- 企画を考えることが苦手
- 伝えたいことを言葉にするのが苦手
- 人の気持ちを察知するのが苦手
- チームワークが苦手
上記にひとつでも当てはまるものはありませんか? 「特定の仕事に苦手意識がある」けれど「別の仕事なら得意」というケースはよくあるもの。こうした得意・不得意は、どうして生まれるのでしょう。
医学博士・脳科学者の加藤俊徳氏によると、その原因は脳機能の発達具合にあるようです。今回は、加藤氏の提唱する不得意な仕事の能力がアップする方法をご紹介します。
脳は機能別に8つの「番地」に分かれている
加藤氏は、脳は機能別に、以下のように大きく8つの「番地」に分かれていると言います。どの番地の機能が活発に動いているか・動いていないかによって、得意な仕事と苦手な仕事が決まってくるそう。
- 思考系脳番地……考える・決断することなどに関係している
- 感情系脳番地……感性や感情のコントロール、他人の感情を理解することなどに関係している
- 伝達系脳番地……話す・伝えるなど、コミュニケーションに関係している
- 聴覚系脳番地……情報を聞き取ることなどに関係している
- 理解系脳番地……物事を理解することなどに関係している
- 運動系脳番地……体を動かすことなどに関係している
- 視覚系脳番地……物事を目で見る・違いを見分けることなどに関係している
- 記憶系脳番地……記憶する・思い出すことなどに関係している
あなたが苦手とする項目は、8つのうちどれですか? 加藤氏によると、苦手なことに当てはまる脳番地を鍛えれば、その能力を高めて苦手を克服できるとのこと。筋トレをするときに、自分が鍛えたい筋肉を意識しながらトレーニングをしますよね。それと同じように、脳も鍛えたい部分を意識することが大切なようです。
今回は、この8つのなかでも特に仕事に役立ちそうな「思考系脳番地」「感情系脳番地」「伝達系脳番地」「聴覚系脳番地」の4つを鍛える方法をご紹介したいと思います。
【1】企画を考えることが苦手な人は「思考系脳番地」を鍛えよう
「企画案を出してもいつもパッとしない」
「物事を決断できない」
「ずっと考えているのに、よいアイデアが思い浮かばない」
このように考えることが苦手な人は「思考系脳番地」が弱いよう。これを鍛える方法を3つピックアップします。
1. 上司や同僚などの長所を挙げる
ポイントは、普段あまりよく思っていない相手を選ぶこと。そして、「この人のいいところを5つ挙げてみよう」と、あらかじめ数を決めてから実践するのです。無理をしてでも、決めた数だけ長所を絞り出すことが、思考力を鍛えるいいトレーニングになるのだそう。
2. 休日の過ごし方を自分以外の人に考えてもらう
他人に決めてもらったプラン通りに行動することで、自分では普段行かない場所に行ったり、日頃やらないことを体験したりしましょう。「意外性」に遭遇すると、思考系脳番地が刺激されるのだとか。
3. 判断する機会を意識的につくる
ランチの際にはメニューを迷わずに決める。自動販売機で飲み物を買う際には、即座に選ぶ。このように「瞬時に決める」ことを繰り返すと、判断力が高まり、思考系脳番地を鍛えることができるそうです。
【2】相手の状況や気持ちを察知することが苦手な人は「感情系脳番地」を鍛えよう
「同僚がいつもとは違う様子であることに、なかなか気づくことができない」
「上司の感情を察知できず、怒らせてしまうことがよくある」
このように人の表情や雰囲気などから「違和感」を察知することが苦手な人は、「感情系脳番地」を鍛えるといいでしょう。2つのトレーニング方法をピックアップしてご紹介します。
1. 人以外のものに話しかける
加藤氏によると、もの言わぬ相手に話しかけることで感情系脳番地が刺激されるのだとか。植物に「水は足りている?」「今日は青々としていて元気そうだね」など、話しかけてみましょう。ペットを相手にしても同様の効果が得られるそうですよ。
じつは植物は仕事に対し、別の嬉しい効果ももたらしてくれます。ノルウェー大学の研究によると、机の上や近くに観葉植物や花瓶を飾っておくことで、仕事への注意力が上がることがわかっているのです。仕事場に植物がないという人も多いかもしれませんが、これを機に置くようにしてはいかがでしょうか。
