もしも、手元にある本の知識が自分のものになっていないと感じるならば、便利な付箋を使った再読法が役に立つかもしれません。本をすべて読み直すわけではないので、スキマ時間に軽い気持ちでできるはずですよ。
付箋で行なう辞書引き学習法や、識者らが説く効率のいい読書法などを参考にして、付箋を使いながら短時間で本を再読する方法を探ってみました。その概要と、実践した様子を紹介しましょう。
付箋を使った辞書引き学習法
あるとき自宅にある本を見て、これらのなかには知識が詰まっているのに、あまり活用できていない、自分の知識になっていない、というかほとんど忘れてしまったと感じました。
しかし、すべて読み直すには時間がかかります。そんなことをしているうち、また仕事で必要な本なども増えていくでしょう。再読を始める前から、頓挫しそうな予感でいっぱいです……。
そこで、まずは飽きずに継続でき、無理なくスキマ時間にできる再読の仕方を、あらゆる方向から探ってみることにしました。
そうして最初に目に留まったのは、中部大学現代教育学部教授・深谷圭助氏提唱の、小学1年生から始める辞書引き学習法です。 付箋を使いながら辞書を引くことで、子どもの知的好奇心が高まり、やがて自信もついてくるのだとか。
(参考:三省堂 WORD-WISE WEB -Dictionaries & Beyond|深谷圭助先生インタビュー「辞書は知への扉 さまざまな世界への入り口を自分の手もとに」)
その手順は次のとおり。
- 使う付箋に番号をふっておく
- 知っている・好きな言葉を辞書で引く
- 番号をふっておいた付箋にその言葉を書く
- 引いたページの上部に貼る
- この活動を大人がほめてあげる
付箋に番号をふるのは、どれだけ辞書を引いたか実感するためなのだそう。自分の成果が目の前でかたちづくられ、達成感が生まれるほか、大人からのほめ言葉に後押しされて意欲や自信が湧いてくるのですね。
深谷氏の公式サイトには、ものすごい数の付箋が貼られた辞書を前に、子どもたちが夢中になっている様子が紹介されています。
(参考元:辞書引き学習の深谷圭助公式ホームページ|辞書引き学習について)
こうした学習法を知り、もしかしたら大人の再読用に、うまくアレンジできるかもしれないと考えました。
読むべきポイントに付箋を貼る読書法
子ども向けの辞書引き学習法を、忙しい大人向けの再読法にアレンジできそうだと考えた理由は3つあります。
まずひとつは単純に、実践が目に見える本(付箋を貼った本)が増えれば達成感が生まれ、継続しやすくなるはずだからです。
もうひとつは付箋を貼れば、本のポイントを拾って読みやすくなるから。辞書引き学習法にならい、付箋にその箇所の見出しやキーワードなどを書いておくと、よりわかりやすいのではないでしょうか。
そしてもうひとつは、識者らが示す効率のいい読書法に、うまく重なると考えたからです。その効率のいい読書法とは、目次から読む方法のこと。後出の識者は、目次を読めば本の概要がわかると言います。
概要がわかれば、以前読んだ内容を思い出す助けにもなるし、自分が再度どの箇所を集中的に読めばいいか選びやすくなるはず。そうして「ここを読もう」という場所を定めたら、そのページに付箋を貼ればいいわけです。
たとえば明治大学文学部教授の齋藤孝氏は、ハウツー本に関して、目次を見れば本の概要がわかり、自分がどこをしっかり読むべきかわかると言います。目次を見ながら自分が大事だと思う項目に付箋をつけて、順番に読んでも、優先順位をつけて読んでもいいとのこと。
(参考元:講談社|齋藤孝氏が教える「読んだら絶対に忘れない」読書)
また、『ビジネスフレームワーク図鑑』『思考法図鑑』(ともに翔泳社)の著者であり、株式会社アンド代表取締役の小野義直氏は、思考術の本の読み方についてこう述べています。まずは目次を見ながらその本の全体像をつかみ(小野氏は「大体の構造を予測」と言う)、全体の流れを把握したら、どの章で何を拾うか整理するのだそうです。
(参考およびカギカッコ内引用元:THE21オンライン|「目次から読め」が読書に有効である本当の理由)
こうして、いくつもの有益な情報を集めることができました。今度はそれらを参考に、新たな方法としてまとめてみましょう。
上記の識者らが目次から読む方法を推奨しているのは、ハウツー本、思考術の本と限定的ですが、今回はあらゆるジャンルの本を対象にした再読法を探ります。
付箋を貼りながら本を再読してみた
