面、信ぴょう性に不安があったり、重要さよりも刺激の強さが優先されてしまったりすることがあります。
<新聞> 知名度が高く、信ぴょう性も高いと言えるでしょう。また、大きく広げて見ることができ、自分の興味のある記事だけを拾って読んだり、端からじっくり読んだり自分の好きな楽しみ方ができます。 しかし、実は新聞は中立でなくてもいいということはご存知ですか。新聞がどのような記事を書くかはそれぞれの発行元の編集権に委ねられています。 いい加減な記事を書いたり、あまりにも偏った記事を書いたりしては買ってもらえないから、なるべく中立な記事を書くように心がけているに過ぎないのです。 そのため、新聞によって記事の傾向に差が出ることもあります。 これを逆手にとって各紙の読み比べをしてみるのも面白いかもしれませんね。
<テレビとラジオ> 公平中立であることが法律で定められているメディアが、テレビとラジオ。限られた公共の電波を使っていることが理由です。 選挙についての報道では各党の演説を同じ秒数ずつ流すなど、公平さが徹底されています。 デメリットは、全てのニュースを網羅できない、繰り返し見ることが難しい、情報量が少ないなどです。
各媒体の特性を把握していれば、バイアスをできる限り取り除いたり、用途によって使い分けたりすることができます。
*** ここでは一部を紹介しましたが、本書にはこのほかにも沢山ニュースの楽しみ方が載せられています。 「知的視点」を身に付けて、積極的にニュースを楽しんでみてはいかがでしょうか。