「考える」こと。そして、その考えにもとづいて「行動する」こと。このふたつのステップは人が成長していくために欠かせない要素ですが、野球評論家の野村克也さんは、考えることの前にもうひとつ、とても大切なステップがあると考えています。そしてこの力が不足している人が、プロ野球選手のなかでも多いのだとか。

人が進歩していくために欠かせないもうひとつの力とは、いったいどんな力なのか? 今回は野村さんが、自らを根本的に変えていくうえで大前提となる大切な考え方をご紹介します。

【格言】
人間の最大の悪は、
「鈍感」である

なにをやってもうまくいかないときは、ものごとに対する考え方を変えてみることだ。少し見方が変わるだけで、見えてくるものが変わってくる。そのためには、なにより“考える力”を身につけることである。

考えるには、まず感じなければならない。思考力のなさは、感じる力、すなわち感性の欠如からはじまる。人は感じるからこそ考え、その考えに基づいて行動する。感じて、考えて、行うというのが、人間の行動の原理原則だ。

「人間の最大の悪は“鈍感”である」と、わたしは繰り返してきた。気づく選手は伸びる。些細なことに気がつくから、自ら進んで変わることができる。その変化は、大きな進歩へとつながっていく。

しかし、鈍感な選手や自分勝手な者は、なかなか気づくことができないものだ。となれば、選手には人間教育が必要になる。そこでヒントを与え、成長するのをひたすら待つ。わたしは選手になにかを気づかせ、組織に良いかたちで反映されるのを待つことを心がけてきた。だから、何度も何度も人間教育を繰り返し、選手を伸ばしてきたのである。

【プロフィール】
野村克也(のむら・かつや)
1935年、京都府に生まれる。京都府立峰山高校を卒業し、1954年にテスト生として南海ホークスに入団。3年目の1956年からレギュラーに定着すると、現役生活27年間にわたり球界を代表する捕手として活躍。歴代2位の通算657本塁打、戦後初の三冠王などその強打で数々の記録を打ち立て、MVP5回、首位打者1回、本塁打王9回、打点王7回など、タイトルを多数獲得。また、1970年の南海でのプレイングマネージャー就任以降、延べ4球団で監督を歴任。ヤクルトでは「ID野球」で黄金期を築き、楽天では球団初のクライマックスシリーズ出場を果たすなど輝かしい功績を残した。現在は野球評論家として活躍中。

Photo◎産経ビジュアル

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「自ら変わっていく力」を持つことができれば、失敗したり壁にぶつかっても、その状況からなにかを学び、自らの成長の糧に変えていけます。そのために、最も必要とされるのが「感じる」力なのです。

かつて野村さんは、監督としてミーティングの時間をなによりも大切にしていたといいます。まず選手たちの「感じる力」を養うために、人間教育を地道に行っていたのです。そして、感じる力を身につけた選手たちから成る、自ら考え行動する最強の集団をつくり上げていったのです。

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カリスマの言葉シリーズ#003『野村の金言』

野村克也

セブン&アイ出版 (2017)