本当に役立つ情報を確実に覚えられる「読書ノート」のつくり方。願望に基づいて読めば記憶に残る!

机の上に置かれたノートとペン

「前に一度読んだはずの本の内容を思い出せない」
「この本には確かに “あの情報” が書いてあったんだけど……。探してもなかなか見つけられない」

このように悩むことがよくある方は、「コモンプレイス・ブック」で読書ノートをつけるといいかもしれません。そのやり方と効果を、筆者の実践例も交えてご紹介しましょう。

【ライタープロフィール】
かのえ かな
大学では西洋史を専攻。社会人の資格勉強に関心があり、自身も一般用医薬品に関わる登録販売者試験に合格した。教養を高めるための学び直しにも意欲があり、ビジネス書、歴史書など毎月20冊以上読む。豊富な執筆経験を通じて得た読書法の知識を原動力に、多読習慣を続けている。

(参考)

桑木野幸司(2022), 『ルネサンス 情報革命の時代』, 筑摩書房.
暮らしEDIT|コモンプレイス手帳術って?気になった事やインプットしたメモを、丸シールで色分けして埋もれない方法!おすすめシールも
村上悠子(2020),『情報吸収力を高めるキーワード読書術』, フォレスト出版.
朝日新聞EduA|「要約」の練習で、書く力と読む力を鍛えよう

コモンプレイス・ブックとは?

本の内容をしっかりと覚えたいなら、読書ノートを書くことがおすすめ。その一種が、今回ご紹介するコモンプレイス・ブックです。

コモンプレイス・ブック(commonplace book)とは、主に15世紀以降のルネサンス期で発展した、語句を抜粋収集し、整理したノートのこと。

大阪大学大学院教授の桑木野幸司氏によれば、「共通の=common」「場所=place」というのが原義で、コモンプレイス・ブックはどんな議論にも活用できる共通のものという意味をもっているのだそうです。

当時の人は、相手を説得したり何かを証明したりするために、その目的に役立つ素材をあらかじめストックしておく必要があると考え、普段の読書を通じて集めていたとのこと。そうした背景から、読書にはもともと以下のような意味があったと、桑木野氏は説明しています。

そもそもラテン語で「読む」を意味する動詞legere には、「集める」、さらには「奪い取る」という意味さえあった。要するに、記憶し学ぶに値するものを採取するのが、本来の読書の意味であったのだ。

(引用元:桑木野幸司(2022), 『ルネサンス 情報革命の時代』, 筑摩書房. ※太字は編集部が施した)

たとえば、ネーデルラント(現オランダ)出身の人文主義者・エラスムスは、ラテン語作文の上達法として、普段の読書を通じた語句の抜粋収集を実践していたそうです。ほかにもルネサンスを代表する名だたる教育学者らが、同様のノート作成をすすめていたのだとか。このコモンプレイス・ブックの習慣は、「学校教育の期間はもちろん、成人後にも継続されることが多かった」と、桑木野氏は述べています。

(本項内参考元、カギカッコ内引用元:同上)

古い本が並べられた本棚

コモンプレイス・ブックは現代でも注目を集めている

そんな長い歴史をもつコモンプレイス・ブックは、現代でも国内外のSNSなどで注目を集めています。

思考の整理を通したQOL向上を目指す人のためのパーソナルトレーナーである、ライフオーガナイザーの木附朋子氏によると、「最初は一字一句、丸々写すものだった」ところから、現代では少しずつやり方を変えながら流行しているそう。(カギカッコ内引用元:暮らしEDIT|コモンプレイス手帳術って?気になった事やインプットしたメモを、丸シールで色分けして埋もれない方法!おすすめシールも

そんな現代のコモンプレイス・ブックの大きな特徴は、「KEY(キー)」を使って情報をジャンル別に整理する点。それぞれのKEYには色を割り振ります。シールを使うと便利だそうです。このKEYがあることで、読み返したときに情報を見つけやすくなると、木附氏は紹介しています。

この手法を読書に取り入れれば、「あの情報、どこに書いてあったっけ……?」と困ることはなくなりそうです。そこで筆者も、現代の書き方を取り入れながらコモンプレイス・ブックで読書ノートをつけることにしました。

机に置かれた本、ノート、ペン

コモンプレイス・ブックで読書ノートをつけてみた

筆者は、ビジネス書などから、仕事のスキルアップやコンディション管理に役立つ情報を抜粋した読書ノートをつけることにしました。

読んだ書籍は『取材・執筆・推敲 書く人の教科書』(古賀史健 著)や『質問しだいで仕事がうまくいくって本当ですか? 無敗営業マンの「瞬間」問題解決法』(高橋浩一 著)などです。

そして筆者は、以下の手順で、コモンプレイス・ブックでの読書ノート作成を行ないました。木附氏が「書き方は特に決まりはな」いと述べていたので、筆者なりに効率よく行なえる手順を考えてみたのです(カギカッコ内引用元:同上)。

  1. ノートの左側にKEYを記す欄を設ける
  2. KEYとそれぞれのテーマカラーを決める
  3. 本を読み、抜粋したい箇所に付箋を貼る
  4. 付箋を貼った箇所をまとめてノートに書く

