今回は、行動経済学という分野に関するお話です。経済学においては、人間は常に合理的に考え、自分の利益が最大となるように行動するのだと考えられてきました。しかし、現実の社会では、あえて自分が不利益になるような選択をするなどの不合理な行動が多々見られます。そのような、従来の経済学が説明することができない現象を研究する学問として、行動経済学は発展しました。簡単に言えば、心理学と経済学の融合です。

人間の不合理な経済行動が解明されていくにつれ、それを利用する人たちが現れました。それは、サービスや商品の提供者である企業です。我々消費者は、企業の戦略によって、合理的に考えるとあまり得とは言えないような買い物をすることがあります。今回は、我々がやってしまいがちな買い物の仕方と、そこに潜む行動経済学の罠を説明していきます。

あの有名人が乗っている車だからいいに違いない

アカデミー賞の表彰式にスター達がトヨタのプリウスに乗って駆け付けたことをきっかけに、プリウスが人気の車となるということがありました。これは行動経済学では「ハロー効果」と説明されます。「ハロー」とは日本語では「後光」。後光がさしているものは、何であれいいものに見えてしまうという現象を表しています。

ここで問題となるのは、自分にとっての選ぶ基準がゆがめられてしまうことです。人間の思考は、一度そうだと思い込んだものを確信すべく、その証拠を集めていくという癖を持っています。一度その商品をいいと思ってしまうと、様々な根拠でその判断を支えるべく情報を集めて、その判断が揺るがないようにするのです。

もし何かを買いたくなったら、都合のよい情報ばかりを集めるのではなく、なぜ自分がそれをほしいと思っているのかを考えることが、後々後悔しないために必要です。

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「限定品」という文字を見るとついつい買ってしまう

筆者自身もそうですが、普段食べているアイスやお菓子に季節限定の味が登場すると、それを反射的に買ってしまう人は多いでしょう。

人間は物事の良しあしを判断する際、物事の最終的な結果よりも、経過における「変化」を重視するということが分かっています。つまり、初めの段階よりも得をしたか損をしたかで判断するのです。通常の商品のみが手に入る現状に対し、この先手に入らなくなるかもしれないものを目にして、それの価値を見誤る、という仕組みです。

「限定品」は、このような人間の特性をうまく利用した戦略なのですね。

「特別価格」という表示につられて買ってしまう

アンカリング効果という心理効果があります。これは、最初(または、同時)に見た情報や値が基準(=アンカー、錨)となり、後で下す判断がそれに大きく影響されるというものです。

買い物の際にこの効果にまどわされているのが、次のような場面です。例えば、ある商品の値札に、「通常価格18,000円のところ、特別価格10,000円」と書いてあったら、なんだかお得のような気がして、買ってしまいたくなりませんか?

本来なら、その商品が本当に必要なものか、といったことや、品質や機能などを見極めて購入を決定するところ、このアンカリング効果のせいで衝動買いをしてしまうことがあるのです。

もしこうした特別価格表示に惑わされそうになった時には、本当に買うべきなものなのかどうか、冷静に考えるようにしましょう。

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クレジットカードでついつい買いすぎてしまう

クレジットカードなら後で払えばいいから……と思って余計なものまでどんどん買ってしまい、毎月の引き落としにビクビクするというような経験をしたことがある人は多いと思います。同じ金額であっても、引き落とし日までその支払いを延期できるとなると不思議と買うのに抵抗がなくなってしまうというのは、「割引率」という概念で説明されます。

例えば、今日1,000円もらうか1,010円もらえるかと問われたら、間違いなくあなたは1,010円をもらうことを選ぶと思います。しかし、「今日1,000円もらうのを我慢したら、1年後に1,010円もらえる」という条件を提示されたら、今日1,000円もらうことを選ぶ人も出てくるのではないでしょうか。このように、時間がたつにつれて、ある物の価値は減少していくのです。1年後の1,010円より今日の1,000円を選ぶという人にとっては、1,010円をその人の割引率で価値を下げていくと1,000円を下回る、というわけですね。

同じ金額でも後払いなら価値が減っているような気がして、ついクレジット払いを選択してしまう。そんな無謀な買い物を防ぐには、長期的なお金の使い方について見通しを持つようにしなくてはなりません。

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いかがでしょうか。「なんでこんな買い物をしてしまったんだろう」の背景には、行動経済学で解明できる不合理な行動が潜んでいます。興味があれば、ぜひともほかの事例を調べてみてください。きっと、より賢い消費者になることができますよ。

参考
橋本之克著(2014),『9割の人間は行動経済学のカモである ―非合理な心をつかみ、合理的に顧客を動かす』,経済界.
友野典男著(2006), 『行動経済学 経済は「感情」で動いている』,光文社.
NAVERまとめ|誰もが持っている危険な傾向、「確証バイアス」とは?
マーケティングWiki ~マーケティング用語集~|アンカリング効果