後輩に知識やスキルをうまく教えるには、どうしたらいいだろう。後輩を上手に指導して、後輩からも上司からもデキるやつだと思われたい。新人の教育係になったり、初めて後輩を持つことになったりしたとき、このような思いを抱く方は多いのではないでしょうか。

後輩の指導に慣れている人であっても、人を動かすことはなかなか難しいものですよね。初めて後輩ができた場合ならなおさら、頭を悩ませてしまうと思います。

こんな悩みなど無関係のように、スマートに人を動かしているように見えるのが有名企業のトップや政治家たちです。また、皆さんの会社の先輩の中にも、後輩の指導や監督が上手い人がいることでしょう。彼らの人の動かし方には、いったいどのような秘訣があるのでしょうか?

今回は、人を動かす「言い方・話し方」に焦点を当てて、おさえるべきポイントについて考えてみたいと思います。

言い方・話し方は新人研修担当者みんなの悩み

人材育成や各種研修事業を手掛けるinsource株式会社が行ったアンケートによれば、企業の新人研修担当者は次のような悩みを持っているのだそうです。

・自分が伝えたつもりになっていても、相手は違ったニュアンスで受け取っていることがあり、どのようにすれば相手に分かりやすく確実に伝わるのか悩む。
・間違いを指摘する伝え方が難しく感じます。言葉遣いや口調を意識して伝えないといけないと思っています。
・自分で考える癖をつけてもらう事。自分から動く癖をつけてもらう事。
・同じ事を何度も教えなければいけないような場面になった時,相手を傷つけないように配慮しながら指導するのが難しい。 また自分から気付いて動くように指導するのが難しい。

(引用元:insource|第八回 新作研修ができるまで<OJT担当者フォローアップ研修 ~部下とのコミュニケーション編(1日間)編>

こうしてみると、やはり、新入社員や後輩が自分の指示で思った通りに動いてくれないこと、自ら動いてくれないことに悩んでいる方が多いようです。

では、先輩(研修担当者)がどのような言い方・話し方をすれば、後輩はスムーズに、自ら動いてくれるようになるのでしょうか?

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まずは目的・ビジョンを伝えよう

強力なリーダーシップでApple社を率い、世の中に新商品を送り出し続けたスティーブ・ジョブズ氏。彼は、人を動かすうえでは明確なビジョンを示すことが大切だと述べています。

『必要なのは共通のビジョン、それを提供するのがリーダーシップだ。』
-What they need is common vision and that is what leadership is.

(引用元:人事アンテナ|人を惹きつけて止まない企業のビジョンの秘密に迫る【Apple編】

ビジョンとは、魅力的で、大きな目標のこと。ビジョンが明確であると、皆が目指すべきところがはっきりするため、目標までの道筋を共有しやすくなり、トップからメンバーへの指示が伝わりやすくなります。

後輩への指導の場合でも、企業経営者というスケールとは異なりますが、同じことが言えます。後輩に指示を出すときは、最終目標をビジョンとして示すとよいでしょう。

例えば、経験の浅い後輩と企画を考えることになった時。「知識を集めて、アイデアを考えて、それらをまとめて……」と手順の説明から始めても、おそらく後輩は、何のために何をすればいいのかあまり理解できないことでしょう。しかし、最初に「小学生低学年が楽しめる企画を考えます」と言ってから同じ説明をすれば、目的がはっきりしますから、何をするべきなのかが格段に伝わりやすくなりますよね。

このように、指示をしっかりと伝えるためには、目的・ビジョンを明確に示す必要があります。これがきちんと伝われば、後輩は的確に動いてくれるはずなのです。

情報はオープンに。態度は謙虚に。

星野リゾート代表の星野佳路氏は、人を動かすには「フラットな関係性が必要である」と考えているのだそう。

社員がモチベーションを高く維持して仕事をするために重要なのは「意思決定までに、どういう人間関係で議論ができるか」なのです。会社にまつわる情報、具体的には顧客満足度と収益に関するデータを公開し、メンバー全員が自由に発言できるフラットな関係性のチームを作る必要があるのです。そして最後はリーダーが決断を下し、責任を負う。

(引用元:本の話WEB|社員の意欲を維持するために経営者にできること

必要な情報も公開されないまま、ただ一方的に指示だけされるのでは、後輩もきっと納得がいきませんよね。それに、命令口調で「やりなさい」といわれたら、ほとんどの人は「言われたから仕方なくやる」であるとか「なんとなく腹が立つからやらない」という行動をとってしまうでしょう。

しかし、「○○というデータがあり、△△という状況を改善するために、××に取り組みたいが、どう考えますか? 一緒に取り組んでもらえませんか」と言われれば、上のような嫌な気持ちにならないはずです。

