ビジネスパーソンに向けて書かれた本はたくさんありすぎて、どれを読めばいいかなかなかわからないもの。今回は、「どうすればデキる人になれるのか」にテーマを絞り、厳選した4冊を紹介します。
- 対人関係が苦手で、職場の人とよい関係をつくることができない
- 目標を立てても、すぐに諦めてしまう
- 時間がないから自己投資できない!
- 仕事が忙しく、長時間働くことに疲れている
などの悩みを抱えている人に、ぜひ読んでもらいたい本です。
1.「職場の人とよい関係を築けない人」におすすめの本
1冊めは、エグゼクティブ・コーチングを手がけるシンクワイア株式会社代表の粟津恭一郎氏による『「良い質問」をする技術』(ダイヤモンド社)。質問の重要性と、そのコツを教えてくれる本です。
粟津氏によれば、よい質問ができると、自分と周囲の人たちをよりよい方向へ導くことができるそう。なぜなら、よい質問からは新しい気づきを得ることができ、それが新しい思考や行動につながるから。自分だけでなく質問相手にも気づきを与え、成長や人生の向上に貢献することもできます。反対に、よい質問ができなければ新しい発見は少なく、成長や変化にはつながりません。
では、どうすればよい質問ができるのでしょう。粟津氏がすすめるのは「アクティブリスニング」。相手を心から尊敬し、誠実な態度で話を聞くことです。受け身な態度ではなく、積極的に傾聴することを指します。相手の話から「本当に伝えたいこと」や「その背景にある思い」を探りつつ、自分自身の考えも示しながら、お互いに気づきを深め、成長につなげていくのです。
たとえば後輩がミスをしたとき、「どうしてミスをしたの?」と詰問したら、責められているという印象を後輩に与えてしまいます。ミスに至った事情に耳を傾けたうえで「今後ミスをしないためにはどうするのがいいだろう?」と問いかけるほうが、成長につなげられますよね。後輩との関係も悪くはならないはず。
よい質問ができる人は、相手の気持ちがよくわかります。相手とよい関係を築き、自分のことも周りのことも幸せにできるカギとなるのが「質問力」だというわけです。
2.「目標を達成できる人」の秘訣を学べる本
次の1冊は、「目標を立てても、すぐに諦めがちな人」に役立つ本。心理学者でペンシルベニア大学の教授アンジェラ・ダックワース氏による『GRIT/グリット〜やり抜く力〜』(ダイヤモンド社)をご紹介します。目標達成に不可欠な「やり抜く力」を高めるノウハウが詰まった本です。
ダックワース氏によれば、結果を出すには才能よりも「やり抜く力」こそが重要だとのこと。やり抜くためのポイントは、以下の3つです。
- 「情熱」と「粘り強さ」:
成功する人たちは必ず粘り強さをもっています。「簡単に結果を出せる」とは思っていません。物事を極める過程では、イライラすることやつらいこともあるもの。ですがやり抜く力がある人は、情熱をもって自分が最も興味のあることを探求し続けるのです。 - 「努力」:
才能だけでは目標達成できません。何かのスキルを習得して目標達成しようというとき、才能があればたしかにスキル習得は早いでしょう。ですが、スキル習得後は目標達成のために努力が必要。地道な努力を続けることこそが、才能よりもはるかに大事なのです。 - 「興味→練習→目的→希望」の流れでやり抜く:
やり抜くための4ステップは次のとおり。
- 「興味」がまずは大事。興味があるからこそ楽しさや情熱が生まれ、努力に意義を感じます。
- 「練習」に励み、興味ある分野を突き詰めます。何年かけてでも習得するための努力をするのです。
- 「目的」意識をもたなければ、継続は困難。自分にとっておもしろいだけでなく、周りにとっても役立つことだと思えるのが大切。
- 「希望」は、最初の一歩を踏み出すときや、困難にぶつかったときに重要。自分を信じて粘り強く続けられるかどうかが結果を左右するのです。
目標を達成して大きな結果を出す人を見ると、「あの人には才能がある。だから自分とは違うんだ」と思うかもしれません。しかし、目標を達成できる人とできない人の違いは、諦めないかどうか。
たとえば、資格をとろうと教科書を買ったけれど、難しくてなかなか進まなない……というとき。やり抜く力のある人は「初心者向けの本を探し直して基礎から勉強しよう」「詳しい人を探して教えてもらおう」など、簡単には手に入らないゴールに対しても粘り強く試行錯誤しているのです。
ビジネスや勉強で達成したい目標があるのにすぐに心折れてしまう人に、ぜひ読んでもらいたい1冊です。
