ロンドンのタクシー、通称「Black Cab」の運転手は、脳のうち記憶を司る海馬が非常に発達しているそうだ。なんでも、運転手になるための試験「Knowledge of London (ナレッジ試験)」は世界一難しいと言われるほどの難関。合格にかかる平均年数は3年で、免許を獲得した暁には、ロンドン市民から尊敬のまなざしを向けられるんだとか。
ご存知の方も多いとは思うが「海馬」は記憶の中でも長期記憶を司る、まさに記憶の中枢とも呼べる部位。非常に発達した海馬を持つBlack Cab運転手。彼らの記憶の仕組みを参考にすれば、私たちの脳も活性化させることができる…かも?
今日は彼らの生活を覗き見して、脳を活性化させる方法を考えよう。
大量のインプット
世界一難しいと言われる、ロンドンのタクシー運転手資格試験。
そのためには一体どんな努力が必要なのだろうか。 調査してみて驚愕したのは、その圧倒的インプット量だ。
基本的な課題は、ブルーブックに載っている320のルートの中からどれか一つのルートの起点と終点が出題され、そのルートを答えるというものである。ただし、起・終点というのは、それぞれの周囲半径1/4マイル(400メートル)以内の地域のすべて道と主要な建物等を含んでいて、ルートに沿ったすべての道、主要な建物等も同様である。したがって実質的には、ロンドンのすべての道と主要な建物等を把握しておかなければならないことになる。
(引用元:ロンドンタクシー調査報告 )
さらに場所だけではなく、指定された場所間の最短距離と交差点の個数や右左折の方法なども問われるという。
道路に関する膨大な知識量をインプットする。これにより、運転手たちの脳は大きく発達していく。つまり、脳を活性化させるためには大量のインプットが必要なのだ。
単純極まりないが、王道にして唯一の方法。
最近、本を読んだのはいつだろうか。新聞を読んだのは?資格や英会話の勉強をしているだろうか。インプットなしに記憶力を高めることはできない。記憶力をつけたい、と思うなら、新たな知識をインプットすることが必要だ。
それを更新し続けること
Black Cab免許試験の難しさ、それは試験期間の長さにもある。
試験は7段階に分かれており、平均して3年かかると言われる。最長では9年かかった受験者もいたんだとか。さらに、その試験期間の間、道路状況は刻々と変化し続ける。工事があったり、チェーン店の入れ替えがあったりするたび、実際にその場所におもむき、記憶を更新しなければならない。
Black Cab免許試験の受験者は、常に頭の中の情報をアップデートすることが求められる。
これが脳を活性化させている要因のひとつ。いくら大量の知識が頭の中にあるからといっても、それを放置したままでは意味がない。
自分の専門分野のこと、大学で学んだこと。昔のままだと思い込んでいないだろうか。技術が日単位で進歩する現代において、それはあまりに頼りない。
時代遅れになるだけでなく、脳の成長もストップしてします。。
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Black Cabの運転手は、この超難関を乗り越えた者しかいない。圧倒的インプット量と知識のアップデートに裏付けされた高い品質を、維持しているのだという。
1838年の乗合馬車の御者に対する規制と試験から始まる、177年間の歴史的伝統に裏付けられたこの制度。
彼らに見習うべきところは、現代日本の私たちにも多いだろう。
参考 ロンドンタクシー調査報告