プロ野球選手であろうとなかろうと、競争社会にいる以上は口にしてはいけない3つの禁句があると野村克也さんは言います。とくに自分のことを、「才能に恵まれているわけではない」と感じている人はなおさら、その禁句を封印する必要があるそう。

野村さん自身も、今回紹介する3つの禁句が表す状態に陥らないように注意しながら、人よりも努力を積み重ねてきました。そんな野村さんが考える、一流の仕事人になるために必要な姿勢と行動とは――。

【格言】
人は自己愛によって縛られている

人は誰でも自己愛に縛られており、自分が可愛いと思う感情に抗える人は少ない。練習だと「ここまでやったら十分だろう」と思い、ライバルを見て「あの人にはかなわない」とあきらめてしまう。わたしから言わせると、どれも自己愛に基づく「甘え」だ。

プロ野球に限らず、競争社会にいる以上「満足」「妥協」「限定」は三大禁句。それを口にすると、現状維持どころか落ちていく一方になる。才能に恵まれなかったわたしは、この禁句だけは封印してきたつもりだ。

2月から行われるキャンプ中は、夜になれば野手はみんな素振りをしていた。ところが、オープン戦がはじまるころにはその数は半分に減り、シーズン中にはせいぜい2~3人しかいなくなっていた。なぜなら、そんな小さな努力は簡単に成功をもたらさないからだ。そうなると自己愛が心理を支配するようになり、ひとり、またひとりと脱落していくのである。

わたしは「しめしめ」と思っていた。ライバルたちがサボっている間に自分が努力を怠に向上すれば、彼らを出し抜くことができると確信していたからだ。

【プロフィール】
野村克也(のむら・かつや)
1935年、京都府に生まれる。京都府立峰山高校を卒業し、1954年にテスト生として南海ホークスに入団。3年目の1956年からレギュラーに定着すると、現役生活27年間にわたり球界を代表する捕手として活躍。歴代2位の通算657本塁打、戦後初の三冠王などその強打で数々の記録を打ち立て、MVP5回、首位打者1回、本塁打王9回、打点王7回など、タイトルを多数獲得。また、1970年の南海でのプレイングマネージャー就任以降、延べ4球団で監督を歴任。ヤクルトでは「ID野球」で黄金期を築き、楽天では球団初のクライマックスシリーズ出場を果たすなど輝かしい功績を残した。現在は野球評論家として活躍中。

Photo◎産経ビジュアル

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人はどうしても自分に甘くなる――。そんな「自己愛」の本質を意識できているだけで、甘えに陥る状態が少なくなり、努力が結果へと結びつく可能性が高まっていきます。

思えば、これほど多くの情報が簡単に手に入る世の中では、人はある程度の「正しい努力」はできるのでしょう。ただ、心のどこかに「満足」「妥協」「限定」に陥る甘さがあり、それが結果へと至る自分の足を引っ張っている面が意外と大きいのかもしれません。

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カリスマの言葉シリーズ#016『野村の悟り』

野村克也

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