「おい、そこの新人、一発芸」
…なんていう言葉は、最近は聞かれないのでしょうか。
筆者の父(51)の時代は、何かとあれば新人が駆り出され、やれ一発芸だの、やれモノマネだの、散々な扱いを受けたんだとか。
筆者も高校の部活時代、新入生が合宿で芸を披露するのが恒例になっていました。
いわゆる「無茶振り」ですね。
「無茶振り」が大好き!なんて人はそうそういないでしょう。 緊張するし、ウケることなんてそうそうないし、頼むからやめてくれ!!っていう人の方が多そうですね。
でもそんな無茶振りには、驚きの効果があったんです。 この記事を読めば、みなさんも明日から無茶振りを積極的に受けたく……はならないか。
茂木健一郎氏が語る「無茶振り」のすごいパワー
脳科学者の茂木健一郎氏は自身の講演で、脳を活性化させるには神経伝達物質である「ドーパミン」の働きが重要であると訴えました。(参考:神戸新聞NEXT|「無茶ぶり」で脳の学習効果アップ 脳科学者茂木さん講演 西脇 )
さらに、ドーパミンを分泌するためには「驚いたりすること、サプライズが必要」と述べ、そのためには「無茶振り」の効果が高いと言うのです。
その場で講演に来ていた中学生に無茶振りをする、なんていうパフォーマンスを披露したんだとか。
無茶振りを考える
そもそも茂木氏のいうドーパミンとは、神経ネットワークが情報を伝達するときに必要な物質。その「メッセンジャー」とも言える物質は、神経の種類ごとに違っています。
中でもドーパミンをメッセンジャーに使っている神経はやる気などの感情を伝達する物質。
特に「報酬系」と呼ばれる脳の部位では、何か目標を達成したときの「気持ちいい!」という感情を伝えています。
茂木氏が言っているのは、「無茶振り」という状況に立たされ、それを乗り越えることでドーパミンが放出される…ということでしょう。
(そもそも無茶振りの経験がある人自体、少ないのかもしれませんが) 無茶振りをされて、それが成功したとき。やった、という達成感を感じる人も多いと思います。それがドーパミンの出ている証拠。
では、無茶振りの効果を高めるためには、どんな工夫ができるでしょうか。 それを一緒に考えてみましょう。
無茶振りされたら、逃げちゃダメ!!
茂木氏が言っていたのは、無茶振りをされたときにドーパミンが放出、それが脳を活性化させるということでした。
ドーパミンは、何かを達成したときに放出されるもの。そう、お判りですね。 無茶振りされたら、決して逃げてはいけないのです。
宴会の場でも、巧妙な言い訳を使って、芸達者な仲間に助けてもらったり、話をそらしたりする人、いますよね。そういう人の脳内にはドーパミンは放出されません。
どもりながらでも、人の前に出てやりきった人だけが、ドーパミンの恩恵にあずかれるのです。
いつもはササッと物陰に隠れてしまう人でも、今度から人前に出てみてはいかがでしょう。
失敗しても、問題なし!
でも、もし失敗したら…と不安な方もいるでしょう。 心配しないでください。
失敗する、という経験はドーパミン放出のためのなくてはならないプロセスだからです。
人間の脳というのは失敗を前提にして作られているといえます。
そもそも記憶は、神経細胞が新たなネットワークを形成することで誕生するんです。
例えば実験用のラットに、迷路をぬけさせることにしましょう。始めは何もわかりませんから、行き止まりにぶつかってしまいます。でも次は、その失敗の経験を生かしてきちんと正しい道を進むでしょう。行き止まりにぶつかり、正しい道を知り……
「これなら成功する」「こうすると失敗してしまう」という試行錯誤を繰り返して初めて、脳の中で神経ネットワークが形成され、正しい手順を踏めるようになるのです。
むしろ、失敗を経験しないでたどり着いてしまった成功は、ただの偶然。その一回はドーパミンが放出されるかもしれませんが、それ以降は未知数。成功できるかわかりません。
無茶振りも同じ。失敗と成功の体験を繰り返すことで、初めて脳が活性化するんですね。
失敗を恐れず、とりあえず無茶振りに乗ってみる。すごく大事なことかもしれません。
参考 神戸新聞NEXT|「無茶ぶり」で脳の学習効果アップ 脳科学者茂木さん講演 西脇