「休日の寝だめ」は逆効果。睡眠負債を返済できる “本当に正しい” 2つの方法——友野なお『できる大人の「やすみかた」』第2回

毎日の睡眠不足が借金のように蓄積されていく、これを睡眠専門用語で「睡眠負債」といいます。日本は睡眠負債を抱える「睡眠不足症候群」の人たちが諸外国と比較すると際立って多い、睡眠偏差値の低い国であることが明らかになっているのです。

皆さんは睡眠負債者になっていませんか? チェックしてみましょう。

あなたはいくつ当てはまる? 「睡眠負債チェック」

  1. 休日になると、平日のプラス2時間以上起床時刻が遅くなる
  2. 午前中の会議や移動で眠気に襲われる
  3. ベッドに入ったら5分以内に眠れる
  4. ベッドに入ってから30分以上眠れない
  5. 起きたい時刻よりも2時間以上早く目が覚め、そこから眠れない
  6. 夜中に目が覚め、そこから眠れない
  7. 十分な睡眠時間がとれていると思わない 8.「よく眠れた」という実感がもてない
  8. すっきりした気分で起床できない
  9. 日中の身体的、あるいは精神的な活動・意欲レベルが落ちている
  10. 日中の仕事や学業に対する集中力が維持できない

■0~2個:睡眠負債予備軍タイプ 少しずつ蓄積する「負債」に注意すべし! まだ自分では「睡眠負債が溜まっている」という自覚はないけれど、実はじわじわ蓄積されているのがこのタイプ。身体や心に起こる小さな変化を見落としたまま放置すると、後で大きな代償を払わなくてはいけなくなってしまいます。睡眠負債を蓄積させないことと併せて、熟睡できる具体的なメソッドもどんどん取り入れていきましょう。

■3~7個:睡眠負債者認定タイプ 「負債」がもたらす悪循環を直ちにストップすべし! なんとなく疲れている、絶好調ではないという自覚はあるものの、忙しさなどを理由に睡眠改善を後回しにしている人が多いのがこのタイプ。睡眠の負債は毎日どんどん蓄積される一方なので、このままでは睡眠負債がもたらす負のスパイラルに飲み込まれてしまいます。深刻な自体になる前に、自分の睡眠を含めた生活全般を見直しましょう。

■8~11個:危険レベル! 深刻睡眠負債者タイプ 一刻も早く正しい睡眠習慣を取り入れ「負債」を返済すべし! 体調面や精神面の調子が悪く、仕事でもミスをするなど生産性が低い状態に悩んでいる人が多いのがこのタイプ。既に対策を講じているものの成果がともなっていなかったり、なんとか気合で乗り切ろうとしたりしていませんか? 正しい睡眠習慣や睡眠負債の返済法を直ちに取り入れ、健康と高いパフォーマンス力を取り戻しましょう。

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「ベッドに入ってすぐ眠れる」は危険サイン

まわりで「ベッドに入って秒速で眠れるので睡眠の問題はありません」「いつでもどこでも眠れるので、自分は眠りの達人だと思う」と自慢げにおっしゃられる方はいませんか?

「すぐ眠れる=眠り上手」という認識は、残念ながら大きな誤解です。むしろこのような状態は、慢性的な睡眠不足に陥っている可能性が高いといえます。なぜなら、すぐ、どこでも眠れるというのは、それだけ身体や脳が睡眠を欲している状態であることの証ともいえるから。自分の眠りを操れる眠りの達人であると自慢できるどころか、慢性的な睡眠不足状態にある要注意な方といっても過言ではありません。

睡眠負債は蓄積されると、身体面では免疫力の低下や生活習慣病の増加、精神面では感情抑制機能の低下やモラルの低下、脳機能の面では集中力の低下や注意維持と記憶能力の低下、行動面では事故や遅刻・欠席の増加など、身体、精神、脳機能、行動の4方向に大きなダメージが及ぼされてしまうのです。

実際、1999年に行われた実験では、6日間、若者の睡眠時間を4時間に制限した結果、耐糖能の低下、夜間のコルチゾール濃度と交感神経活動の上昇がみられ、身体機能に対する様々な悪影響が明らかになっていますし1)、イギリスの非営利研究機関「ランド・ヨーロッパ」の研究では、1日の平均睡眠時間が6時間を下回る人は、睡眠時間が7~9時間の人と比較して死亡率が13%増加すると報告しています。

睡眠負債を返済する正しい方法とは?

睡眠負債を返済しようとするときにやりがちなのが「休日にたっぷり眠る」という方法ですが、人間は「寝だめ」ができません。寝だめをしてしまうと、たっぷり眠って疲労回復したかと思いきや、体内時計が乱れてかえって週末に疲れを溜め込んでしまい、心身の不調を感じる結果になってしまいます。残念ながら、睡眠負債返済には近道がないのです。

睡眠負債を返済する、あるいは溜めないようにするためには、毎日の就床時刻を1時間早めることがポイント。併せて昼寝の習慣も取り入れると良いでしょう。

ただし、昼寝のとり方には守るべきルールが2つあります。1つ目は「15時まで」という時間。2つ目は「20分程度」という量。15時を超えてしまうとその日の夜の眠りに悪影響が及んでしまいますし、30分以上眠ってしまうと心身への健康効果が得られないどころか、かえってマイナスな要因になることも明らかになっています。

これらのルールを守ることで睡眠負債の返済のみならず、認知症や心臓病のリスクを下げ、同時にQOLを高めることにもつながることが分かっています。昼寝の習慣はまだまだ日本では馴染みがないですが、午後のパフォーマンス向上にも一役買ってくれる習慣なので、後ろめたさを感じることなく積極的に昼寝の習慣を取り入れてくださいね。

睡眠負債は溜め込むと、あとで大きなツケを支払わなくてはいけなくなってしまいます。場合によっては取り返しのつかないダメージを負うことにもなりかねないので、定期的な返済を心がけ、間違っても「まとめ返済」はしないよう注意しましょう。

(参考) 1)Impact of sleep debt on metabolic and endocrine function. Spiegel K, Leproult R, Van Cauter E. Lancet. 1999 Oct 23;354(9188):1435-9.

■連載『眠りのチカラで人生を変える できる大人の「やすみかた」』一覧はこちら yasumikata-bottom

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