後輩・部下を持つ人に必要なのは、自分が上に立っているのだという気持ちではありません。相手と自分は対等だという気持ちで、相手を納得させることにも心を砕くべきです。そうすれば、後輩も気持ちよく動いてくれるようになるでしょう。

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人を動かすためには、相手のことを考えることが大切

多くの経営者の指針として著作が読み継がれているデール・カーネギーは、『人を動かす』において、「成功するために他人を動かすにはどうすればよいか」ということを、数多くの人の経験談に基づき考察しています。カーネギーの言う、人を動かすために守るべき3つの原則とは次のとおりです。

原則1) 批判も非難もしない。苦情も言わない。
原則2) 率直で誠実な評価を与える。
原則3) 強い欲求を起こさせる

(引用元:サイボウズ式|悩める若手リーダーへ、「人を動かす」のは態度だ。最大の自己啓発本を生んだD.カーネギーの真意

これら3つの原則に共通していることは、動かされる他人の立場を考えるということ。

ここまで見てきた内容を踏まえると、後輩に指示通りに動いてもらうには、「明確なビジョンを提供する」「フラットな関係を構築する」「相手のことを理解しようと努め、相手を大切に考えていることを伝える」というポイントをおさえた指示の仕方、話し方を目指すと良いのだということがわかります。

人を動かす言葉選びのポイント

後輩に動いてもらいたいときは、その後輩のことを詳しく知り、その人に一番伝わりやすい単語を選ぶことが大切です。

例えば、後輩にデータを与え、そこから平均値と標準偏差を求めてほしいとしましょう。いきなり「いまパソコンに送ったデータをもとに、各年齢ごと平均値と標準偏差を計算してもらえる?」といってはいけません。もしも、後輩が統計に関する知識を持っていない場合、この指示では何をすればいいのかわからないでしょう。まずは、「データから平均値と標準偏差を求められる?」と、後輩の統計に関する知識があるかどうかを確かめ、ない場合は平均値を標準偏差の求め方から教えるべきなのです。逆に、後輩に十分な知識があるようなら、「いまパソコンに送ったデータをもとに、各年齢ごと平均値と標準偏差を計算してもらえる?」という指示のほうがシンプルで伝わりやすい指示になります。

もう一つ、ご紹介したいエピソードがあります。2016年11月の大統領選挙に勝利したドナルド・トランプ氏は、どんな人が聞いてもわかりやすいように、なるべく簡単な単語や文法を演説に用いていたようです。

トランプは過激な発言で注目を集めるのも特徴だが、実はトランプは聴衆や会場に合せてそのスピーチの文法レベルを大きく変えている。(その傾向は)選挙が進み、より一般聴衆を引き付ける必要がある場面になるほど顕著になっていく。

(括弧内は筆者が書き足した。)
(引用元:BLOGOS|支持されるのはなぜか? ドナルド・トランプの人を惹きつける話術の法則

先輩であるあなたが、後輩に伝えたいことをしっかりと理解させるには、動かしたい彼らがどんな思いを持っているのか、どのような知識レベルにあるのか、どんな流行の中にいるのかなど、相手の状況をまずよく知らなくてはなりません。

例えば、新入社員相手にビジネス用語を多用しても、うまく伝わらないことのほうが多いでしょう。また、漢字がぎっしり詰まった長文だけで構成された資料を渡しても、堅苦しすぎて理解しにくいでしょうし、後輩たちのやる気をそいでしまうことにもなります。

聞き手のことを知れば知るほど、相手に響く話し方ができるようになり、人を動かすことができますよ。

***

繰り返しとなりますが、相手に自分の思っていることを伝えたいときや、的確に指示をだしたいときは、
1: ビジョン(伝えたいこと、目標とする)を明確にすること
2: 上下ではなく、対等な関係を意識すること
3: 動かしたい相手のことを考えること

の3つのことを意識する必要があります。相手を知り、相手の心に刺さる言い方・話し方ができれば、きっとあなたの言葉で人が動いてくれるようになるでしょう。

(参考)
insource|第八回 新作研修ができるまで<OJT担当者フォローアップ研修 ~部下とのコミュニケーション編(1日間)編>
人事アンテナ|人を惹きつけて止まない企業のビジョンの秘密に迫る【Apple編】
本の話WEB|社員の意欲を維持するために経営者にできること
Solight|有名企業のビジョン
B-plus|日本の観光産業に変化をもたらす 星野リゾートのマネジメント戦略
サイボウズ式|悩める若手リーダーへ、「人を動かす」のは態度だ。最大の自己啓発本を生んだD.カーネギーの真意
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