「絵」を付加することによって、暗記力が飛躍的に高まることをご存知ですか? もしも、あなたが絵を描くことが好きならば、なおさらその「好き」を活用しない手はありません。絵が苦手な方でも、イラストや写真をコピーすれば大丈夫。その効果の理由と、方法、注意点をご紹介します。
「絵」と「暗記」のかけあわせがいい理由
私たちは常にイメージを使って記憶している
昨日食べたものなどを思いだそうとするとき、わたしたちは食事の状況や食べ物のイメージを頭に思い浮かべますよね。つまり、わたしたちは普段、“イメージ” を使ってあらゆる体験を覚えています。しかし、いざ勉強となると、そのイメージをあまり使わなくなってしまうのだとか。
そこで、『「1分スピード記憶」勉強法』の著者である宇都出雅巳氏は、勉強においても普段のやり方に戻るべきだとし、「イメージ記憶術」をすすめています。
イメージ記憶術はどうして覚えやすい?
たとえば、593年に聖徳太子が推古天皇の摂政となったことを覚える際、内容と年号を覚えるだけでは頭から離れやすい「意味記憶」=(足し算や掛け算、単語や年号など、知識の記憶)のままです。自然科学研究機構生理学研究所教授の柿木隆介氏は、脳にとって印象的でもなければ、生存に関わるほど重要でもない年号や英単語などの知識は、いやがる海馬をたたいて無理やり“くり返しくり返し”覚えさせるしかないといいます。
しかし、近年頻繁に使われている「コック(593年)さんだよ聖徳太子」という語呂合わせで覚えようとすると、「コック姿の聖徳太子を想像したら楽しかった」という体験になり、そこで記憶に残りやすい「エピソード記憶」=(実際に体験した出来事や、小説・映画など)になります。
つまり、イメージ記憶術が効果的な理由は、「意味記憶」が体験と結びつく「エピソード記憶」へと変化するから。
イラストを付加するとさらに強化
そのイメージ記憶術を、頭のなかだけではなく現実に示したのが「絵×暗記」法です。文字だけでも語呂合わせは面白いですが、「コック帽をかぶった聖徳太子」のイラストを実際に見たほうが、当然インパクトは強いはず。
ほかにも「本能寺の変 いちごパンツ(1582年)の信長殺される」と覚える語呂合わせがありますが、いちごパンツを穿いた信長のイラストを見たら、もう忘れたくても忘れられません。
つまり、「絵×暗記」法は、「イメージ記憶術」によるイメージの輪郭を、よりハッキリさせてくれる暗記術なのです。
モチベーションMAX!「絵×暗記」法
ではここで、具体的に「絵×暗記」法のやり方を3つご紹介します。
1.ギャグ感が漂う語呂合わせ
7万部も突破したという『イラスト記憶法で脳に刷り込む英単語1880』は、英単語を微妙なギャク感が漂う語呂合わせとイラストで、ムリなく覚えられると評判です。
たとえば「property(プロパティ・財産、所有物)」という単語に関しては、「プロ仕様のパッチ(ももひき)が、私の財産だ」という語呂合わせに、パッチを満面の笑みで持ち上げている高齢者のイラストが。
「insult(インサルト・侮辱)」という単語に関しては、「犬とサルが侮辱しあっている」という語呂合わせそのまま、犬とサルがケンカをしているようなイラストが添えられています。
たとえば、そうした手法をマネて覚えたい単語の語呂合わせをつくり、イラストを描いてもいいし、『イラスト記憶法で脳に刷り込む英単語1880』の語呂合わせとイラストを、自分らしいイラストで書き直しても、イメージ込みのアウトプットになって記憶に定着しやすくなるはずです。
2.自分の感情体験を絡ませる
脳科学に基づいた勉強法を構築し、多くの語学を習得したオペラ歌手のガブリエル・ワイナー氏は、覚えやすいものと、覚えにくいものの違いをこう説明しています。たとえば同氏にとって「クッキー」という単語は、見た目や香り、味、幼少期の思い出なども含まれているため、その響きだけでさまざまな記憶が脳内で再生される単語です。
しかし、仮に「ns$pwbui;sii」という架空の単語を覚えようとしても、体験による情報が含まれないのでクッキーのような脳内での再生は起こりません。だから覚えにくい、というわけです。ならば覚えたいものに、自分の感情体験を絡ませてしまいましょう。たとえば「craving(クレイビング・渇望)」という単語。
ダイエット中で craving という単語を覚えたいなら、ケーキなどスイーツのイラストを添え、「あぁ、ものすごく食べたい……(渇望)」という感情体験で覚えてしまうのです。
もしくは、忙しくて旅行に行けない人ならば、craving という単語の横に行きたい場所を象徴するイラスト(たとえばパリのエッフェル塔など)を添えてみましょう。「旅行行きたいなぁ……(渇望)」という感情とともに記憶に残るはずです。
3.イラストコンテストゲーム
『超カンタンなのにあっという間に覚えられる! 現役東大生が教える 「ゲーム式」暗記術』には、「イラストコンテストゲーム」という暗記術が紹介されています。この主な特徴は、絵を描く手間がないということ。手順は以下のとおり。
1. 暗記したい単語や偉人をノートに書く 2. その意味やイメージと合う人物の写真、あるいはイラストをコピーしてノートに貼る 3. イラストとセットで覚えられればゲームクリア
これを応用して1の微妙なギャグ感を加え、たとえば「グレゴール・ヨハン・メンデル」とノートに書き、「メンデル氏の写真」と「ラーメンの写真」のコピーを貼り1865円と書いて、 「遺伝子構造」のらせん状を背景にササっと描き足し、「1865円の麺出る。高すぎて驚く法則」とでも書き込めば、1865年に報告された「メンデルの法則(遺伝学を誕生させるきっかけとなった法則)」を楽しみながら覚えられます。
「絵×暗記」法を活用する際の注意点
イラストつきのほうが暗記しやすい理由と、その方法をご紹介しました。ただし、注意点が2つあります。
1.イラストを描きこんではいけない
絵を描くことが好きな場合、ついつい描くことに没頭してしまう可能性があります。楽しい感情体験がともなうので記憶しやすくなりますが、覚える絶対数は減ってしまいます。とにかくサッと描く、簡単に描くことを心がけましょう。
2.楽しまなくては意味がない
感情体験が絡まないと、せっかくイラストを描いても、単なる教科書の挿絵になってしまいます。暗記したいことは、自身が面白いと思う語呂合わせやダジャレ、強い感情をともなう体験に絡ませてくださいね。楽しんだ経験が暗記力を高めます。
*** ぜひ、楽しみながら挑戦してみてください。
(参考) 吉野邦昭著, 永井堂元著,佐藤文昭監修(2017),『イラスト記憶法で脳に刷り込む英単語1880』,あさ出版 . 西岡壱誠著(2017),『超カンタンなのにあっという間に覚えられる! 現役東大生が教える 「ゲーム式」暗記術』,ダイヤモンド社. フレッシャーズ マイナビ 学生の窓口|「いいくにつくろう~」はもう古い!? 実際に使っていた歴史年号の覚え方「いちごパンツ(1582)で本能寺」 Study hacker|もっと “記憶に残る” 学習を。脳が「勝手に覚えてくれる」記憶のテクニック All About|記憶術基本講座1——イメージ記憶術 ダイヤモンド・オンライン| 脳が認める外国語勉強法 | |覚えやすい単語と忘れやすい単語の違いは○○にあった!