スタンフォード式手書きノートの2大特徴は「質より量」「雑で汚い」。その納得の理由とは

柏野尊徳さん「スタンフォード式超ノート術」01

パソコンやスマートフォン、タブレットといったデジタル端末を扱うことが日常化し、「手書き」する機会が激減しています。そんななかで手書きの重要性を説くのは、自身がスタンフォード大学で学んだワークをノート術に落とし込んだ、『地頭が劇的に良くなる スタンフォード式超ノート術』(SBクリエイティブ)の著者・柏野尊徳(かしの・たかのり)さんです。

すぐに動く習慣が身につくだけでなく、ひとつのアイデアに縛られずにどんどん前に進むことができるなど利点の多い、独特のノート術について教えてもらいました。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹

手書きを習慣化することで、「すぐに動く」力が身につく

私は常々、「手書き」することの重要性を説いています。その理由は、日常的に手書きをすることで、仕事に直結するいくつもの力を高めることができるからです。そのひとつに、すぐに動く力が挙げられます。

手書きではなくパソコンを使う場合、起動時間が必要ですし、充電が切れてしまったり故障したりすれば使えません。スピーディーに動きづらいことは明白でしょう。また、キーボードなどを介在させる必要があるため、「書く」という行為と自分自身の距離がそれだけ離れることになります。すると、ダイレクトに物事を動かせなくなり、何かいいアイデアが浮かんでメモをしようとしたはずなのに、書き始める頃には「どんなアイデアだっけ……」と忘れてしまうということもありえます。

一方、手書きの場合なら起動時間はほとんど0秒。充電する必要もありませんし、故障の心配もありません。そのため、「これはいいな」「明日の会議に使えるかも」などビジネスパーソンが感じたことや考えたことを、その場で瞬間的に書くことができます。そういう行為を続けることで「すぐに動く」という習慣が身につけられるのです。

人手不足により、ひとり当たりの仕事量がどんどん増えていると言われるいま、スピードがビジネスパーソンにとって重要なことは言うまでもないでしょう。

もちろん、場合によってはじっくり考えたほうがいいときもあります。すぐに動くこと、じっくり考えること、それぞれをケース・バイ・ケースで使い分けられるようになることが大切だと思います。

柏野尊徳さん「スタンフォード式超ノート術」02

時代にマッチする、「とにかく質より量」で「雑で汚い」ノート術

ただ、いまのビジネスパーソンには、どちらかといえば、考えすぎるために動けなくなっている人が多いように私は感じています。だからこそ、「すぐに動く」習慣を意識的に身につける必要があります。

そこで私が提唱しているのが、スタンフォード式超ノート術。これは、私がスタンフォード大で学んだワークをノート術に落とし込んだものです。

そのノート術にはいくつかの種類があり、ここではそれらの詳細には言及しませんが、共通する特徴は、ノートをとるために「コストをかけないということです。もっとわかりやすく言えば、とにかく質より量」「雑で汚いという特徴があります。

その理由を、まずはマクロ的な背景から解説しましょう。アメリカ、特にシリコンバレーではスタートアップがどんどん登場します。すると、丁寧にアイデアを練ってプランニングし、1年後にかたちにするというようなスピード感では、周囲に置いていかれてしまいます。激しい競争を勝ち抜くには、「すぐに動く」ことがなにより重要なのです。

でも、日本の場合はアメリカと比べるとかなり悠長。ある大手企業では2年も3年もかけて新規事業のプランニングだけをずっとやっているといった話も聞きます。それでも大きな問題が生じないのは、アメリカと比べて競争が格段にゆるいからでしょう。日本に長寿企業が多いことはよく知られていますが、裏を返せばそれだけ競争が激しくない社会だという可能性があります。

「だったら、日本では日本のやり方でいいのでは?」と思った人もいるかもしれません。たしかにそういう見方もできますが、もしそこでアメリカで求められているようなスピードを身につけられたらどうでしょうか? 競争がゆるい日本で周囲よりも圧倒的にすばやく成果を出すことができますよね。

柏野尊徳さん「スタンフォード式超ノート術」03

自分のアイデアを大好きになったらうまくいかない

「スタンフォード式超ノート術」に、「とにかく質より量」「雑で汚い」という特徴があるもうひとつの理由は、ビジネスパーソンの心理面に与える影響です。

人は、仕事に対して頑張ったら頑張ったぶんだけその仕事がかわいく思えてきます。数週間・数カ月かけて練り上げた企画が通りそうにないとなったら、「やっぱり問題点があるよな」と頭では考えつつも、「まだなんとかなるんじゃないか……」「いまさらほかのこともできないし……」なんて感じて粘りたくなってしまう。

もちろん、問題点がある企画をなんとか通そうといくら粘ったところで時間と労力の無駄ですから、すぱっと諦めて次の企画を考える必要があります。それなのに、「まだなんとかなるんじゃないか……」という心理的な障害が生まれるのは、企画を考えることや企画書を作成することに対して時間や労力など多くのコストをすでにかけてきたからです。いわば、日本人の「もったいない精神」が悪い方向に出てしまっている事例といえるでしょう。

でも、「とにかく質より量」で異なる企画の種をいくつも用意してあり、企画書も「雑で汚い」ものにしていたとしたらどうですか? すぱっと諦められ、貴重な時間と労力を次の企画に注ぐことができます

私がスタンフォード大で指導を受けた先生も、自分のアイデアを大好きになったらうまくいかないというようなことを言っていました。極端な言い方かもしれませんが、「自分のアイデアをいつでも捨てられる」状態にしておくことが大切なのです。そうすれば、愛着などに縛られず、成果を挙げるためにはどんなアイデアや行動がいいのかと冷静に判断できるようになります。

自分のアイデアやノートに愛着をもってしまったがゆえに最終的に目指すべきゴールを見誤ることがないよう、「とにかく質より量」「雑で汚い」ノートを心がけてみてください。

【スタンフォード式超ノート術の一例】

■ アイデアノート

柏野尊徳さん「スタンフォード式超ノート術」04

この例では、来月のプランについて思いつくままに書き出している。大切なのは、考えをまとめてから書くのではなく、手を動かして書きながら考えること。言葉を線でつなげたり丸で囲んだりしながら、考えを視覚化する。思考が刺激されるため、簡単な絵を書くのもよい。

柏野尊徳さん「スタンフォード式超ノート術」05

【柏野尊徳さん ほかのインタビュー記事はこちら】
【地頭がよくなるノート術】AppleやGoogleを育てたスタンフォード大が教える「手書き」メソッド
“デキる人” の理性・感性の働かせ方。「右脳と左脳」ともに鍛えて初めて仕事はうまくいく

【プロフィール】
柏野尊徳(かしの・たかのり)
1984年6月25日生まれ、岡山県出身。慶應義塾大学総合政策学部へ入学し、1年目に学内学会で優秀論文賞を受賞。在学3年目にスタンフォード大学に留学し、デザイン思考を学ぶ。帰国後に飛び級、授業料全額免除の特待生として慶應修士課程を修了。岡山大学大学院では非常勤講師を3年務める。現在ケンブリッジ大学でイノベーション・エコシステムを研究、博士号取得予定。在学中に設立した「アイリーニ・マネジメント・スクール」はマイクロソフトやパナソニックなどの組織変革を支援し、世界40カ国発行『Startup Guide』で日本を代表する教育機関に認定される。スタンフォード大学講師との共同講座開催、教材ダウンロード16万部、セミナー累計参加者数5000名。エンジェル投資家、長崎大学FFGアントレプレナーシップセンター外部アドバイザー(プロボノ)。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。

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