「営業の話術が上達しない。なかなか成約に結びつかない。上司の期待に応えられない」 「いろいろ考えてやっているのに、いくら頑張っても文章がうまく書けない。行き詰まりだ……」
新しいことに挑戦したり、仕事のレベルが上がったりすれば、誰でもこのような経験をするはずです。もう自分のスキルは伸びない、と思ってしまいそうなとき、どうすれば壁を越えられるのでしょう。
そのヒントを、「守破離」という考え方に学びます。
守破離とは何か
守破離(しゅはり)とは、日本の茶道、武道、芸術等などで、個人のスキル(能力)の発展段階を3つのレベルで表す考え方です。師弟関係を重んじる芸道や武道の世界では、稽古や修行の段階を表現するものとして、この「守・破・離」という言葉がよく使われています。
この言葉は、戦国から安土桃山時代にかけての茶人で、わび茶を完成した千利休による歌を引用したものだと言われています。
千利休は、「教えを守り続けながらも、いつしかそれを打破り、離れていく事も大切である。しかしそこにある基本精神は忘れてはならない」 と述べたのです。
ではこの守破離は、どのようにすれば現代のビジネスパーソンにも活かすことができるのでしょうか。守破離がなぜ、上達の近道であるのか、見てみましょう。
守破離の極意
指導者の教えを受ける人は、守・破・離のそれぞれの段階で、以下のような段階を踏みます。
「守」:最初は、指導者の型をきっちりそのまま守って価値観を自分のものにし、作業を習得できるまでは言われた(盗んだ)通りの行動をします。 「破」:習い手独自の工夫を試します。 「離」:最後に、指導者に教えられた型から自由になり、自分自身で、学んだ内容を発展させるのです。
要するに、まずは師匠に言われた型をそのまま守る(完コピする)。それから、型を自分の考えと照らし合わせ、自分に最も合った、より良い型をつくる(応用する)。これらを経て最終的に、守った型から離れて自在になる(ユニークなものを生む)ということです。
これは、伝統的な道だけでなく、スポーツ、仕事、勉強、遊び等々のすべての学習に当てはめることができます。
「守」:師匠(上司)の支援のもとに、教わったことを遂行できる(半人前)。 そして自分で遂行できるようになる(1人前)。 「破」:その作業を分析し、自分なりに改善・改良できる(1.5人前)。 「離」:新たな知識(技術)を開発できる(イノベーター)。
仕事で行き詰まった、成長なんてできない、そう悲観してしまった時は、この守破離に沿い自分の行動を見直すことが必要なのです。
守破離の応用例
では、実際に守破離の考え方を応用して仕事でレベルアップしていく、具体的なケースを見てみましょう。
例えば、営業のスキルを習得するには、
「守」:優秀な先輩営業パーソンの話し方を全部メモして、自分でも同じように(一言一句)話してみる。 「破」:すると、成果につながる営業には、トークポイント(共感する傾聴、お客の課題を聞き出す質問、商品の価値をわかりやすく伝える言葉、次へ繋げる親しみ・念押しなど)があることがわかる。そのポイントを自分なりの話し方で実践してみる。 「離」:学んだポイント以外にも、新しいトレンドや、自分の強み(ゴルフ・カラオケ・オタクネタ)などに引き込むことで、オリジナルの営業トーク手法、新たなストーリーを作る。
あるいは、企画書をうまく作成するには、
「守」:評判のいい企画書、先輩の成功事例を調べて、フォントのサイズや、色、グラフなどを書き写す。 「破」:わかりやすい企画書には、知られていない事実とデータや、心に響くストーリー、短いメッセージなどがあることがわかるはずなので、そのコツを踏まえ、自分のやり方で企画書を書いてみる。 「離」:学んだポイント以外にも、目を引くザインや、独自の調査(顧客やSNSの声)、動画・アプリなどの技術を取り入れ、フィードバックを得ながら、企画書に新しい価値を持たせる。
*** 皆さんも、迷った時は、まず、できる人の行動や作業を完コピしましょう。 いきなり独自性のあるものを作ったり、急に才能を尖らせたりすることはできません。 習ったことに、あなた独自のオリジナルを混ぜて、最後にはあなたにしか作れないものを生み出しましょう!
(参考) Wikipedia|守破離 鬼塚忠著(2011),『花いくさ』,角川書店. 関工務店|守・破・離 ( しゅ・は・り )