みなさんは、職場の会議で発言しようとしたのに後回しにされてしまったり、プレゼンで自分の主張をきちんと聞いてもらえなかったりした経験はありますか。身だしなみや言葉遣いなどには普段から気をつけているのに、どうして自分の話を聞いてもらえないのか、疑問に思ったことのある方もいらっしゃるでしょう。しかし、話を聞いてもらえない原因は、見た目でも話の内容でもなく、あなたの「声」そのものかもしれません。
聞き取りやすく心地のいい声には、つい聞き入ってしまいますよね。反対にくぐもった声だというだけで聞く気が失せてしまうこともあります。
つまり、「良い声」を身につければ今よりもっと話を聞いてもらいやすくなるのです。今回は、話をきちんと聞いてもらえるようにするため、「聞き手に好印象を与える声」を身につける方法をお伝えします。
「声」の大切さ
「話すためのボイストレーニング」を行うボイスティーチャーである白石譲二氏によると、「声」は人の印象に強く影響を与えるのだそう。いくら話し上手で見た目に気を遣っていても、不快に感じる声や聞き取りにくい声でしゃべっていると、相手はすっかり聞く気がなくなってしまいます。その一方、あまり話の内容に自信が持てなくても、声さえ良ければ相手に話を聞いてもらうことも可能だと白石氏は述べているのです。
たかが声ぐらいでそんなに変わるわけないじゃないか、と思う方も中にはいらっしゃるかもしれません。しかし、1971年にアメリカの心理学者であるアルバート・メラビアン氏が提唱した「メラビアンの法則」では、第一印象の38%は声の質や大きさなどの聴覚情報によって決まるとされています。相手に与える印象において、声は決して少なくない比率を占めているのです。
好印象を与える声の特徴
では、私たちが魅力的に感じる声というのはいったいどのようなものなのでしょうか。実は男性と女性それぞれに、好印象を持ってもらいやすい声の特徴があるのです。
男性の場合
声の高低を示す声域で言うと、比較的低く、幅のある声が好まれる傾向にあります。デューク大学が792人のCEOを対象に行った調査では、低音の声を持つ男性CEOは低音でないCEOと比べて、より規模の大きな会社を経営し、より多くの利益を得ており、さらにトップの座を守り続ける期間も長いという結果が出たほどです。
女性の場合
声の高低よりも、声の質感を表す「声色」によって周囲に与える印象が決まってくるようです。好まれるのは、豊かでなめらか、そして温かみのある声なのだそう。逆に、感情が伴っていないような冷たい声や威圧的な声は、相手を萎縮させてしまいかねません。
自分の声を改善させる方法
音をビジネスに活かす方法を解説した『Sound Business』の著者であり、The Sound Agencyの会長でもあるジュリアン・トレジャー氏によると、自分の声についていくつかの点を工夫すれば、より相手に聞いてもらいやすい声になるのだそうです。「男性向け」「女性向け」「男女共通」のポイントを1つずつご紹介します。
【1】男性向け:声域は変えずに深みを出す
先ほど、男性の場合は低い声が良いと述べましたが、他の人と比べて高い声であるからといって諦める必要はありません。トレジャー氏によると、低い声の特徴である「深み」を出すには、胸から声を発するのが良いのだそうです。
ほとんどの人は、意識せずにしゃべると鼻や喉といった浅い部分のみでしか声が響いていません。しかし、声を胸に響かせることができれば、身体全体を使って話すことになり、より深みのある声を出すことができるのです。
声を胸に響かせるためには、腹式呼吸をすることが重要となります。呼吸をするときにお腹を意識した状態で低い声を発すると、あばらのあたりが振動するのが分かるはず。繰り返し練習することによって、少しずつあばらのあたりを振動させられるようになっていきます。あばら付近が振動していう状態が、「胸から声が出ている」ということです。
もともと低い声でなくとも、自分が発するいつもの声と比べてより深みのある声で話せば、相手も興味を持ってあなたの話を聞いてくれるようになるはず。
【2】女性向け:なめらかで豊かな声色にする
声がくぐもっていると相手は内容を聞き取りにくく何度も聞き返す必要があるため、印象が悪くなってしまいますよね。女性にとって理想的な、豊かでなめらかな声色を出せるようにしたいなら、普段から鼻呼吸をするのが効果的です。
ナレーターの篠原さなえ氏によると、普段から口呼吸をしている人は口が半開きの状態になってしまうのだそうです。口が半開きになった結果、発声時に口内を通り抜ける呼気の流れが悪くなり、声の通りが悪くなってしまうのだとか。
反対に鼻呼吸をしている人は、口を自然と閉じるようになるため、無意識のうちに口周りの筋肉を鍛えることができます。唇をキュッと締めることができれば、呼気と共に声を勢いよく前に出すことができ、通る声で話すことが可能になるのです。口呼吸が癖になってしまっている方は、意識して鼻呼吸を習慣づけましょう。
【3】男女共通:声量をコントロールする
男女共通で気をつけたいのが「声量」です。声の大きさも、相手に与える印象に影響します。大きな声であれば自信を持っている、興奮しているといった印象を与えることができ、小さな声なら冷静である、威厳があるといった印象を与えることができます。
したがって、場面に応じて声量を使い分けると良いでしょう。ただしずっと同じ声量で話していると相手に単調さやつまらなさを感じさせてしまうことがあります。強調したい部分では声を少し張る、内密に話したい部分では声を潜めるなど、抑揚をつけて話すことも必要です。さらに、明るい感じを出したい時には笑顔で話すなど、表情を変えながら声を出すとより温かみを出すことができます。
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みなさんも自分の話をきちんと聞いてもらえるように、お伝えした方法をぜひ試してみてください。きっと魅力的な声になりますよ。
(参考)
白石譲二著(2014),『人の印象は声が9割 相手に好かれる声のポイント25』, CLAP.
東洋経済ONLINE|声が低いCEOは、年収が2000万円も多い
PRESIDENT Online|客室乗務員が教える「好印象な女」になるマル秘テクニック【後編】
THE21ONLINE|驚くほど印象が良くなる! 魔法の「声トレ」
TED Talks|人を惹きつける話し方
Julian Treasure|Biography
コトバンク|メラビアンの法則