カタカナの並ぶ科学用語。ゲームやアニメに登場することもあり聞き覚えはあっても、その難しそうな響きに尻込みして、意味も分からないまま過ごしている、という人は少なくないでしょう。理系を専門にしていない人でも、そんな科学用語の意味が分かったらちょっと嬉しいですよね。今回は、そんなあなたの好奇心をくすぐる科学用語解説をお届けします。
エントロピー
エントロピーとは、「どれくらい乱雑なのか」ということを数字で表したものです。乱雑であればあるほど、エントロピーは大きな値になります。
例えば、整理整頓された部屋はまったく乱雑ではないのでエントロピーは小さいのですが、物が散らかった状態の部屋は乱雑なのでエントロピーは大きいと言えます。
なんとなくエントロピーが分かってきたところで、面白い法則を説明しましょう。「エントロピー増大の法則」と呼ばれるもので、自然に任せておくとエントロピーは常に大きくなっていく、という法則です。この法則に沿って考えると、部屋が散らかるのは当然のことだから仕方ない、と言えますね。
「部屋を片付けたらエントロピーは小さくなるから、エントロピー増大の法則が成り立たないのでは? 」と思う人もいるかもしれません。確かに、部屋の物だけに注目するとそう見えます。しかし実際には、片付ける人間の体内で、その人の分子などが運動し、混ざり、乱雑さが増しています。部屋を片付けた人についてのエントロピーが増えるのです。したがい、全体のエントロピー(部屋のエントロピー+体内のエントロピー)が増大するというわけなのです。やはり、エントロピー増大の法則は成り立つと言えます。
エントロピーが増大し続けた先に何が待っているのかについては、いろいろな説がありまだわかっていません。
セントラルドグマ
アニメ『新世紀エヴァンゲリオン』でも使われていたこの言葉。セントラルドグマとは、簡単にいえばDNAからタンパク質ができるまでの流れのことです。
DNAという言葉は有名ですね。DNAとは人間の設計図の原本のこと。これを使って、必要なタンパク質を体内で合成しています。DNAは原本なので、タンパク質を合成する場所まで持っていくことはせず、コピーを持っていきます。このコピーのことをmRNAと呼び、DNAの情報をmRNAにコピーすることを転写と呼びます。このmRNAという設計図のコピーがタンパク質の合成現場へと運ばれ、それを元にタンパク質が合成されるのです。このことを翻訳と呼び、翻訳することでタンパク質が作られます。
DNAからタンパク質ができるまでの流れは、「DNA→(転写)→mRNA→(翻訳)→タンパク質」となり、この一連の過程をセントラルドグマと呼ぶのです。
このセントラルドグマは、分子生物学という学問の中心原理でもあります。そのため「セントラル=中心」「ドグマ=教義」と言われているのです。
カオス理論
1960年代、ローレンツという科学者がコンピュータを使って天候を予測しようとしたのですが、3回計算して3回とも違う結果が出てしまいました。この原因を探ってみると、計算の最初に入力した今日の気温などの天候情報を、3回ともほんの少し(小数点以下4桁、5桁のレベル)だけ変えたことが原因だとわかったのです。最初の状態をほんの少々変えただけでも予測結果が大きく違ってしまう、これを初期値鋭敏性と呼びます。この初期値鋭敏性を持つ現象を研究するのが、カオス理論という学問です。
自然界のほとんどの現象は初期値鋭敏性を持ちます。しかし我々の技術力では、どんなに頑張っても最初の状態(初期値)を正確に計測することはできません。そうなると、どんなに完璧な理論が完成したとしても、初期値を正確に入力できないため、完全に未来を予測することはできないのです。 どんなに完璧に天気を予測するコンピュータがあったとしても、入力する初期値がほんの少し変わるだけで(例えば、気温が0.000001℃変わるだけで)天気予報の結果が全く違うものになってしまうというわけなのです。
未来を完全に予測することができないなんて、幸運なのか不運なのか。カオス理論とは、何とも興味深い理論ですね。
*** 無味乾燥な言葉ではなく、不思議で面白いストーリーが隠された言葉だなと感じていただけましたでしょうか。他にも気になる科学用語に出合ったら、ぜひその意味や成り立ちを調べてみてください。きっと面白い世界へと誘われることでしょう。
(参考) 哲学的な何か、あと科学とか|エントロピー増大の法則 Wikipedia|セントラルドグマ 哲学的な何か、あと科学とか|カオス理論 量子論と複雑系のパラダイム|1961年 カオスChaos Theory