ここまでに説明した辞書引き学習法と目次から読む方法を、“忙しいビジネスパーソンが、無理なくスキマ時間に、飽きずに継続できる再読法” としてまとめてみたところ、こんな流れになりました。
- 目次を見て全体の流れを把握(同時に思い出そうとしてみる)
- 自分が大事だと感じる項目を選ぶ
- 付箋にその項目を書く
- 該当ページの上部にその付箋を貼る(文字面が表紙側になるように)
- 付箋を貼った箇所を読んでいく
4まで進めてしまえば、外出先にその本を持ち歩き、付箋を頼りに読みたい箇所だけを拾って読めるはずです。
あるいは、クリップ式の付箋を使えば、外出先や移動中でも手順1からひととおりの作業ができるかもしれません。
こんなふうに、本やノートに付箋を挟むことができるからです。
付箋を挟んでおけば「あれ? 付箋がない。どこに置いたかな?」といった状況がなくなり、付箋を探すロス時間も削減できそうです。この付箋を使うことにしましょう。
今回筆者が読み直したのは以下の本。本の目次を久々に見てみると、忘れている部分がたくさんありました。とはいえ、スキマ時間に読み直したいので、グッと絞り込んで付箋はこれだけ。
(付箋の文字引用元:F・アーンスト・シューマッハー著,小島慶三訳,酒井懋訳(1986),『スモール イズ ビューティフル』,講談社.)
プロセスはまねましたが、大量の付箋が貼られる辞書引き学習法とは真逆ですね。しかし、絞り込むほど「スキマ時間にサッと読めそうだ」と感じられるので、このほうが再読のハードルは下がりそうです。
付箋に書かれた文字のおかげで項目がひとめでわかり、「移動中にこの箇所だけ読もう」と区切りをつけやすいとも感じました。
そして、ちょっとした発見もありました。
特に、齋藤氏の『大人の語彙力ノート』(SBクリエイティブ)で実践した際に感じたのですが、付箋に手で書いた文字は、よく言われる手書き効果(手で書くと記憶に定着しやすい)に加え、何度も視界に入るせいか、より記憶に残りやすくなる気がしたのです。
(付箋の文字引用元:齋藤孝著(2017),『大人の語彙力ノート』,SBクリエイティブ.)
実際に目を閉じて思い出そうとすると、文字入りの付箋が本の上で並ぶイメージが頭に浮かびます。今度は大人向けの学習法として、アレンジしてみてもいいかもしれませんね。可能性はまだまだ広がりそうです。
最後に、クリップココフセンの使いやすい点と、うまく使うコツについても紹介しておきましょう。まずメリットだと感じたのが、1枚1枚が剥がしやすい点。普通の付箋だと、下の付箋がくっついてきて、数枚剥がれてしまうこともありますが、クリップココフセンではそのストレスがありません。スムーズに付箋を貼ることができます。
また、土台部分をゆっくり剥がせば、下の写真のようにキレイに剥がして別の付箋に取り替えることが可能。
なお、持ち歩きの際にカバンのなかでほかのものに付箋がくっついてしまいそうで気になる場合は、クリップを裏返して挟むといいかもしれません。
いろいろと便利なココフセンですが、材質の特徴上、たとえ速乾性でもゲルインクのボールペンだと乾きにくいのが難点です。油性のボールペンで書けば手にインクがつくことはありませんが、それだと薄くて見えにくい。
ひととおり試行したあとに気がつきましたが、ベストは油性の極細マーカーです。
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自分自身をはじめ忙しいビジネスパーソンが、スキマ時間に無理なく本を再読できる方法として、付箋を使った再読法を紹介しました。お手元にある本などで、お試しいただけたら嬉しいです。
三省堂 WORD-WISE WEB -Dictionaries & Beyond|深谷圭助先生インタビュー「辞書は知への扉 さまざまな世界への入り口を自分の手もとに」
THE21オンライン|「目次から読め」が読書に有効である本当の理由
辞書引き学習の深谷圭助公式ホームページ|辞書引き学習について
講談社|齋藤孝氏が教える「読んだら絶対に忘れない」読書
(実践に登場した本)
齋藤孝著(2017),『大人の語彙力ノート』,SBクリエイティブ.
F・アーンスト・シューマッハー著,小島慶三訳,酒井懋訳(1986),『スモール イズ ビューティフル』,講談社.
塚崎公義著(2015),『なんだ、そうなのか!経済入門』,日経BPマーケティング.
STUDY HACKER 編集部
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