では、準備したツールからノートの書き方まで、詳しくご紹介します。

ツールの準備

ノートは、コクヨのキャンパスノート(B罫、6mm×35行、30枚)を使用。ノートの左側にKEYの設定欄を設けるため、適度な大きさがある方がよいと思い、こちらに決めました。

そして、ノートの左側三分の一あたりのところに縦線を引き、スペースを区切りました。左側のスペースがKEYを記すための欄です。

シールは、100円ショップで購入した、蛍光色の大きいサイズの丸シールを使用。視認性の高さから、大きなサイズの蛍光色を選びました。原色でもよいと思います。

コモンプレイス・ブックに使用したノートとシール

KEYの設定

ツールを準備したら、次はKEYの設定です。筆者は、自分の悩みや願望をKEYに設定しました。

というのも、新聞や雑誌から必要な記事だけを探し出す「クリッピング」の専門家・村上悠子氏が、「本を読む前に “キーワード” を設定して、それを “検索するような感覚” で本文を読めば、欲しい情報がとれる」と述べていたからです。

何かしらのキーワードを意識することで必要な情報が見つけやすくなることを、脳科学の世界では、脳の焦点化というのだそう。

(上記参考元およびカギカッコ内引用元:村上悠子(2020),『情報吸収力を高めるキーワード読書術』, フォレスト出版.)。

つまり、「この本からはこの情報が欲しい」「この本を読んで○○ができるようになりたい」といったことを決めておかないと、本を読んでも、必要な情報をキャッチしそびれてしまうかもしれないのです。

村上氏いわく、本を読む前に「欲しい情報(=悩みや願望)を分解」してキーワードを設定するとよいとのこと(カギカッコ内引用元:同上)。そこで筆者は、下の画像のように悩みや願望をKEYに設定し、シールの色と対応させました。

  • コンディション管理したい……ピンク
  • ライティングスキルを高める……オレンジ
  • インタビューが上手くなりたい……黄色
  • 目標達成力を高める……緑

KEYを書き込んだシール

このように、シールにKEYを書ておくと、どの色がどのKEYか忘れずにすむのでおすすめです。

本に付箋を貼った箇所を、まとめてノートに書き写す

本を読みながら、「この情報を覚えておきたい」「自分の願望に、この情報が役に立つ」と感じた箇所に付箋を貼りました。

付箋を貼り終えたら、まとめてノートに書き写します。桑木野氏の著書に、ルネサンス期の人たちは「多くの場合、あとでまとめてノートに書き写した」とあったので、そのやり方にならうことにしました。(カギカッコ内引用元:前出の『ルネサンス 情報革命の時代』)

こうしてできあがったのが、こちらのノートです。

筆者が作成したコモンプレイス・ブックのノート

コモンプレイス・ブックで読書ノートをつけた効果と感想

コモンプレイス・ブックで読書ノートをつけたところ、以下の気づきがありました。

悩みや願望をKEYにすることで読書がより「自分事」になった

悩みや願望をKEYにすると、本を読む目的が明確になり、これまで以上に読書が「自分事」になりました。そのためか、本の内容が記憶に残りやすくなったと感じています。

また、流し読みで済ませる箇所と、ノートに抜粋するために熟読する箇所で、読み方にメリハリがつきました。その結果、読書に対する集中力も高まった実感があります。

抜粋箇所が複数ページにわたるときは要約がおすすめ

「重要な情報が複数ページにわたって書かれている」「章全体が自分に必要な情報だ」という場合は、要約するとよいと感じました。

中学受験国語の専門塾を主宰し、学習関連の著書を複数もつ南雲ゆりか氏は、「要約の練習をすると、文章の骨格がとらえられるようになり、情報の整理がスムーズにできるように」なると述べています。(カギカッコ内引用元:朝日新聞EduA|「要約」の練習で、書く力と読む力を鍛えよう

「ここは要約してノートにまとめよう」と思うと、「どの情報を抜粋してどのように整理して記載しようか」と考えながら本を読むようになるので、集中力がさらに高まることを実感しました。

筆者の場合は、「1ページあたり2行以内でまとめる」「見やすさを重視して箇条書も使う」とルールを決めて要約しました。

たとえば、「インタビューが上手くなりたい」と考えて読んだ本のなかに、インタビューで聞きにくい質問をするときのコツが詳しく説明されており、その箇所について要約したのがこちらです。

【予防線を張る枕詞】
こんなこと聞いていいのかという不安を解消するとともに、「丁寧に説明しよう」とする姿勢が伝わる。

  • 基本的なことで恐縮ですが……。
  • 間違いがあってはいけないのでお聞きします。
  • 以前にもお伺いしたかもしれませんが……。

(要約元の書籍:高橋浩一 (2022), 『質問しだいで仕事がうまくいくって本当ですか? 無敗営業マンの「瞬間」問題解決法』, KADOKAWA.)

こうすれば、自分に本当に必要な情報だけを要約した読書ノートができあがります。読み返しやすくて便利ですよ。「あの情報はどこに書いてあったかな?」といちいち本のページをめくる必要は、もうありません。

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SNSを中心に注目を集めている「コモンプレイス・ブック」。書き方に細かいルールはありませんので、筆者が紹介した方法も試しながら、ぜひみなさんの読書に役立ててみてくださいね。

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