やりたい企画があるけれども、なかなか通らない。 経験や知識があまりなくて、企画書が通るか不安。
仕事をしていて、そう思ったことが1度はあるのではないでしょうか? しかし、経験豊富でなくても、デザインが分かりやすくなくても、通る企画書を書くことができるのです。
一体、どうすればいいのでしょうか?
今回は、より良い企画書を提出するために必要なことについて考えてみたいと思います。
21歳で初めて書いた企画書が見事1位
2015年に発売され、発売後数日で5200台を受注するなど販売が好調なホンダの軽自動車スポーツカーS660。
実は、この車の企画書を提出したのは、まだ入社3年目だった椋本陵さんです。 椋本さんは初めて作った4枚の企画書で、コンペに出された800件の中から見事1位を獲得し、22歳の若さで新車開発のプロジェクトの責任者となりました。
若いながらも、椋本さんの企画書が採用されたのはどうしてなのでしょうか?
企画書はメッセージを前面に押し出そう
椋本さんの企画書は、自分の中にあるイメージを押し出す形で書かれていました。 具体的には、技術的な話をなるべく避け、自分の中にある車のイメージを伝えられるようなメッセージを書いたのです。
「初めてつくった資料で、とくに意識した点はないのですが、強いて言えば、技術のことをあれこれ書かないで、フックになるような言葉を一発入れたこと。そのほうが、自分だったら見るなと思いました」 (中略)椋本氏が強調したのは技術ではなく「ほしい、乗りたい、おもしろい」というメッセージだ。
(引用元:PRESIDENT Online|大ヒット、ホンダS660を生み出した「高卒21歳の企画書」)
確かに、「この部分は、最新技術を使っています」といったことが多く書かれているような企画書は、なんだかただの設計図のようで、あまり心に響きません。
「○○をこのように乗りたくないですか?」と、自分の中にある強いイメージを押し出した方が、より強い印象が残りますよね。
自分の中の強いイメージにこだわろう
椋本さんのように、自分の中に強いイメージを用意することは、企画書を作るうえでとても大切でしょう。なぜなら、アイデアを魅力的に伝えられるだけではなく、より独創的なアイデアを生みだすことにも繋がるからです。
大ヒット文房具である「大人の鉛筆」を開発した北星鉛筆の杉谷社長によれば、「自分のイメージ先行で作り出したアイデアが独創的なものになる」のだそう。
目で見て商品を企画すると物真似や後追いになります。自分の思いを商品化すると新しいものができる。それがもの作りの基本ではないでしょうか。機能や性能より精神こそが大切です
(引用元:PRESIDENT Online|「大人の鉛筆」大ヒット! 鉛筆はまだまだ成長産業である)
こんな経験をしたことはありませんか?
参考文献を読んでからレポートを書き始めたとき、自分の言葉で書いているつもりでも、文体や言い回しがどうしても似てしまいませんか? 特に、数式の説明や複雑な論理説明など、難しいところほど、自分の言葉が全く出てこないことがあります。
私たちは、何かを作り出す際、どうしても先に触れたものに影響を受けてしまうようです。自分の頭に企画を強くイメージし、そのイメージに従って企画書を作ることで、独創的な新しい企画を作ることができるでしょう。
「自分の中の強いイメージ」を企画書で伝える方法
自分の中の強いイメージを伝えるとき、何に気をつければよいのでしょうか?
それは、作りたいもののイメージを目に見える形に示すことです。言葉だけでは、どうしてもイメージに相違ができてしまいます。 例えば、企画書に「空のような青」と書いてあっても、水色であるのか、それともより濃い青色なのか、1人1人イメージする青色は少しずつ異なりますよね。
そのため、自分のイメージをあらわした絵などをつけると、相手に自分の正確なイメージが伝わるでしょう。また、自分の絵に自信がなく、絵で伝わるかどうか不安だという方は、イメージにより近い写真などを用意するとよいでしょう。
*** 音響設計家の豊田泰久さんはWIREDのインタビュー記事で、「いい」ものをつくるために必要なことは、自分の中に「こういうものを作りたい」というイメージがあるかどうかだと述べています。
──豊田さんのおっしゃる「いい」とは、何なのでしょうか。 それは、デザインにしろ音にしろ「こういうものをつくりたい」というイメージがあるかどうか、ということだと思うんです。
(引用元:WIRED|評価を数字に委ねない。信じるべきは、自分のなかの「強いイメージ」──豊田泰久)
企画書作りには、デザインや文章などといった技術も確かに大切です。しかし、それ以上に大切なのは、椋本さんのように作りたいもののイメージが明確に分かりやすく書かれていることでしょう。
自分の中にあるイメージを大切にして、企画書を作ってみてください。そうすれば、きっとより良い企画書が書けますよ。
(参考) PRESIDENT Online|大ヒット、ホンダS660を生み出した「高卒21歳の企画書」 PRESIDENT Online|「大人の鉛筆」大ヒット! 鉛筆はまだまだ成長産業である DIAMOND online|「ホームランか三振か」大振りが当たったキリン「別格」開発秘話 WIRED|評価を数字に委ねない。信じるべきは、自分のなかの「強いイメージ」──豊田泰久 root inc.|クライアントとデザインのイメージを共有する5つのポイント