締め切りまで時間がある業務を、ついつい後回しにしてしまうことは結構ありますよね。しかし、まだまだ余裕があると思っていたのに気がついたら納期ギリギリになっていて、結局は直前に慌てて業務を行うはめになってしまった……、なんてことも多いのではないでしょうか? そんな状況では、本来なら完璧にできたはずの仕事も、見落としたりミスしたりといったことになりかねませんよね。

実はこの後回し、「納期」を意識しすぎてしまったことが原因で起きている可能性があるのです。もしも、意識したのが「納期」ではなく「着手日」であれば状況は変わっていたかもしれませんよ。そこで今回は、ついつい業務を後回しにしてしまう要因を考えながら、納期ではなく「着手日」で管理するスケジューリング法を紹介します。

どうして後回しにしてしまうのか?

なぜ業務を後回しにしてしまうのでしょう? その原因は主に3つあります。

まず1つ目は、未来の自分に期待しすぎることによって、未来にはできると思ってしまう勘違いです。このことは、プリンストン大学の心理学者エミリー・プローニン氏の研究において明らかになっています。

プローニン氏は、ケチャップと醤油を混ぜ合わせたいかにも美味しくなさそうな液体を用意し、学生たちに科学の発展のためになるべく多く飲んでもらうよう頼みました。その際、一部の学生には「数分後に飲んでください」と指示し、その他の学生には「次の学期に飲んでもらう予定です」と伝えたのだそう。すると、数分後に飲んでくださいと言われた学生たちは「スプーン2杯ならなんとか飲める」と答えた一方、次の学期に飲んでくださいと言われた学生たちは「スプーン4杯以上飲める」と答えたのです。人がいかに未来の自分を過大評価しているかわかりますね。

(引用元:Study Hacker|誘惑に負けない強い心。『意志の強さ』を身につけるには、たった10分あれば良い。

今日やれと言われたら無理だけど、1週間後ならできそう……。なんて感覚に心あたりがある人も多いのではないでしょうか? 「その納期なら余裕でできる」という錯覚が、後回しの原因なのです。

2つ目はアンカリング効果と呼ばれる心理効果です。たとえばあるお店に並ぶパソコンの価格が、ただ¥29,800と表示されているよりも、¥49,800→¥29,800と表示されている方が「お、これはお買い得だな」と感じ、購入に至りやすいですよね。簡単に言えば数字的な錯覚ですが、それがアンカリング効果なのです。これをたとえば「1ヶ月後が締め切りだ」と言われた場合に置き換えると、“締め切りまでに残された長い時間”と相対的にそれよりも短くなる“仕事にかかる時間”とを比較して「まだ取り掛からなくても大丈夫だ」と感じ、後回ししてしまうというわけです。

3つ目は、達成までにすべき行動が具体的に見えていないために、着手が困難になってしまっているパターン。業務を言い渡されても具体的な行動に置き換えられず、具体的に何をすべきかわからない人は「まだ時間もあるし」とついつい後回しにしてしまいます。面倒なものは後回しにしてしまうのが人間の性ですものね。

これらのようなことなどが原因となり「後回し」という状況が発生します。
では次に、「納期」でスケジュールを管理する際に生じるデメリットについて説明いたします。

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「納期」で管理する落とし穴

さまざまな仕事の現場では「納期設定が大事である」とよく言われています。 それは、期限が不明確な成果物の作成は、往々にして後回しにされてしまいがちだからです。そのため、多くの人が納期設定を行い、それを意識して業務をこなしていることでしょう。しかし、納期による管理には、むしろ後回しを生じさせるいくつかの落とし穴があるという見方もあります。

それはまず、自分自身がどういった行動を取るべきかが明確になっていないのに、「納期設定」だけをしている状態です。これは前項で紹介した3つ目の、着手が困難なパターンにあたります。たとえば、「今月中に顧客を100人増やす」という目標を立てただけでは具体的な行動に移せませんよね。「広告を出す」「営業に行く人手を増やす」などやるべきことが見えて、初めて期日が生きるはずです。

また、納期からの逆算による安心感が開始時期を遅らせてしまうというデメリットがあります。これは前項の1つ目と2つ目で述べたことが原因です。納期は余裕をもって設定されるものですから、業務を受けた段階では「すぐ着手しなくても間に合うだろう」という意識が働いてしまいます。しかし、むしろ期限がなければ放置することなく、すぐ取り掛かり早く終わっていたかもしれないのです。

もちろん「納期」によるスケジュール管理で以上のようなことばかりが起こるわけではありませんが、少なからず起こっていることは確かです。

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「着手日」を決めよう

では「納期」で管理することにデメリットがあるならば、どのような管理が良いのでしょうか。そして、どうしたら納期前に慌てることなく業務を終えられるのでしょう。そこでおすすめしたいのが「着手日」でのスケジュール管理です。

吉都紀太介氏は自身の著書『「時間」はどこへ消えたのか?―――「期限」が仕事を遅くする』のなかで、

・「余裕をもって期限を設定する」ことが、最短の完了時期を間延びさせてしまう元凶。
・ゴールから逆算してスケジュールを立てるのは、社内業務においては何の効果もないばかりか、反対に時間を無駄にする元凶。

と述べています。そして以下のようなことも伝えています。

書類の提出期限をスケジュール帳に記載する際は、日時の決まっている「予定」や「期限」という「情報」としてではなく、「提出する」という将来自分がするべき「行動」として記載すべきです。もっと言うと、スケジュール帳に記載すべきは、「書類作成」という「行動」と、「書類提出」という「行動」の二つです。

(引用元:吉都紀太介著(2016), 『「時間」はどこへ消えたのか?―――「期限」が仕事を遅くする』, ダイヤモンド社.)

前項でも述べたとおり「納期」での管理は安心感によって着手日を遅らせてしまいかねません。それが納期前のドタバタにつながり、業務の質を下げてしまうことにもつながります。それに、本来もっと早く終わるはずだった仕事でも、期日を設定したがために遅らせてしまっていることも多くあるのです。だからこそ「納期」ではなく、まずは具体的な「行動」を考えれば仕事は早くなるはずです。

したがって、まずは業務を達成するための具体的な行動と、いつ業務に取り掛かれるかを考えます。そして考えた「行動」と取り掛かる「着手日」を設定し、スケジュール帳に記載するのです。納期に隠れていた行動を分解し、それぞれの日程を決める。これで後回しの原因が解消され、早め早めに取り掛かることができるようになります。

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納期よりも着手日を決めて取り組むことが重要であることを紹介しました。納期という情報に振り回されるのではなく、具体的な行動を明確に思い浮かべてその行動こそを管理することで納期前に慌てることはなくなるはずですよ。

(参考)
吉都紀太介著(2016), 『「時間」はどこへ消えたのか?―――「期限」が仕事を遅くする』, ダイヤモンド社.
ケリー・マクゴニガル著,神崎朗子訳(2015),『スタンフォードの自分を変える教室』,大和書房.
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