「平日は会社と自宅の往復だけで、むなしい」
「仕事が終わると疲れて何もできない」
このように「なんだか毎日やる気がない……」と感じてしまうのは、脳の調子が悪いからかもしれません。
今回は脳にいい「最高の平日習慣」を提案します。日々に小さな習慣を加えることで、脳のコンディションを整え、さらに活性化させ、イキイキとした毎日を送りませんか?
1. 休憩時間に「昼寝」をする→慢性疲労を解消!
医師・脳生理学者で東邦大学医学部名誉教授の有田秀穂氏は、昼寝の習慣をすすめています。睡眠不足による疲労の蓄積を解消するのに、昼寝はぴったりなのだとか。
「昼寝をすると夜眠れなくなってしまうのでは?」と、心配する方もいるかもしれませんね。しかし昼間は、よく眠るためのホルモンである「メラトニン」が出ていません。夜間のようにぐっすり眠ってしまうことはないため、心配する必要はないのだと有田氏は言います。
もしも夜眠れなくなることが心配なら、朝は眠くてもさっと起きて太陽を浴びるようにしましょう。というのも、朝にきちんと日光を浴びなければ、夜のメラトニン分泌が阻害されてしまうから。睡眠不足を補うには、朝はしっかりと起床し、昼間に仮眠をとるのがよいのです。
実際に、NASAやGoogleといったトップ企業では、従業員にシエスタ(昼寝)をすすめています。体が昼食を消化してあいだに睡眠をとる企業文化が、生まれているのだそう。午後に20分ほど睡眠をとると、生産性が下がりがちな1日の後半に向けて、エネルギーチャージできるのだとか。
「ランチを食べたあとは眠くてやる気がしない」という人や、「いつも寝不足で疲れている」という人は、ぜひ昼休憩に昼寝を取り入れてみてください。
2. 帰宅後は「グルーミング」→ストレス軽減!
昨今、人との交流が減った人は多いのではないでしょうか。在宅ワークになった。出社はしているけれど仕事終わりに飲みに行く機会がなくなった……。そんなあなたは、近頃ストレスを解消できず、抱えたままになっているのではありませんか?
前述の有田氏によると、人との交流が減ったことで、働く人たちのストレスが増加している可能性があるのだそう。その理由は、「セロトニン」不足を解消できないからです。
セロトニンとは、幸せホルモンとも呼ばれる脳内ホルモンで、精神の安定やストレスの軽減を促してくれる神経伝達物質です。パソコンを1日中使うことや、ストレスフルな人間関係によって、仕事が終わる頃には、脳はセロトニンが不足した状態になってしまうのだとか。
そんな欠乏状態のセロトニンを補うために有効だと有田氏が言うのが「グルーミング」です。グルーミングとは脳科学用語で「心地よいスキンシップ」を意味しますが、親しい人とのおしゃべりでも同様の効果が得られるのだそう。心地よくおしゃべりをすることで、「オキシトシン」という疲れを癒してくれる脳内物質の分泌が促され、それによってセロトニンも活性化する効果があるのです。
仕事が終わるとへとへとになって何もできないという人は、ぜひ、有田氏がすすめる以下のグルーミングを実践してみましょう。「心地よい」という感覚を得ることが大切ですよ。
- 気心の知れた友人と電話で話す
- ペットと遊ぶ
- 家族との団らん
- ゆっくりお風呂に入る
- 読書をする
ぜひ、自分にとっての「心地よい」行動を取り入れてみてください。
3. 5〜15分ランニングをする→脳の活性化やストレス解消に!
脳研究者の池谷裕二氏によると、ランニングをすると、神経細胞に情報伝達をするシナプスが増えるのだそう。脳の細胞同士をつなぐ配線の数が増えて綿密になることで、全体のボリュームが大きくなり、記憶力に関係する「海馬」の体積も増えるのだとか。
池谷氏いわく、海馬を活性化させるためには、たった5分のランニングでOKだとのこと。これを1~3カ月続けることで、上記の効果が見られるそうです。
また、脳科学者の茂木健一郎氏は、記憶の整理・ストレス解消・脳のメンテナンスなどのために、日々の習慣にランニングを取り入れているそう。「デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)」という神経回路の働きによって、走っているあいだに考えが整理されるのだと言います。
DMNは、意識的な活動をしていないとき、すなわち頭が空っぽになったときに活動する神経回路。主な役割のひとつが「脳内の情報や記憶の整理」です。ランニングをしているときは、スマホを見たり作業をしたりできないため、結果として頭が空っぽの状態をつくりだすことができます。よって、記憶が整理され、ストレスが解消される効果があるのです。
茂木氏によると、DMNはゆったり15分程度走ることで働き始めるそう。期待する効果に応じて、ランニング時間を決めるのがよさそうですね。
4. 目の血流改善→脳の疲れに直結する眼精疲労を解消!
多くのビジネスパーソンが、1日中パソコンの画面を見続けていることでしょう。じつは、それによって脳疲労が引き起こされている可能性が高いのです。
のべ5,000人以上の睡眠に関する悩みを解決してきた睡眠セラピストの松本美栄氏によると、「眼精疲労」が脳疲労の原因のひとつなのだそう。
松本氏いわく、眼精疲労とは目からくる脳と神経の疲れのこと。「目は脳の一部」と言えるほど、目は脳と強くつながっているもの。デスクワークでパソコン作業を長時間行なった場合、目だけでなく、脳までもが疲れてしまうのだと言います。
脳が疲れた状態が続くと、交感神経が優位になって緊張状態が続き、リラックスできずに睡眠の質が下がってしまいます。そして睡眠の質が下がることで、さらに脳が疲れてしまうという悪循環を招くことも……。
だからこそ、デスクワーク中心のビジネスパーソンは、眼精疲労を上手に取り除く習慣をもっておきましょう。
松本氏によれば、眼精疲労を癒すには、目を温めて血流を改善させることが大切だとか。おすすめは厚手のフェイスタオルを蒸しタオルにして目を温めること。後頭部の髪の生え際にタオルをあてて温め、充分にリラックスしてから、両目の上にタオルを置くとよいのだそう。
ぜひ、脳の疲れを溜めないためにも、1日の終わりに目をいたわってあげてください。
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いつも疲れていたり、やる気が出ないという人は脳の疲れやストレスが溜まっているのかもしれません。平日に小さな習慣を重ねて、ぜひ改善していってくださいね。
(参考)
有田秀穂(2020),『医者が教える疲れない人の脳』,三笠書房.
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【ライタープロフィール】
Yuko
ライター・翻訳家として活動中。科学的に効果のある仕事術・勉強法・メンタルヘルス管理術に関する執筆が得意。脳科学や心理学に関する論文を月に30本以上読み、脳を整え集中力を高める習慣、モチベーションを保つ習慣、時間管理術などを自身の生活に取り入れている。