「一生懸命仕事しているのに、なかなか結果が出ない」
「仕事がはかどらない」
「自分は仕事が遅いほうだと感じる」
そのような人は、脳にマイナスに作用し、仕事の効率を下げる「悪習慣」をしている可能性があります。仕事中の脳に最悪なNG習慣を4つご紹介しますので、仕事がうまくいかないことでお悩みの人は参考にしてみてくださいね。
1. 姿勢が悪い
脳研究でノーベル賞を受賞したロジャー・スペリー氏によると、脳の健康は、背骨の動きに9割も左右されるのだそう。姿勢が悪いと脳機能を大きく低下させてしまうのです。背骨の健康は、脳の健康に直結していると言っても過言ではありません。
デスクワークの人は、1日の3分の1程度を座って過ごすことになります。背中を丸めて首が前に突き出た状態でパソコンをのぞき込んでいる人は、毎日背骨を酷使しているばかりか、脳を不健康な状態に陥らせているのです。
背骨に負担のかからない姿勢で作業をするためには、人間工学に基づいたデスク環境が必要。以下はコーネル大学のアラン・ヘッジ教授が提唱する、正しい姿勢を保つためのデスク環境です。
- 机:キーボードやマウスに対して、肘は90度が理想的。腕の曲がりすぎや伸ばしすぎを防ぐために、椅子や机の高さを調整しましょう。
- 椅子:後ろに寄りかかりすぎたり、前のめりになりすぎたりするのはNG。座る角度の理想は100〜110度ほどで、背筋を床と垂直にするよりも若干後ろに傾くのがよいでしょう。体にしっかり合う椅子を選ぶか、高さやリクライニングを調整できるものが理想的。
- パソコンの高さ:前のめりでパソコンをのぞき込む姿勢は厳禁。理想は、目線の高さと画面上部が並行になること。パソコンを見るために首を曲げる必要がないのがベストのよう。
デスク環境が悪いという人は、机や椅子の買い替えを検討してみてもいいかもしれませんね。
2. 同僚のサポートをしすぎている
いつも誰かを手伝っていたり、たくさん仕事を請け負ったりしていませんか? 会社にとっては助かる存在かもしれませんが、仕事量が常に手いっぱいな状態は「燃え尽き症候群」を招く可能性があります。
燃え尽き症候群とは、心のエネルギーが奪われ、仕事へのやる気がなくなってしまう状態のこと。一生懸命働く人ほど陥りやすい、メンタル不調のひとつです。「最近やる気がなくなってきた」「人と関わるのが億劫になってきた」と感じる人は、特に要注意です。
こうしたメンタル不調の原因として考えられるのは、仕事量や労働時間が増えすぎること、頑張りに対して報酬が少ないこと、ともに働く人たちとのつながりを感じられていないことなど。まさに、周りのサポートをしすぎて「自分ばかり頑張っている」と感じる状況が危険なのです。
燃え尽き症候群の怖いところは、一時的に気力が低下するだけでなく、脳の神経回路に影響を及ぼし、長期にわたって神経性の機能障害を起こす可能性があるということ。具体的には次のようなことが挙げられます。
- 前頭前野が薄くなることで、認知能力が低下する
- 脳の扁桃体が肥大することで、気分の変動が激しくなり、不測の事態が起きたときに強いストレスを感じやすくなる
- シナプスなど脳の神経細胞をつなぐ部分が弱まり、神経回路網の働きが低下することで、ワーキングメモリーや発想力が衰える
仕事を抱えすぎることが、成果に直結するわけではありません。脳を労わるには、仕事量を調整することも大切。心当たりのある人は、意識的に休息を増やす、頼まれた仕事になんでもイエスと答えないなどの工夫をしてみてはいかがでしょう。
3. タスクにかける時間を決めていない
時間を決めずにだらだらと仕事をしていませんか? ToDoリストをつくっている方は多いかもしれませんが、それだけでは不十分。作業効率や集中力を上げるためには、各タスクにかける時間も決めておくことが大切です。
著書『脳が冴える15の習慣—記憶・集中・思考力を高める』で知られる脳神経外科医の築山節氏によると、「脳の基本回転数を上げる」ことで集中力や思考力が高まるそう。脳の基本回転数とは、頭の回転の速さのこと。築山氏いわく、頭の回転の速さは、生まれもった性質ではなく後天的に鍛えることができるもの。そうするには、仕事をする際に時間制限を設けることが有効だそうです。
たとえば「今日中にプレゼン資料をつくり終える」というざっくりしたタスクだと、1日中だらだらと資料づくりに時間をかけてしまうかもしれません。一方、「10:00〜11:30で資料集めをする」「12:00までに大枠を決める」など、具体的なスケジュールを設けることで、のんびり作業することを防ぎ、脳の基本回転数を上げることができます。
仕事の遅さや、判断能力の低さなどに悩んでいる人は、ぜひ実践してみてくださいね。
4. マルチタスクをしている
複数のことを同時にこなす「マルチタスク」は生産性を下げるだけでなく、脳の働きも悪くしてしまいます。
じつは脳は、複数の作業を同時に進めることができません。マルチタスクをしている人は、同時進行でいくつかのことをしているように見えて、実際に脳内では、ひとつの作業からまた次の作業へ、そしてまた次の作業へと忙しく切り替わりながら処理が行なわれているのだとか。
スタンフォード大学のクリフォード・ナス教授によると、マルチタスクを頻繁にする人の脳は、そうでない人に比べ、ひとつの作業から次の作業へと切り替えることが不得意になっていくうえ、不要な情報を選別する能力が低下するそうです。
ほかにも、キングス・カレッジ・ロンドン精神医学研究所の調査によると、IT機器を使ってマルチタスクをすることは、徹夜をすることや大麻を吸うことよりも、IQの低下を招くという結果が出ているよう。
マルチタスクは無意識にやりがちなので、自分のなかでルールを決めることが有効です。たとえば、パソコンで作業をしているときは不要なタブを閉じ、いま必要な情報にだけ集中しましょう。仕事中にスマートフォンが気になる人は、別の部屋に置いておいたりバッグにしまったりすることをおすすめします。メールチェックも頻繁にしたくなりますが、1時間に1回など時間を決めて行なったほうが、マルチタスクを防げますよ。
意識的にシングルタスクを心がけ、マルチタスクをなくしていきましょう。
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仕事は脳を使って行なうからこそ、脳に悪影響を及ぼす習慣には要注意です。仕事場での過ごし方を見直して、改善すべきものがあったらぜひ改善してくださいね。
【ライタープロフィール】
Yuko
ライター・翻訳家として活動中。科学的に効果のある仕事術・勉強法・メンタルヘルス管理術に関する執筆が得意。脳科学や心理学に関する論文を月に30本以上読み、脳を整え集中力を高める習慣、モチベーションを保つ習慣、時間管理術などを自身の生活に取り入れている。
(参考)
Radiant Life Chiropractic|Posture and Your Brain
Cornell University Ergonomics Web|Ergonomic Guidelines for arranging a Computer Workstation - 10 steps for users
Science of People|How to Fight Burnout and Get Unstuck in 11 Empowering Steps
かせ心のクリニック|燃え尽き症候群(バーンアウト症候群)
築山節(2006),『脳が冴える15の習慣—記憶・集中・思考力を高める』, NHK出版.
Buffer|What Multitasking Does to Our Brains
PBS|Interview
Forbes|Why Multi-Tasking Is Worse Than Marijuana For Your IQ