皆さんは「フロー」という言葉をご存知でしょうか。

フロー (英: Flow) とは、人間がそのときしていることに、完全に浸り、精力的に集中している感覚に特徴づけられ、完全にのめり込んでいて、その過程が活発さにおいて成功しているような活動における、精神的な状態をいう。ZONE、ピークエクスペリエンスとも呼ばれる。

(引用元:Wikipedia|フロー(心理学)

これはアメリカの心理学者、ミハイ・チクセントミハイ氏の提唱したもので、教育からスポーツまで広い分野で取り入れられている概念です。

例えば、一流のアスリートや芸術家が競技、創作に没頭し、高いパフォーマンスを発揮しているとき、彼らはある種の神秘的な感覚さえ伴った没入状態を経験するのだそう。ボールがゆっくり見えていたとか、アイデアが身体を通して勝手にあふれるようだったとか……。これが、まさにフローに入っている状態なのです。

このように説明すると、特別な才能を持った超一流の天才しかフロー状態に入ることはできないのではないか、と思うことでしょう。しかし、そんなことはありません。

ごく一般的な人でも、きちんとメカニズムを理解することで、自分にフローを呼び込むことができるのです。

「フロー」とはどういう状態?

フロー状態について、チクセントミハイ氏は以下のように8つの構成要素を挙げています。

1. フローには明確な目的が必要。
2. 注意力の限定された分野への高度な集中がフローを呼び、フローはそれらを促進する。
3. フローに入ると、自己への意識が希薄になり、活動に没入するような感覚を得る。
4. フロー状態の間は、時間に対する感覚が普段とは異なったものになる。
5. 活動の過程における成功、失敗が明確なときにフローに入りやすく、フィードバックに応じて即座に行動が調整される。
6. フローのためには、自分の能力よりわずかに高いものを要求する適切なバランスが必要。
7. フロー状態の間は、状況や活動を自分で制御している感覚を得られる。
8. 活動に本質的価値があると思っているときフロー状態に入りやすく、フローに入ることで更に活動の価値を実感することができる。

少し難しいように思えるかもしれませんが、これらの要素を見ると、フロー状態とは芸術家やスポーツ選手だけにしか入れないものではないことがわかるでしょう。私たちの日々の勉強や仕事においても、上に挙げられた要素を満たせれば、フロー状態に入ることはできるのです。(ちなみに、これらの要素がすべて必要だというわけではありません。)

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重要なのは難易度設定

この8つの構成要素の中には、現象と方法が混在しているように見えますよね。フロー状態自体が、手段と結果が混在しているような側面を持っているからです。ですから私たちがフロー状態に入るためには、フローとはどのような状態で、フロー状態に入るためにはどういう条件が必要か、ということを知る必要があります。

8つの要素の中でも特に重要なのが、「6. フローのためには、自分の能力よりわずかに高いものを要求する適切なバランスが必要」という点。つまり、「難易度の設定」です。

フロー状態に入るためには、取り組む課題が簡単すぎても、難し過ぎてもいけません。最も適切な難易度は、自分の能力を少し超える、「背伸びすれば何とか達成できる」程度の難易度だと言われています。ですので、取り組む課題の難易度を、ちょうどいいレベルになるようきちんと設定することが大切です。

例えば仕事であれば、「○○時までに終わらせる!」と縛りを設けてみてください。書類の整理のような単調な仕事であっても、没頭するのに最適な難易度に引き上げることができます。読書でも同様に、敢えて短い時間内で読み終えるように決めることで、張り合いが出て集中力も持続しやすくなるでしょう。このように時間を区切ると、スケジュール管理にもなりますね。

それから勉強でも仕事でも同じことですが、自分にとって少し難しい事柄を進んで選んでみることも肝心です。時間設定で考えるなら、自分にとって可能と思われる締め切り時間よりも短めに設定すること。また、いくつかある中から好きな案件を選んで担当できる状況であれば、確実にできそうなものではなくて少し難しそうな案件を選んでみること。趣味や読書の場合でも、楽にこなせるものばかり選ぶのではなくて、頑張らないといけないなと思える程度のものにチャレンジすること。

このように、「少し背伸びをする」ことが精神状態をフローに導きます。大丈夫かな……と少し不安に思うくらいで良いのです。ちょっと難しいものに挑戦することが、成長のための絶好のチャンスとなります。

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集中できる環境を

フロー状態は極度の没入状態ですから、外から何かの刺激があると簡単に途切れてしまいます。誰かに声をかけられたり、電話が鳴ったりしてしまうのは、フローを途切れさせる最大の要因です。

なのでフローに入って作業をしたいようなときは、なるべく作業に専念できる環境を作りましょう。

プライベートな時間であれば、自在に環境を作れると思いますが、仕事となるとそううまくはいかないかもしれませんね。もし仕事で「この作業だけはしっかりやりたい」というときは、他の人から声がかかったり会議が入ったりしてしまわないよう、自分のスケジュールを周囲にもわかる形でブロックしておきましょう。社内の共有のスケジューラーに入力しておく、チーム内の人に事情を説明しておく、といった気配りが大切です。

自分のデスクから離れ、空いている会議室や資料室など、自分なりに集中できる場所に移動するのも良いかもしれません。

集中しすぎも考えもの

フロー状態で発揮できる高いパフォーマンスは魅力的なものです。かといって、フロー状態を多用しすぎるのは、実は危険とも言われています。

人間はフローに入っている際、普段よりも活発に脳を働かせています。その分疲労がたまりやすくなってしまうのですが、フローは没入状態であるため、自分が疲れていることに気づきにくいことが多いのだそうです。

極度に集中した状態が続くと、最悪の場合体調を崩してしまいかねません。

フロー状態で作業をするのも大切ですが、きちんと休憩時間を作るよう、必ず意識しておいてください。

***
どのような分野でも、一流と言われる人は並外れた集中力を持っていると言われています。
上手にフロー状態を作り出すことで、そんな高いパフォーマンスを発揮できると良いですね。

(参考)
TED|ミハイ・チクセントミハイ:フローについて
Wikipedia|フロー(心理学)
Wikipedia|ミハイ・チクセントミハイ
東京大学大学院情報学環・学際情報学府 山内祐平研究室|【学びのキーワード】フロー理論
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