過去の偉人達が残した名言の数々。どれも示唆深く、私たちにより有意義に生きるヒントを与えてくれるものです。
しかしそうした名言のうちのいくつかは、本当の意味とは違って解釈されていることがあるようです。後世にまで受け継がれてきた言葉ですから、本来の意味を正確に理解したうえで、心に留めていきたいですよね。今回は、誤解されがちな名言について、本来の意図を解説したいと思います。
「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず」
慶應義塾の創設者である福澤諭吉の著書『学問のすゝめ』の冒頭箇所です。この部分だけを見ると、「福澤諭吉は人類はみな平等であるということを唱えているのだな」と感じる方もいるでしょう。しかし、福澤諭吉が本当に言いたかったのは、そういうことではありません。
この一節は、次のように書かれています。
「天は人の上に人を造らず人の下に人を造らず」と言えり。(中略)されども今、広くこの人間世界を見渡すに、かしこき人あり、おろかなる人あり、貧しきもあり、富めるもあり、貴人もあり、下人もありて、その有様雲と泥との相違あるに似たるはなんぞや。その次第はなはだ明らかなり。『実語教』に、「人学ばざれば智なし、智なき者は愚人なり」とあり。されば賢人と愚人との別は学ぶと学ばざるとによりてできるものなり。
(引用元:青空文庫|学問のすすめ)
つまり、「生まれた時はみな平等だと言われているのに、なぜ賢い人と愚かな人、貧しい人とお金持ちの人、身分の高い人と低い人というように違いが生まれてしまうのだろうか」と疑問を呈した後、「その違いは学ぶのか学ばないかによって生まれるのだ」と説いているのです。
ですから、「人は天の下でみな平等なので差別をしてはならない」という意味ではなく、「生まれた時は平等でも、そこからは学問をしたかどうかで差がついていくのだ」という意味なのです。学問の重要性を説いているのですね。
「天才とは1%のひらめきと99%の努力である」
発明王と呼ばれたエジソンの名言です。この言葉の意味を、「才能がなくても、努力をすれば天才になれる」という意味だと感じる人もいるのではないでしょうか。しかし、この名言の真の意味は全くの逆でした。
「私は1%のひらめきがなければ99%の努力は無駄になると言ったのだ。なのに世間は勝手に美談に仕立て上げ、私を努力の人と美化し、努力の重要性だけを成功の秘訣と勘違いさせている」
(引用元:News ACT|エジソンの名言「天才とは1%のひらめきと 99%の努力である」は誤訳だった?彼が本当に伝えたかった事とは?)
努力は当然必要だけれども、新たな発明には、やはりきらりと光るひらめきが必要なのですね。そのひらめきを得るために、日々発想を研ぎ澄ませたいものです。
「初心忘るべからず」
室町時代に生きた能の大成者、世阿弥による言葉です。「初めのころの志を忘れるな」という意味と捉え、くじけてしまいそうな時によく思い出す言葉として使っている方が多いのではないでしょうか。しかし、この名言の本当の意味は、
世阿弥にとっての「初心」とは、新しい事態に直面した時の対処方法、すなわち、試練を乗り越えていく考え方を意味しています。つまり、「初心を忘れるな」とは、人生の試練の時に、どうやってその試練を乗り越えていったのか、という経験を忘れるなということなのです。
(引用元:the 能.com|ビジネスパーソンに捧ぐ世阿弥のことば 初心忘るべからず)
未熟者だったころに重ねてきた失敗や挫折、苦労という「経験」を忘れないでいれば、それは必ずのちの成功へと繋がっていく、と世阿弥は説いているのです。目標の達成を目指す際には、必ずそばに置いておきたい一言です。
***
名言に込められた本当の意味を知ると、いっそう胸に響きますね。現代に生きる私たちも、こうした言葉を心に刻み、人生を歩んでいきたいものです。
参考 青空文庫|学問のすすめ 真実を求めて|1.学問のすすめ 現代語訳 初編 第一段落 News ACT|エジソンの名言「天才とは1%のひらめきと 99%の努力である」は誤訳だった?彼が本当に伝えたかった事とは? the 能.com|ビジネスパーソンに捧ぐ世阿弥のことば 初心忘るべからず