私たちは生きているあいだ何かしら悩みを抱えています。仕事・将来・財政・健康・プライベートなど、人によって、もしくは人生の過程によってその種類はさまざま。悩みはいつも心の中に巣くい、尽きることがありません。

とはいえ、少しでも悩みに翻弄された状況を改善したいですよね。そこで今回は、悩みを乗り越えるコツとして、頭を切り替え「忙しさ」の中に身を置くことを提案いたします。

「悩むこと」は避けられない?

なぜ人は悩むのでしょう。

全米NLP協会認定NLP(コミュニケーション心理学)トレーナーの小杉茂氏は、悩みを抱えてしまうのは人間の思考パターンのせいだとし、悩みの根源は「なりたい自分」と「いまの自分」のズレだといいます。そして、そのズレをもたらすのが「信念」とのこと。その信念には、“事実とは異なる”ものや“根拠のないもの”等まで含まれており、幼い頃から刷り込まれています。

同様のことを米国NLP協会認定NLPトレーナー、NPO法人しごとのみらい理事長の竹内義晴氏も述べています。「起こっている出来事」と「信念・価値観」とを比較したとき、人はその通りになっているとポジティブな出来事に、なっていないとネガティブな出来事と解釈し、意味づけをしてしまうのだとか。

この両氏のいう信念・価値観とは、「本当はこうありたい」「本当はこうあるべき」という思い込み

具体的にいうと、例えば「尊敬される先輩でありたい」「好かれる人間でありたい」「高収入でありたい」「上位の成績でありたい」「もっと会社から評価されるべき」「学校は(職場)は楽しくあるべき」「仕事はスムーズに行われるべき」「後輩(部下)は目上の人をもっと敬うべき」といったものです。そういった思い込みが満たされないと、人はネガティブな気持ちを抱き、精神的な苦痛を感じてしまうのです。

しかし、小杉茂氏いわく「すべての『信念』はあなたという人間を形づくる要素のひとつ」とのこと。それに、一方で信念・価値観は重要視されており、思い込みが成功を引き寄せる場合だってあります。したがって、人間は悩むことを避けにくいのです。

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そもそも人間はネガティブに傾くもの

前項で説明した思考パターン以前に、そもそも人間はネガティブなことに注意を払いやすい本能があります。

原始時代、人は鋭い牙をもつ動物などから子供を守るため、いつでも最悪の事態を想定し生きてきました。そういった脳の警報システムは子孫の私たちも受け継いでいるので、楽観的に考えるよりも、悲観的に考えるほうを選んでしまうそうです。

また、心理学者のジョン・カシオッポ氏が行った脳機能を電気的に測定する実験では、「ネガティブなものは、ポジティブなものよりも脳に強いインパクトを与える」と分かりました。

したがって、人はもとより物事を否定的に考え、悩みを抱えやすい生きものなのです。さて、悩むことから逃れられないのであれば、私たちはどうしたら良いのでしょう? そこでおすすめなのが、忙しさのなかに身を置くということです。

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忙しさの中に身を置こう

自己啓発の名著『道は開ける』の著者デール・カーネギー氏は、心の中から悩みを追い払う方法として、「常に忙しく仕事をしていること」をすすめています。その理由は、考える暇がないほど忙しければ、余計なことを考えないから。

また、ダスキン事業などを行う株式会社武蔵野・代表取締役社長の小山昇氏は、悩んでいる暇がなくなるよう一年先まで予定を埋めているのだとか。同氏いわく、人間は暇だと思考の隘路(物事を進める妨げとなる困難な問題)に陥って“出口なし”になるとのこと。そして、悩むことは過去の経験を引っ張り出してくることに他ならず無意味なので、まず行動すべしとしています。

つまり、「悩み」は無意味なものでありながら、スキさえあればグイグイ入り込んできます。ならば、入り込むスキをつくらないよう、忙しさの中に身を置くことが有効なのです。

アンカリングを利用して仕事や勉強に没頭!

忙しくしていれば悩まないというけれど、「悩んでしまったら仕事や勉強自体が手につかない」という人もいるかもしれません。そこで、自分のスイッチを切り替えてくれる「アンカリング」が役立ちます。

アンカリングとは心理学用語で、五感からの情報をきっかけに特定の反応が引き出されること。つまり、スイッチが入り自分が望む状態に導いてくれるのです。それは、例えば力士が土俵に入る前に顔をたたいたり、反り返ったり、イチロー選手がホームに立った際にバットを前に突き出したりするポーズのこと。アスリートにとっては、常に最高のパフォーマンスを引き出すためのアンカリングですね。

これを、悩みにとらわれず、仕事・勉強・今できることに没頭するスイッチとして活用するのです。

ちなみに筆者の場合は「悩むな、考えろ」と「しょうがないから、頑張るしかない」という言葉。アンカリングの効果は、体験によってつくられます。前者の言葉は人にいわれハッとした体験、後者は映画『川の底からこんにちは(2010)』のなかで、どん底の主人公が立ち上がる際に発した言葉に共感した体験でした。それで「悩んでいる暇があったら考えて行動」「悩んでもしょうがないから、やるしかない」というスイッチが入るアンカリングになったわけです。

このように筆者の場合は言葉ですが、先述したように顔をたたくことやポーズ、あるいは音楽でも構いません。もしくは柑橘系の香りでハッと切り替えられるなら、それもOK。自分スイッチを持って、忙しく仕事や勉強に没頭し、悩みを追い出してしまいましょう。

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悩みを乗り越えるコツとして、頭を切り替え「忙しさ」の中に身を置くことを提案いたしました。ただし、休むことなく働きっぱなし、勉強しっぱなしでは活動の交感神経が優位になり過ぎてしまいます。そうなると免疫機能が下がり病気を引き起こしかねないので、ときにはゆっくり休んで自分を楽しませることにも没頭してくださいね。

(参考)
ITmedia エンタープライズ|仕事に負けない、頭と心の整理術:なぜ、人は悩むのか? プラス思考が難しい理由
ハフポスト|人はなぜ悩むか?悩みから抜け出す方法は?
日経BP社|過剰なストレスをためない仕組み – SAFETY JAPAN [小山 昇氏]
NLP-JAPAN ラーニングセンター|アンカリング – NLP学び方ガイド(NLPとは)
VisionaryMind|アンカリングとは-NLPで最も使える効果的なツール
D・カーネギー著,田内志文著(2014),『新訳 道は開ける』,角川書店.
マーシー・シャイモフ著,茂木健一郎訳(2008),『「脳にいいこと」だけをやりなさい!』,三笠書房.
有田秀穂著(2009),『共感する脳 他人の気持ちが読めなくなった現代人』,PHP研究所.