3. 「自己投資のための時間がない!」を解消できる時間術の本
いつも「時間が足りない」人におすすめなのが、精神科医で作家の樺沢紫苑氏による『脳のパフォーマンスを最大まで引き出す 神・時間術』(大和書房)。
7時間睡眠をとりつつ、毎日メルマガ・Youtube・Facebookを更新。月20〜30冊もの本を読み、月10本以上映画を観て、さらには本も出版する超多忙なベストセラー作家が、時間術を多数解説しています。いくつかピックアップしましょう。
- 脳のゴールデンタイムを活用:
朝の2時間は、集中力が最も高い「脳のゴールデンタイム」。仕事効率を2〜4倍にできるそう。集中力を要することや優先度の高いことをするなら朝が最適。メールチェックや単純な事務作業にあててしまうのはNGです。 - 集中力を回復させる:
集中力を長時間キープするのは困難。意識的に集中力を回復させるには、睡眠と運動が有効だそう。睡眠は最低6時間とり、日中も疲れているときは15〜20分昼寝を。また、30分の有酸素運動でドーパミンなどの物質が分泌され、集中力が回復するとのこと。 - 相手の時間を大切にする:
相手の時間を大切にする人こそ、自分の時間を大切にできる人。樺沢氏は「30分前行動」をすすめます。5分前行動だとスキマ時間がほとんどなく、用事が始まるまでスマートフォンなどを触って待つことしかできません。30分前行動なら、カフェなどで仕事や勉強ができますし、相手が遅刻してもそのぶん長く作業ができるのです。
こうした時間術を徹底すれば「仕事が忙しいから本を読めない」「勉強する時間が全然とれない」という悩みは解消できるはず。“デキる人” に何歩も近づけるでしょう。
4.「仕事効率の上げ方」がわかる本
最後は「仕事が忙しく、長時間働くことに疲れている人」におすすめの1冊。元マッキンゼー勤務、現在は人材育成や組織運営コンサルティングを行なう伊賀泰代氏による『生産性―――マッキンゼーが組織と人材に求め続けるもの』(ダイヤモンド社)です。生産性を上げるためのアイデアを得られます。
伊賀氏によれば、生産性とは「【成果物】を獲得するために【投入した資源量】の比率」。少ない投資(インプットする時間や、作業時間)に対して、大きいアウトプット(結果や、利益)を得ることができれば、生産性が高いということです。これを実現するには、下記の点が重要だとのこと。
- 改善:
従来の作業手順を変えたり、定期的に業務を見直したりして、無駄な作業を排除。ITにより効率化できないかも検討。
- 革新:
業務プロセスの再構築、新技術の導入など、新しい方法を取り入れて労働時間を削減。
- 付加価値向上:
既存の機能を改善して顧客評価を上げる。必ずしも「追加」でなくてもよく、商品の機能を減らす代わりにデザイン性を向上させるなどでもよい。
たとえば、「会議が多すぎて自分のタスクが夜遅くにしかできない」と悩んでいるなら、会議を効率化する方法を上司に提案してはどうでしょう。クラウド上で情報共有をするほか、日々のコミュニケーションで互いの現状を把握するなど、わざわざ全員で長時間の会議をしなくてもいい方法を検討するのです。
どんな仕事にも、いまよりも生産性を上げられる可能性はあるもの。企業も個人も、仕事の効率はまだまだ上げられます。この本は、長時間労働に疲れている人はもちろん、仕事の遅さをなんとかしたい人、現状に満足できずもっともっと成長したい人の力になってくれるでしょう。
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情報があふれる昨今、何を信じて前に進んだらよいのか迷ってしまいますよね。だからこそ、“デキる人” たちの貴重な知見が詰まった「本」を、参考にしてはいかがでしょうか。
(参考)
粟津恭一郎(2016),『「良い質問」をする技術』,ダイヤモンド社.
アンジェラ・ダックワース(2016),『GRIT/グリット〜やり抜く力〜』,ダイヤモンド社.
樺沢紫苑(2017),『脳のパフォーマンスを最大まで引き出す 神・時間術』,大和書房.
伊賀泰代(2016),『生産性―――マッキンゼーが組織と人材に求め続けるもの』,ダイヤモンド社.
【ライタープロフィール】
Yuko
ライター・翻訳家として活動中。科学的に効果のある仕事術・勉強法・メンタルヘルス管理術に関する執筆が得意。脳科学や心理学に関する論文を月に30本以上読み、脳を整え集中力を高める習慣、モチベーションを保つ習慣、時間管理術などを自身の生活に取り入れている。