hassou-hou01

2015年のノーベル賞は、日本人二人が選ばれ大きな話題となりました。こうした有名な科学者たちは、後世に残るような偉業を成し遂げていますが、いったいどんな発想をすればノーベル賞級の大発見ができるのでしょうか。

偉大な科学者たちの大発見の過程には、科学者でなくとも見習うことができる発想法がありました。今回は、自由で柔軟な発想を生み出す方法について、見ていきたいと思います。

身近な「偶然」を逃さない

偶然による発見を意味する「セレンディピティ」という言葉をご存知でしょうか。

一度はお世話になったことがある人も多いであろう抗生物質、ペニシリンもセレンディピティによって発見されました。1928年にフレミングというイギリスの細菌学者が、ある目的のためにシャーレでブドウ球菌の培養を行っていたときのことです。

フレミングがブドウ球菌を培養しようとしていたシャーレのひとつに、どこからかアオカビの胞子が飛び込み、繁殖していたのだ。しかし彼は、このアオカビが生えた周りに、ブドウ球菌が生えていないことに気づく。(中略)これは、アオカビが何らかの抗菌物質を作っているからではないだろうか、と彼は直感したのだ。

(引用元:現代ビジネス|奇跡の特効薬「ペニシリン」 誕生を生んだ史上最大のセレンディピティ

フレミングの研究室はいつも雑然としていたようで、シャーレにカビが入り込んでも不思議ではない環境だったことや、ブドウ球菌の培養中に家族旅行に出かけてしまい実験室を長く空けたためカビの繁殖に十分な時間があったことも、偶然の発見を生んだ要因となりました。後年、フレミングはこのペニシリンの発見をきっかけにノーベル賞を受賞したのです。

別の例では、1820年にエルステッドという物理学者が、実験器具をいじっている最中に偶然近くにあった方位磁石の針が揺れることに気が付き、そこから電気と磁気に関係があることを見出しました。また、2002年にノーベル化学賞を受賞した田中耕一氏による発見も、

1985年、田中は実験中、試料として使うはずのアセトンではなく、誤ってグリセリンを混ぜてしまった。その誤りにすぐに気づいたが、田中はあえて実験を続けた。その結果、後のノーベル賞受賞につながる大発見を成し遂げたのである。

(引用元:日経ビジネスONLINE|地道な積み重ねがセレンディピティを育む 中外製薬「国産初の抗体医薬品『アクテムラ(トシリズマブ)』」(その1)

とあるように、セレンディピティによるものだったのです。

ではこの科学者たちは、ただ単に運が良かっただけでしょうか。

空調管理がうまく行える時代ではなかった当時、ブドウ球菌の培地にアオカビを生やしてしまった学者はフレミングだけではなかったでしょう。実験器具の近くに方位磁石を置いたことがあるのも、エルステッドだけではなかったかもしれません。実験試料を間違えて使ってしまったことがあるのも田中氏だけではないでしょう。ですが、彼らだけが世紀の大発見に至ったのです。

この科学者たちは単に幸運だったわけではなく、起きた不思議な現象に疑問を持ち調べたからこそ、偉業を成し遂げたと言えます。あるきっかけから新たな発見が見出せないかという探求心があったからこそ、チャンスを逃すことなく大発見を導くことができたのです。

些細なことにでも疑問を持ち調べてみることで、セレンディピティが生まれ、新たなアイデアが浮かぶかもしれません。大切なのは身近で起きている「偶然」を逃さないことです。

hassou-hou02

araisama-ec
2ヶ月でTOEIC®200点アップの935点。課題発見の精度を高め、ハイスコアでも『時短』を達成。
人気記事

実現不可能なことも、想像上で実験してみる

科学者はよく思考実験を行います。思考実験とは、頭の中で想像するだけで行う実験のこと。思考実験のいいところは、実際には実現できないことでも、想像上でなら実験することができるところです。思考実験は科学においてはメジャーな手法の一つであり、代表的な思考実験には、アインシュタインによる「光と同じ速さで移動したらどうなるのか」や「光時計を使った時間の遅れの計算」、物理学者のシュレディンガーによる「シュレディンガーの猫」などがあります。

アインシュタインやシュレディンガーほど壮大なものでなくとも、思考実験は実生活に気軽に取り入れることができます。例えば何か企画をするときには思考実験をしてみましょう。思考実験するからには、現実では難しいような常識破りのことも想像してみるのです。もしかしたら、そこから独創的なアイデアが生まれるかもしれません。

信じてあきらめない

科学者と聞くと、華麗に実験をこなしていろいろな発見をしている、というイメージがあるかもしれませんが、実際には、時に苦しみながらも何度も実験を繰り返し、発見があるはずと信じて研究を続けています。その積み重ねこそが、ノーベル賞受賞者らが達成したような世紀の大発見につながる礎となるものです。いわゆる「実験家」の科学者であれば、ほとんど全員と言っていいほど、こうした努力を積んでいます。

信じて継続するという姿勢が重要なのは、科学者に限ったことではありません。アップル創業者のスティーブ・ジョブズも、信じて頑張ることで道が開けると言っています。何かアイデアを思い付いたらそのアイデアの価値を信じて、ただひたすらに努力してみるのをおすすめします。

***
重要なのは、偶然を逃さない好奇心と、現実に縛られず想像を羽ばたかせること、そして自分のアイデアを信じ、根気強く頑張ることです。今からでも遅くはありません。現実にとらわれた大人という殻を破って、子供のように自由な心に戻ってみてはいかがでしょうか。

参考
コトバンク|デジタル大辞泉 セレンディピティー
秋田大学|ペニシリンの発見
Wikipedia|セレンディピティー
Wikipedia|アレクサンダー・フレミング
Wikipedia|ハンス・クリスティアン・エルステッド
現代ビジネス|奇跡の特効薬「ペニシリン」 誕生を生んだ史上最大のセレンディピティ
日経ビジネスONLINE|地道な積み重ねがセレンディピティを育む 中外製薬「国産初の抗体医薬品『アクテムラ(トシリズマブ)』」(その1)
Wikipedia|思考実験


早稲田大学先進理工学部物理学科所属。横浜サイエンスフロンティア高校卒業。大学では理論物理学を中心に日々勉強に励んでいる。