思春期の中高生や20代の学生にとって、自身がどんどん変化していくことはとても楽しいものです。日々、学校で学習することで知識を蓄積し、目にするあらゆるものが新鮮に映る。体もぐんぐん大きくなり、トレーニングをすればスポーツのスキルは目に見えて向上します。若者にとっての変化は、よろこびそのものなのです。
しかし、ある程度長い人生を歩みそれなりにキャリアを積んできた大人にとっては、変化は恐怖を伴うものでもあります。たとえ、現状の自分に満足しておらずどこかで変化を望んでいたとしても……。そんな感覚に陥ってしまった人に読んでほしい、野球評論家・野村克也さんの格言です。
【格言】 進歩とは、 変わることである
わたしが監督時代に選手に求めたのは、「変わること」だった。
必死になって努力しても結果が出ないことは、誰にだってある。そんなときは、変わるしかない。しかし、変わるには勇気が必要である。それまでの人生経験で蓄積されたものや価値観がおびやかされるかもしれないという恐怖心を、抑え込む必要があるのだ。
わたしは選手たちに、変わるときの心構えとして次のように説いた。
変わることは進歩であり、 成熟することである。 変わることに楽しみを見い出せ。 変わることは失うことではなく、 なにかを得ることだ。
もうひとつつけ加えるとすれば、変わることに年齢の壁はない。その気になれば、人間はいくつになっても自分を変えることができる。それが、「成長する」ということだ。
成長を阻んでいるものは、もしかすると変化を受け入れない自分自身かもしれない。目の前の現実を好転させるには、まず、自分自身が変わるしかないのだ。どうしても変われない選手たちには、道具を替えることをすすめた。道具を替えれば、否応なく、変化を意識するよう少しずつ働きかけることができるからである。
【プロフィール】 野村克也(のむら・かつや) 1935年、京都府に生まれる。京都府立峰山高校を卒業し、1954年にテスト生として南海ホークスに入団。3年目の1956年からレギュラーに定着すると、現役生活27年間にわたり球界を代表する捕手として活躍。歴代2位の通算657本塁打、戦後初の三冠王などその強打で数々の記録を打ち立て、MVP5回、首位打者1回、本塁打王9回、打点王7回など、タイトルを多数獲得。また、1970年の南海でのプレイングマネージャー就任以降、延べ4球団で監督を歴任。ヤクルトでは「ID野球」で黄金期を築き、楽天では球団初のクライマックスシリーズ出場を果たすなど輝かしい功績を残した。現在は野球評論家として活躍中。
Photo◎産経ビジュアル
*** 変化することが怖い――。たとえば、勤務先の労働環境に多くの不満を抱えながらも、辞めることができないという人も少なくないはずです。その人を縛り付けているのは、生活のために必要な収入だけでなく、築き上げたキャリアを失うことに対する恐怖もあるでしょう。
しかし、それではいつまでも愚痴をこぼしながら不満たっぷりの職場に勤め続けることになります。こういう場合、「変えられるもの」は職そのものだけではありません。転職せずとも、自身が率先して職場の労働環境を変え、不満点をなくすこともできるのです。
変化することが楽しい――。若いころに誰もが抱いたあの感覚を、もう一度取り戻してみたいものです。
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