1週間の予定を月曜日に立ててはいけない理由とは?――時間に追われない「賢い仕事術」

最小限の努力で高い評価を得て、プライベートも充実させたい。誰しも、「ラクして速く」仕事を終えたいのが本音でしょう。そのために重要となるのがスケジュール管理。

お話を聞いたのは、著書『ラクして速いが一番すごい』(ダイヤモンド社)がヒットしている松本利明(まつもと・としあき)さん。大手外資系コンサルティング会社を渡り歩き、独立後の現在も多忙な日々を送るなか、限られた時間をどのように使っているのでしょうか。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹(ESS) 写真/玉井美世子

「わずかな時間」をロスせず、逆に有効活用する

まず、1日の仕事をはじめる以前のことからお伝えしましょう。過去に6,000人を超えるリーダー候補を選抜してきた立場として感じたのは、優秀な人は必ずと言っていいほど「朝に強い」ということ。とにかく朝早く出社する人が多いのです。特に、都心部ではただ出社するにもストレスを感じますよね。電車は混むし、遅れることだってある。であれば、1時間でも早めに出社して、さっさと仕事をはじめてしまうという考えなのだと思います。

そして、仕事をはじめて真っ先に着手するべきなのは「相手がいる仕事」。報告書や提案書などの作成、そして、リーダー格の立場ならばメンバーからの相談や決済などの判断業務です。こういう仕事は、自分が提出や判断をしない限り、相手はその後の作業を進められません。全体の業務の流れが滞らないよう、相手が動けるようにする。来たボールをさっさと相手に投げ返してしまうというわけです。

これは、メールにも言えることですね。自分が判断や指示を伝えないと相手が動けないものを優先しましょう。その内容もできるだけ簡潔に。同僚宛てなら、「メールは1行でいい」のです。もっと言えば、表題だけでもいいくらいです。「承知しました」「そのまま進めましょう」。これで十分ではありませんか。

相手を待たせてしまうと、「あの件、どうなっているの?」なんて催促されて、状況報告するとともに謝ったり言い訳したりと無駄な時間を使うことになってしまう。ほんのわずかな時間かもしれませんが、このわずかな時間のロスが侮れないのです。それらが積み重なれば、「ラクして速く」仕事をすることの大きな障壁となってしまいます。

逆に言えば、そういう「わずかな時間を有効活用する」ことが、「ラクして速く」仕事をするためにはとても重要になります。打ち合わせ先に少し早く着いたからと、だらだらとスマートフォンを眺めて時間をつぶしているような人はいないでしょうか。わたしからすれば、すごくもったいないこと。その時間をしっかり活用してほしいのです。

そのためには、そういう時間でなにができるのかを知っておく必要があります。5分、あるいは10分でどんなことができるのか、時間を測りながら仕事をしてみてください。実際に測ることがポイントです。自己評価というものは高くなりがちなものですから、5分かかることも3分でできると思ってしまうものなのです。

そして、この5分、10分の時間感覚は、もっと時間がかかる仕事にも生かすことができます。30分で企画を考えるとしましょう。30分間、うんうんとうなってただ悩んでいても、いい企画はなかなか出てくるものではありません。「考えることと悩むことはちがう」ものですからね。そうではなく、「最初の5分でアジェンダ案を出そう」というふうに30分間を分割して考える。具体的なステップを踏んでみると、集中力も頭の働きも増すので、いいひらめきが浮かびやすくもなるのです。

主体的に「時間を追いかけて」仕事をする

続いて、1週間の時間をより効率的に使う方法をお教えしましょう。みなさんは、1週間のスケジュールをいつ練っていますか? 週のはじまりの月曜日だという人も多いでしょう。ただ、わたしはあまりおすすめしません。というのも、月曜日は週のはじまりだけあって、ミーティングが組まれるなど、時間を取られる予定がいろいろと入りがちだからです。

そこでおすすめするのは、「水曜日に1週間のスケジュールを練る」こと。週の真ん中ということで、その週のゴールに向けての見通しが立っていますし、翌週の予定も見えてくる。その週でやっておくべき打ち手を考え、翌週のゴール到達に向けた仕込みを冷静に考えられるのが水曜日なのです

金曜日の過ごし方も重要ですね。翌日が土曜日だからとついつい深酒をしてしまうと、土曜日のほとんどをつぶしてしまうようなこともあると思います。「ラクして速く」仕事をするには、週末の使い方も重要になる。たとえば、週末を使って運動をしてバリバリ働ける健康な体を維持することもいいし、習い事や勉強による自己投資も「ラクして速く」仕事をすることにつながるはずです。

二日酔いに苦しむだけというふうな無駄な時間を避けるため、ジムに行く、習い事をするといった予定を土曜日の午前中に入れてしまいましょう。いわば、「自分で自分にアポイントをする」ということです。そうすれば、自然にブレーキが働いて、金曜日の夜に遅くまで飲み歩くようなこともなくなります。優秀な人は共通して「土曜日の午前中の使い方がうまい」ものです。

自分に対しては当然のことですが、相手がいるスケジュール調整も主体的におこなうのが得策です。ミーティングのスケジュールを決めるにも、「みなさん、ご都合はいかがでしょうか?」と周囲に聞くと、権限のある人の都合で決められてしまいます。そうではなくて、「〇月△日□時でいかがでしょうか?」と、自分の都合で提示しましょう。じつは、そのほうが周囲も考える必要が少なくてラクでもあるのです。

そして、スケジュール調整する際にもうひとつ重要なのが、同じような要件を固めること。外出して打ち合わせをするなら、同じ日に複数の相手との予定を入れる。「1日中事務作業」「1日中ミーティング」「1日中外出」というふうに、なるべく「●●デー」になるように調整するのです。そうすれば、移動時間のロスを抑えることができますし、必要なものの準備や持ち物、服装などに悩むこともなくなります。

いずれにせよ、「主体的に時間を使う」ことが大切ですね。締め切りなど時間に追われるのは苦しいことですが、逆に時間を追いかけるのは楽しいもの。そういうゲーム感覚を持って、時間を追いかけて仕事をするように心がけてみてください。どんどん効率的に仕事ができるようになるはずですよ。

【松本利明さんのほかのインタビュー記事はこちら】 「まじめで一生懸命」は非効率! 「ラクして速く」仕事を進めるための2つの極意。 無駄な仕事はとことん切り捨てる! ラクして速く仕事を終わらせるための「捨てる技術」

ラクして速いが一番すごい

松本利明

ダイヤモンド社(2018)

5秒で伝えるための頭の整理術

松本利明

宝島社(2018)

【プロフィール】 松本利明(まつもと・としあき) 1970年12月12日生まれ、千葉県出身。人事・戦略コンサルタント。HRストラテジー代表。外資系大手コンサルティング会社であるPwC、マーサージャパン、アクセンチュアなどを経て現職。これまでに5万人以上のリストラをおこない、6000人を超える次世代リーダーや幹部の選抜・育成に関わる。そのなかで「人の持ち味に合わせた育成施策をおこなえば、ひとの成長に2倍以上の差がつく」ことを発見。体系化したそのノウハウを数多くの企業に提供し、600社以上の人事改革と生産性向上を実現する。著書に『「稼げる男」と「稼げない男」の習慣』(明日香出版社)もベストセラー。新刊は『5秒で伝えるための頭の整理術』(宝島社)』など。

【ライタープロフィール】 清家茂樹(せいけ・しげき) 1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。

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