2016年4月に『10年後に生き残る最強の勉強術』(クロスメディア・パブリッシング)という本を出しました。タイトルだけでは内容のイメージがつきにくい本なので(笑)、ざっくり内容をご紹介しますと……、「会計力」「IT力」「営業力」「知財リテラシー」といったビジネススキルを高めるためには、資格試験を活用して勉強・スキルアップしていくことが実は最も効率的・効果的なやり方(すなわち、最強の勉強術)である、ということを述べた本です。
「会計力」をはじめとした25の有用なビジネススキルを挙げ、「なぜそのスキルが重要なのか・ビジネスにどう活用できるのか」「そのスキルをどのように身に付けていけばよいのか」について書いています。「身に付け方」については、そのスキルを磨くのに役立つ資格・検定試験や参考書などを具体的にご紹介したりもしています。普通の勉強法の本では「試験に受かるためにどう勉強するか」が書かれているわけですが、この本では逆に「○○を勉強するために資格試験を活用しよう」ということを書いてみたわけです。
具体的な内容はぜひ本書を実際に読んでみていただければと思いますが、今回は「なぜ、資格試験を活用した勉強が最強なのか?」について、本で書いた内容の補足も含めて述べてみたいと思います。
何をどう勉強すべきかの指針となる
たとえば「会計・簿記を勉強するぞ!」となったとき、簿記検定の参考書や問題集を買って読んでみるのが最も手っ取り早い方法です。そこには勉強すべきことが体系的にまとめられているからです。
「資格試験」というものがこの世に存在してくれているからこそ、それを学ぶ人のための有用な参考書が市場に数多く供給されているわけです。逆に、自分が学びたい分野に資格試験というものが、もしまったく存在していなかったとしたら、お堅い専門書や、いまひとつわかりにくい文献などで勉強するしかない、ということになってしまうのではないでしょうか。
また、資格試験の存在が、学びのレベル設定やベンチマークとして役立つという側面もあります。ただ漠然と「会計がわかるようになりたい」「英語を身に付けたい」と思っても、具体的に何ができればよしとするかが明確でないと、何をどう勉強すべきかも定まりません。
勉強に限った話ではありませんが、目指すべき「到達点」と「期限」が明確でないと、人は動けないのです。そこで資格試験を活用し、「今年11月の簿記検定で2級に合格する」「今年中にTOEIC800点を目指す」などと目標を設定するわけです。これにより、当面目指すべきスキルアップの水準が明確になります。
「ただ専門書を読む」より「問題を解く」ほうが頭に入るし、課題が明確になる
分厚い専門書やテキストを淡々と読んでいく作業は、はっきり言って退屈ですしすぐ飽きがきます。多くの方が「勉強」に挫折したり、苦痛を覚えたりするのは、このせいではないかと思います。
実際の試験の過去問などを解きながら、「クイズ形式」で学んでいくほうが、刺激もあって退屈を覚えにくいものですし、重要なポイントをつかんだ勉強が可能です。「問題になるところ=重要なポイント」だからです。逆に、専門書やテキストに載っている内容は、実は必ずしも重要とはいえない内容も多分に含んでしまっているので、テキストを読むだけの勉強は、極論すると「無駄が多い」といえます。
また、「問題を解く」というのは、ただ漫然とテキストを読んでいくのと比べて、「わかるところ」「わかっていないところ」を自分ではっきり確認できる勉強法です。テキストを読んでいると「なんとなくわかった気」になってしまいますが、それがいざ問題として問われると答えられなかったりしますよね。そういう「わかっていたつもりが実はわかっていなかった点」が明確になるのです。そういう点を一つ一つつぶしていくことが真の成長につながります。
まだまだある、見逃せない効用
「資格試験を活用した勉強・スキルアップ」には他にも様々な効用があります。ざっと箇条書きで挙げてみますと、
- 資格試験という壁に挑むこと自体にイベント的な要素があり、勉強のモチベーションの向上につながる。
- 勉強仲間をつくれる(同じ資格試験に挑む友達や、資格スクールの仲間など)。
- 自分の今の力量が試験の結果(合否や得点)ではっきりわかる。
- 努力の結晶を資格として形に残せることはやりがいにもつながり、身に付けたスキルを客観的に周りに示すこともできる。
- 資格を取ることで「自信につながる」「とりあえず安心できる」という、精神的な面でのメリットもある。心の拠りどころがあることで、自信を持って行動できる。
資格というのは「履歴書に書くため」「上司から取れと言われたから」というように「必要になったから取る」という流れで取得されることがほとんどであるように思いますが、スキルアップの手段のひとつとしてぜひもっと柔軟にとらえ、活用してみていただければと思います。