2. 会った人に印象を伝える
別の部署の同期に会ったとき。後輩とすれ違ったとき。相手の様子を観察して「何か困ってる?」「嬉しそうだね。何かいいことあった?」など、自分が受けた印象を元に話しかけてみてください。
こういったコミュニケーションは、日常的にやらない人ほど照れくさく感じるかもしれませんね。ですが、だからこそ相手にもっと興味をもって接してみてください。相手の表情や仕草などから見えてくる「気持ちの変化」に注意を向け、感情系脳番地を活性化させましょう。
【3】言いたいことをうまく伝えられない人は「伝達系脳番地」を鍛えよう
「自分の伝えたいことを理解してもらえない」
「言いたいことがうまく言えない」
このような悩みをもつ人は「伝達系脳番地」を強化しましょう。2つのトレーニング法をご紹介します。
1. 相手の望む選択肢を3つ考えて質問する
たとえば、「今度の休日、何がしたい?」ではなく「今度の休日、何がしたい? 映画鑑賞? カフェ巡り? 水族館?」など、その場に応じた選択肢を3つ考えながら話すことを意識しましょう。
相手が何を望んでいるか分析しながら、伝え方を選択するなどの工夫が必要となり、伝達系脳番地が刺激されるそうです。
2. 人のまねをする
伝達系脳番地は、人のまねをする際に刺激されるのだとか。
たとえば、友人宅や、SNSで見かけた家など、「私の家もこんなふうにしてみたい」と思える家があれば、ぜひ配置や片づけ方をまねしてみましょう。
【4】チームワークが苦手な人は「聴覚系脳番地」を鍛えよう
「自己中だと言われたことがある」
「人の意見を聞き入れるのが苦手だ」
このようにチームワークが苦手な人は、「聞き上手」になることで解決できるかもしれません。実際に、中小企業の経営者のほとんどは、「聴覚系脳番地」が発達していて聞き上手なのだとか。周囲の言葉をしっかりと聞くことで、適切な対応ができ、評価され、経営者の立場になれた――このように考えられるというわけです。
聴覚系脳番地を鍛える2つのトレーニングを紹介します。
1. 寝る前、静かにラジオを聴く
聴覚系脳番地は「聞き取ろう」と意識的に耳を傾けることで鍛えられるそうです。そこで加藤氏がすすめるのは、眠りにつくタイミングで、ラジオを聴くこと。暗い部屋で、静かにラジオを聴くことで、聴覚のみが研ぎ澄まされる状態になります。これなら生活に気軽に取り入れられそうですね。
2. あいづちのバリエーションを増やし、その場に応じて使い分ける
うなずく回数やタイミング、言葉のチョイスなど、あいづちを細かく使い分けるとよいとのこと。相手の話に対して、どのようなあいづちが適切か考えながら話を聞くことがポイント。それによって、脳が相手の話に意欲的に耳を傾け、話の細かなところまで理解しようとするようになるのだとか。
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ひとりひとりの顔が違うように、脳も人それぞれ発達具合が違い、得意な脳番地、苦手な脳番地はみな異なります。だからこそ脳のトレーニングも、自分に合わせた方法を選択することが大事なのですね。あなたにぴったりの「脳番地トレーニング」をぜひ実践してみてください。
(参考)
Life Planner|働き盛りの脳を『劣化』から守る! 30代からの脳の育て方」
脳の学校|脳番地とは?
リクナビNEXTジャーナル|手軽に実践できる!情報分析力・企画力を高める「脳」の鍛え方
リクナビNEXTジャーナル|折衝力・コミュニケーション力を高めるには?手軽に実践できる「脳」の鍛え方
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【ライタープロフィール】
Yuko
ライター・翻訳家として活動中。科学的に効果のある仕事術・勉強法・メンタルヘルス管理術に関する執筆が得意。脳科学や心理学に関する論文を月に30本以上読み、脳を整え集中力を高める習慣、モチベーションを保つ習慣、時間管理術などを自身の生活に取り入れている。