【書評】『HIGH OUTPUT MANAGEMENT(ハイアウトプット マネジメント) ――人を育て、成果を最大にするマネジメント』

あなたのアウトプット(成果)は何ですか?

ビジネスパーソンであれば、経験と比例して責任のある仕事を任されることが増えてきますよね。また、後輩や部下ができたり、チームを率いる機会も多くなるでしょう。

そんな立場になったとき、あなたに求められるのは、個人の実務能力ではなく「マネジメント力」です。マネジメント力を強化することで、あなたの後輩や部下のアウトプットを最大限に引き出すことができ、それが結果的にあなたの評価につながるのです。

今回紹介するのは、アウトプットを最大化するための基本原理を教えてくれる一冊。

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HIGH OUTPUT MANAGEMENT(ハイアウトプット マネジメント) 人を育て、成果を最大にするマネジメント

アンドリュー・S・グローブ著 小林薫訳

日経BP社・2017年

(以下引用は本書より)

インテルの元CEOアンドリュー・グローブ氏が、後進の経営者やマネージャーに向けて書いた本で、FacebookのCEOであるマーク・ザッカーバーグ氏や、シリコンバレーの経営者たちに絶賛されています。原書は1984年に出版されており、当時すでに過熱するグローバル競争の中で、著者はアウトプットにこだわり、成長することの重要性を説いています。

読者のみなさんは、自分の職場を見まわしてそこにいる仲間がライバルだというかもしれないが、それは間違いである。職場の同僚などとは数においてはるかに上回る1000倍もの、1万倍もの、100万倍もの人々が、みなさんの会社と競合している組織で働いているのだ。だから、仕事をしたいならば、あるいは働きつづけたいならば、「個人としての競争優位性」を保つために、絶えず熱心に自分を磨かなければならないのである。

マネージャーとしてアウトプットを上げるならば、自身の生産性を高めることよりも、自分の組織(部下や後輩、チームなど)の生産性を高めたほうが効率的であり、その「テコ作用」が大事だとするアンドリューの考えを見てみましょう。

制約的ステップとオフセット

マネージャーとしてまず最初にすることは、自分のマネジメントする仕事全体の流れを把握し、作業全体の形を決める中心的なステップ(制約的ステップ)をはっきりと突き止めること。そして制約的ステップが最小化するように、他の作業の調整をすることが大切だとアンドリューは言っています。

半熟卵・トースト・コーヒーという朝食セットを例にあげ、最も時間のかかる半熟卵を茹でる時間を“制約的ステップ”として、卵が茹で上がる時間を逆算し、パンをトースターに入れ、そのパンの焼き上がりを逆算し、コーヒーをカップに注ぐことで、すべての作業を効率的に行うことができるとしています。

最も長い(あるいは最も困難な、最も要注意の、または最も費用のかかる)ステップから生産の流れを組み立てて、逆に考えてゆくという点である。3つのステップのすべてについて、いつ始まりいつ終わったかに注目すること。最も重要不可欠なステップ(卵をゆでるのに必要な時間)を中心に流れを計画し、他のステップはそれぞれ処理時間に応じてずらす。これを、生産関係の専門用語では“相殺(オフセット)(相互埋め合わせ・調整)”したという。

インディケーター(指標)の設定

また業務をうまく管理するには、良いインディケーター(指標)を設定することが必要だそう。経営であれば、「販売予測」「原材料在庫」「生産設備」「人員」「商品の質」などです。例えば、適切な「販売予測」をしておくことで、その日の売り上げが少なかったか多かったかを判断することができたり、忙しかった理由を「人員」が足りなかったからだと分析したりできますよね。

在庫管理の例でいえば、在庫量と品不足の発生率の両方の監視(モニター)が必要である。品不足の発生率が高くなれば、在庫が少なくなりすぎないように、手を打つのは明らかだろう。

このように管理するべきインディケーターを、あらかじめいくつか設定することによって、作業の進捗を様々な角度から管理することができ、且つ、問題が起きたときの対処方も見つけやすいのです。

目標管理(MBO)

組織のパフォーマンスを上げるために目標管理(MBO:management by objectives)システムは必要不可欠です。MBOとは、あらかじめマネージャーと部下との間で目標に関する合意を結び、それに対する達成度合いでの評価ですが、そのすり合わせが重要だとアンドリューは説いています。

人が仕事をしていない時、その理由は2つしかない。単にそれができないのか、やろうとしないのかいずれかである。(中略)マネージャーが部下の生産性を向上できる方法は2つしかない。それはモチベーション(動機付け)と訓練だ。

MBOについての例ではコロンブスを取り上げています。コロンブスは女王の「外国貿易収支を大幅に増加させる」という目標に対し、「東洋への新航路発見」という提案をしました。コロンブスは女王の目標と自分の目標をうまく動機付け、女王はコロンブスの目標に同意したのです。

このことをアンドリューは、「もし部下の目標が達成されれば、監督者の目標もまた達成されることになる」と述べています。コロンブスは厳密な意味でのMBOは失敗したかもしれないけれど、新大陸発見というスペインにとって計り知れない富をもたらしたことによって、女王の目標を達成させたのです。

タスク習熟度

「マネージャーの最も重要な責任は、部下から最高の業績を引き出すことである」とアンドリューは説いていますが、引き出し方のポイントは相手のタスク習熟度によるのだと言います。

相手のタスク習熟度が低い場合は、まず作業の仕組みから説明し、「何を」「いつ」「どうして」を細かく指示。次に習熟度が中程度である場合は、コミュニケーションを取りながら、お互いの判断を取り入れていく。最後に、高い習熟度の相手であれば、マネージャーの関与を最小限にとどめ、大まかにチェックをするだけでよいそうです。

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最後に成果を上げるためのわかりやすい行動指針チェックリストがついています。「1ヶ月に一度は口実を見つけて旅に出るようにする」などもありますよ。これは達成できるといいですね。 さああなたも、あなたのアウトプット(成果)を最大化しましょう!

(参考)アンドリュー・S・グローブ著,小林薫訳(2017),『HIGH OUTPUT MANAGEMENT(ハイアウトプット マネジメント) 人を育て、成果を最大にするマネジメント』,日経BP社.

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