何かたいせつなことを決めるとき。 とても複雑で、大きな問題にぶち当たったとき。 すぐに誰かに相談して、知恵を出し合おうと考えることもあるはずだ。
ブレーンストーミングや、その他種々のミーティングの技術もたくさん紹介されている。 誰かとともに考えれば、自分ひとりだけでは出てこない様々な発想を得ることができるし、古くから「三人寄れば文殊の知恵」とも言う。
しかし一方で、ひとりじっくり熟考することのメリット、そしてチームで考えることのデメリットも確かにあるのだ。
今回は、自分一人で考える時間を確保することの効果について考えてみたい。
「集団思考」に潜む罠
「集団思考(group think)」という言葉をご存知だろうか。
グループシンクとは1972年に社会心理学者のアーヴィング・ジャニスが提唱した概念であり、「集団で決めた事柄が大きな過ちにつながる」現象を指しています。 グループシンクは学術的用語であり、実は難解な概念です。が、語弊を恐れずに単純化すると、「一人で考えれば当然気づいたことが、集団で考えることによって見落とされる」現象と言っても良いでしょう。 (引用:educate.co.jp|実戦的用語解説)
ジャニスによれば、今まで起きた歴史的な事件の中には「ひとりで考えれば決して陥らなかったであろう決定的誤り」によるものがあるそうだ。
「みんながそう言っているのだから、これ以上良い案はないだろう。」 そう誰もが思ってしまうことで、明らかなミスが見過ごされてしまうというのだ。
一人で考えていれば、どんな時でも不安は残る。 本当にこれでいいのだろうか、自分の思い込みなのでは、他人には受け入れられるだろうか……。 大勢で何かを考えることで、こうした批判的な考えが失われがちになってしまうとのこと。 最終的には誰かの助言を仰ぐとしても、まずは自分一人でじっくり考えてみる。その時間をとることで、思い込みによる間違いを防ぐことができるのだ。
「孤独」は思考を整理する最高の環境だ
3B、という言葉をご存知だろうか。これは画期的なアイデアを思いつきやすい場所としてよくあげられるもので、
BUS:バス=移動中 BATH:風呂やトイレ BED:ベッド
の三つのことを指す。お気づきの通り、どれも一人で過ごすことが多い場所だ。
「一人で何もしていないとき、脳は活発に働いているという脳神経科学の研究データもある」(「こもる力」著:市村よしのり)とのことで、一人でじっくりと考えることで、新たな解決策が見つかることも多いとのこと。
また、一人で考えるというのは、その考えの全責任を自分一人が負うということでもある。誰かに任せることができない分、何度も何度も考え直し、確認しようとする。いい意味でのプレッシャーが生まれ、集中力が高まるのだ。
「おひとりさま会議」の時間を持つ
誰にも相談するな、と言っているのではない。 あらかじめ自分の考えをはっきりさせておき、思い込みがないかどうか十分考え、ひとりで限界まで悩んだ。そう自信をもって言えるのなら、他人の意見を参考にするのも有効だろう。
ただその前の段階で誰かに助けを求めてしまったら、ひとりだからこそ思いついたはずのアイデア、気づいたはずの誤りを見過ごしてしまうことになる。
今、世間では「おひとりさま」が注目を集めている。 会社や学校の人間関係からちょっと離れて、ひとりで気ままに楽しみたい、という人が増えているとのこと。 一人の時間を楽しむための『ソロ活』というサイトもある。
マイクロソフトのビルゲイツ氏は、その多忙な生活の中でも、1年の内1週間は「読書と思考のみに費やす時間」と定め、ひとり熟考を重ねていた。
いつもは仲間と考える、チームがだいすき、そんなあなたも時にはひとりでじっくり考え、自分で自分と会議する「おひとりさま会議」の時間を設けてみてはどうだろうか。
いつもは仲間と一緒に勉強する、というあなたも、ぜひ今日はひとりでカフェに向かい、じっくり考える熟考の満足感を味わってみては?
参考 educate.co.jp|実戦的用語解説 Business Journal「何もしていないときに脳は最大限に活動する!? 成功する人に“一人の時間”が必要な理由」 「こもる力」著:市村よしのり KADOKAWA 2015