本の内容がなかなか理解できない……。
「本を読んでどう考えたか」という、自分の意見やアイデアが膨らまない……。
そんなみなさん。せっかく時間をかけて読んだ本の内容は、しっかりと自分のものにしたいですよね? そこで今回は、「グラフィックレコーディング」を応用した読書後のアウトプット方法をご紹介します。紙とペンだけ用意して、読書効率を思いっきり高めましょう!
グラフィックレコーディングとは?
グラフィックレコーディングとは、対話や議論の内容を整理してグラフィック(絵や図)に落とし込む表現技法です。リアルタイムで対話の内容を記録(レコーディング)していくので、「グラフィックレコーディング」と呼びます。付随して「グラフィックレコード」は紙やホワイトボード上にできあがった記録物のことを、「グラフィックレコーダー」は記録を行なう人のことを、それぞれ指します。
日本におけるグラフィックレコーディングの第一人者、清水淳子氏によると、グラフィックレコーディングには以下のようなメリットがあるそうです。
- 多くの人にひとめで全体像を把握させられる:
テキストによる記録では、読み取ったあとに全体像を頭のなかで構築する必要がある。一方、グラフィックによる記録では、話の流れを1枚の紙に図式化するため、ひとめで多くの人が全体像を把握できる。 - 物事の複雑な関係性を明確化できる:
テキストによる記録では、事実は確実に伝えられるが複雑な関係性を瞬時に伝えることはできない。グラフィックなら、優先順位や循環、上下などを即座にわかりやすく伝えることができる。 - 対話を活性化できる:
グラフィックレコードがあると、議論の参加者は「いま、何を話しているのか」「自分の認識は合っているか」といったことを確認しやすくなる。認識の齟齬が生まれにくくなるので、対話が活発になる。
グラフィックレコーディングは、欧米では1960年代から活用されており、現在でもNASAやGoogleといった世界的な組織で使われています。日本では普及途上の技法ですが、清水氏をはじめとしたグラフィックレコーダーの活躍で、多くの人に知られるようになってきています。
グラフィックレコーディングを読書に活かすメリット
上記のように、本来は対話の場で利用されるグラフィックレコーディングですが、読書に活用するメリットもあります。
『考えを整理する・伝える技術 グラフィックレコード』の著者、渡邉俊博氏によると、1冊の本の内容を1枚の紙でグラフィックレコードにすることで、以下のようなメリットが得られるそう。
- 本の内容や全体像への理解が深まる
- 文章で表現しづらいことも端的にまとめられる
- いつでも本の内容を復習することができる
- 他人に本の内容を伝える資料にもなる
グラフィックレコーディングでは、「問題を整理して見える化する力」と「問題を解決する力」がバランスよく鍛えられるというのが渡邉氏の言。つまり、本の内容を整理するための論理的思考力と、内容をふまえて自分の考えを表現する力の2つが鍛えられるのです。
グラフィックレコーディングで1冊の本の内容をまとめてみた
渡邉氏は、本の内容をグラフィックレコードにする際には、以下の5つのポイントを軸にすることをすすめています。
- 著者:どんな人が書いているのか
- 目的:なんのため(誰のため)に書かれた本なのか
- 構成:どのような内容か
- 所感:評論や感想
- まとめ:読者として受け取ったこと、著者の一番言いたかったこと
これらの点を押さえ、筆者も読書後にグラフィックレコードを作成してみました。読んだ本は『Graphic Recorder 議論を可視化するグラフィックレコーディングの教科書』(清水淳子著)です。
本来のグラフィックレコーディングには、さまざまなフォーマットや図式化のポイントがあります。しかし今回は、情報共有や対話の活性化が目的ではありませんし、何より、筆者自身がグラフィックレコーディング初挑戦であることをふまえて、以下のシンプルな手順で実践してみることにしました。
- 用意したもの:
A4サイズのスケッチブック、ボールペン3色(黒、緑、紫) - 下準備:
本を読みながら上記の5つのポイントに沿い、テキスト形式でノートに簡単なまとめを作成 - 実践:
テキストでまとめた情報をA4用紙1枚分のグラフィックレコードにする
それでは、実際に筆者が作成した記録をご覧ください!
グラフィックレコーディングはたしかにすごかった
読書後のグラフィックレコーディングを実際にやってみて感じた効果や、実践者として提案したいと思った点を報告していきます!
1. 本への理解が格段に深まった!
一番苦労したのが「大事だと思うことを全部まとめるには、とてもスペースが足りない」という点。そこで、本当に書き残すべき内容を熟慮した結果、「この本のどの部分が自分にとって本当に大切か」が的確にわかりました。これは、どんなに紙面が窮屈でも、1章ごとではなく本全体を1枚の紙にまとめることで得られた効果です。
また、グラフィックに落とし込む作業は、簡単なようでいて非常に難しいと感じました。なぜなら、内容への理解が曖昧だとどんなアイコンでどんなグラフィックを書けばいいかがイメージできないからです。
「読んでわかった気になっていたところを、いざグラフィックにしようとするとうまくいかない→じつはあまり深く理解できていないことが判明→そこで、該当箇所を読み返す」という作業により、本の内容をよりじっくりと理解することができました。
2. 最高にわかりやすい “読書記録” がつくれた!
今回作成したものは、あくまでも「自分用の記録」でした。しかし「人に共有する」という、グラフィックレコードの本来の役割を意識して書いたところ、「あとになって見直したときに、瞬時に内容が思い出せる」という効果がありました。また、本をもう一度読むときにも、どの箇所を読み直せばいいのかをすぐに把握できました。
つまり、自分にとって最高にわかりやすい読書記録をつくれたということ。ですので、グラフィックレコード本来の「人に見せる」という意識は、できるだけ忘れないようにしたほうがよさそうです。初めて実践したので時間はかかりましたが、慣れてくればスピードは上がりそうですし、もともと絵心のある人には特に最適な読書記録法だと思います。
3. 本の内容についての意見やアイデアが湧いてきた!
グラフィックレコードを作成しながら本の内容を復習すると、新しい意見やアイデアが浮かんでくるという効果もありました。
筆者がこれまで行なってきた読書記録では、本の内容を理解し直すことや思い出すことに力を割いていました。しかし、グラフィックを作成しながらだと、自然と自分の意見やアイデアの創造に注力することができたのです。これはおそらく、本への理解を深めようとする能動的な姿勢のおかげなのではないかと思いました。
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今回の方法はあくまで、グラフィックレコーディングの考えを読書に応用したもので、対話の場で使われる本来のグラフィックレコーディングとは別ものです。一方で、読書もまた、書いた人との対話。誰かの言葉をまとめることで、自分もなにか言いたくなる、著者の考えに積極的に参加してみたくなる、という読書との最高の相性も発見できました。ぜひ役立てみてください!
(参考)
清水淳子(2017),『Graphic Recorder ―議論を可視化するグラフィックレコーディングの教科書』, ビー・エヌ・エヌ新社.
渡邉俊博(2019),『考えを整理する・伝える技術 グラフィックレコード』, フォレスト出版.
東洋経済オンライン|話がまとまる「会議で絵を描く」グラレコの凄み
【ライタープロフィール】
月島修平
大学では芸術分野での表現研究を専攻。演劇・映画・身体表現関連の読書経験が豊富。幅広い分野における数多くのリサーチ・執筆実績をもち、なかでも勉強・仕事に役立つノート術や、紙1枚を利用した記録術、アイデア発想法などを自ら実践して報告する記事を得意としている。