「うつ伏せで勉強」をやめるべき3つの理由

うつ伏せでの勉強1

勉強や読書のとき、床やベッドにうつ伏せになっている方は要注意。うつ伏せ状態は、目や身体への負担が大きいばかりでなく、集中力や学習効率を悪化させる恐れがあります。やはり、背筋を伸ばして椅子に座る姿勢が一番なのです。

今回は、「うつ伏せ勉強法」のリスクや、勉強中の正しい姿勢のポイントをご紹介しましょう。みなさんも、勉強中にうつ伏せになっていないか、自分の姿勢を確認してみてください。

うつ伏せで勉強するデメリット

うつ伏せで勉強するデメリットとしては、以下の3つが挙げられます。

脳の働きが低下する

1つめのリスクは、脳の働きが低下することです。寝転がって勉強すると、気分までダラけてしまいがちですが、それには脳科学的な根拠があります。

脳科学者・篠原菊紀氏によると、脳の覚醒度合いは「抗重力筋」という筋肉に左右されるそう。抗重力筋とは、重力にあらがって身体を起立させる筋肉のこと。背筋をピンと伸ばした「いい姿勢」だと、抗重力筋がよく働き、興奮物質・ノルアドレナリンが分泌されて脳の情報処理能力や記憶力が高まるのです。

しかし、猫背や机に突っ伏した状態、うつ伏せや仰向けで寝転んだ状態では、抗重力筋が働かないため、脳がぼんやりしてしまう恐れがあります。

身体を痛めやすい

うつ伏せで勉強するリスクの2つめは、身体に不自然な負荷がかかり、身体のあちこちを痛めやすいこと。整形外科医の中村格子氏によると、うつ伏せの姿勢では首が無理な角度になりやすいだけでなく、身体を支える腕や肩への負担も大きくなるのだとか。

肩や首の凝りに悩んでいる方は、うつ伏せで勉強や読書をする習慣を見直してみてはいかがでしょうか。

目が疲れる

中村氏は、寝転がった姿勢でスマートフォンを操作すると、目への負担が大きくなるとも言います。寝転んだ状態だと、目と物の距離が近づくため、目が疲れやすくなるのです。これは、スマートフォンの操作に限らず、勉強にも当てはまることでしょう。

どうしてもうつ伏せで勉強したいときは、クッションなどに胸を乗せてなるべく身体を起こし、対象との距離を20~30cm以上保つようにしてください。

うつ伏せでの勉強2

うつ伏せをやめ、正しい姿勢で勉強しよう

勉強時は、うつ伏せではなく、きちんと背筋を伸ばして机に向かうのが合理的。先述のとおり、正しい姿勢だと抗重力筋が働いて脳が活性化するとともに、肩や首への負担が小さくなるからです。

それに、姿勢は呼吸にも影響しています。呼吸器科医の奥仲哲弥氏によると、背筋を伸ばした姿勢に比べ、猫背では呼吸能力が20%も低下してしまうそう。酸欠状態になって脳が働かなくなるほか、肩こりや不眠、自律神経の乱れなどにもつながるかもしれません。

◆正しい姿勢で勉強するメリット

  • 抗重力筋が働き、脳が活性化する
  • 肩や首、目への負担が小さくなる
  • 呼吸が深くなり、酸素を多く取り込める

では、勉強中はどのような姿勢で座るのが理想的なのでしょうか? 日本姿勢教育協会理事の碓田拓磨氏によると、「背筋を伸ばす」ことより「お尻を引く」ことを意識して姿勢を正すといいそう。

お尻を、椅子の最も深いところまでグイッと引き、そのまま身体を起こします。すると骨盤が垂直に立ち、骨盤につながる背骨が理想的なS字カーブを描くため、体重をしっかり支えられて疲れにくくなるとのことです。

◆骨盤を立てて座る手順

  1. 少し前かがみで椅子に座る
  2. 椅子の最も深いところまでお尻をグイッと引く
  3. そのまま身体を起こし、背筋を伸ばす。垂直に立った骨盤の上に、上半身を乗せるイメージ

上記の方法であれば、さほど苦もなく正しい姿勢を維持できるはず。うつ伏せや猫背と比べてずっと勉強がはかどりますから、ぜひ試してみてください。

うつ伏せでの勉強3

就寝直前の「うつ伏せ勉強」は効果的

うつ伏せで勉強するデメリットを解説しましたが、じつは例外があります。就寝直前、ベッドで勉強する場合です。

記憶には、すぐ忘れてしまう「近時記憶」と、長期的に保存される「遠隔記憶」があります。近時記憶は、新しい記憶を一時的にストックする場所。近時記憶から遠隔記憶に移された記憶だけが、長期的に定着します。新しいことを学んでもすぐ忘れるのは、遠隔記憶に移行する前の段階で、多くの近時記憶が消えてしまうからです。

勉強法に詳しい医師・吉田たかよし氏によると、「近時記憶→遠隔記憶」のプロセスは、主に睡眠中に行なわれるそう。そのため、睡眠の直前に情報をインプットすれば、近時記憶が新鮮なまま眠りに入るため、遠隔記憶として定着しやすくなります。就寝直前に「暗記もの」などの勉強をするのは、非常に効果的なのです。

就寝前の「うつ伏せ勉強」を行なうには、「就寝前に覚えること」のメモを事前につくっておくといいでしょう。新しく覚えたいことでも、その日勉強した内容の復習でもOKです。メモにまとめればベッドに持ち込みやすいですし、勉強することが絞られるので、限られた時間を有効に使えます。

大事なのは、インプットしたらすぐ眠ること。歯を磨いたりスマートフォンをいじったりなど、余計な行動を挟むのはNGです。せっかくインプットした近時記憶がどんどん消えていってしまいますよ。寝る支度はベッドに入る前に終え、勉強が終わったらすぐに就寝しましょう。

◆就寝前の「うつ伏せ勉強」のポイント

  • あらかじめ「就寝前に覚えること」のリストをつくる
  • 寝支度を整えてからベッドに入る
  • 覚えることリストをインプットし、終わったらすぐに寝る

就寝直前の「うつ伏せ勉強」はとても効果が高いですから、うつ伏せのリスクに気をつけつつ、ぜひ活用してみてください。

***
例外はあるものの、勉強時にはうつ伏せを避け、骨盤を立てた正しい姿勢で机に向かいましょう。いい姿勢を心がければ、自然と心身のコンディションが整い、高い集中力を発揮できるはずです。

(参考)
NIKKEI STYLE|「脳」の処理能力 上げるなら「背筋」を伸ばす!
BIC SIM|スマホを見るベストな姿勢って? スポーツ医監修「スマホしぐさ」研究
日本テレビ|あなたもそうかも?ストレートネックに要注意!呼吸器外科医が教える正しい呼吸法
プレジデントオンライン|正しい座り方は、「背筋ピン」ではなく「お尻をグイッ」
吉田たかよし(2003),『最強の勉強法―究極の鉄則編』, PHP研究所.

【ライタープロフィール】
佐藤舜
大学で哲学を専攻し、人文科学系の読書経験が豊富。特に心理学や脳科学分野での執筆を得意としており、200本以上の執筆実績をもつ。幅広いリサーチ経験から記憶術・文章術のノウハウを獲得。「読者の知的好奇心を刺激できるライター」をモットーに、教養を広げるよう努めている。

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