仕事でミスが多いのはなぜ? 脳科学的な4つの対策

仕事でミスが多いときの対策1

「ケアレスミスが多く、上司や取引先からの信頼を損ないそうだ」
「失敗続きで、職場での居心地が悪い」

このように、仕事の失敗・ミスが原因で落ち込んだ経験はありませんか? なかには「もう会社に行きたくない」「いまの仕事を辞めたい」と思いつめるほど、悩んでいる人もいるかもしれませんね。

でも、そんなに悲観的になる必要はありませんよ。精神科医の樺沢紫苑氏いわくミスはあなたではなく脳のせいとのこと。脳のタイプに合った対処をすれば、ミスを減らすことは可能なのです。ではどうすればいいのか、具体的に説明しましょう。

仕事でミスが多い人の脳タイプ

樺沢氏は、仕事で失敗が多い人の脳には4つの特徴があると言います。日頃のミスの原因によって、脳は次の4タイプに分けられるのです。

仕事でミスが多いときの対策2

これらは個別の問題ではなく、互いに関係しています。たとえば、「脳の疲労」によって「集中力の低下」が起こることもありますし、「集中力の低下」は「脳の老化」のサインにもなりえます。どのタイプが顕著に現れるかは、人それぞれです。

上の図を参考に、自分の脳のタイプを見極めてみてください。あなたにはどの傾向が強く見られますか?

ここからは、脳のタイプ別に「ミスを減らすための方法」を具体的に解説します。

仕事のミスを減らす脳科学的対策

1. ケアレスミスが多い「集中力低下タイプ」の場合

「データの入力ミスですべて書き直しになった」「印刷する資料を間違えた」……などのケアレスミスが多い人は、集中力低下タイプかもしれません。

集中力には、朝が最も高く、午後~夜へと時間が経つにつれて低下する傾向があります。このタイプの人はそんな集中力のリズムに逆らった脳の使い方をしている可能性がある、と樺沢氏。特に、徹夜や夜更かしで仕事をすることが多い人は要注意です。

仕事でミスが多いときの対策3

「集中力低下タイプ」の人が失敗を減らす方法を、樺沢氏は3つ挙げています。

  1. 朝~午前中のうちに複雑な作業を済ませる
  2. 朝~午前中には、余計な情報を脳に入れない
  3. 作業場からすぐ見えるところにToDoリストを置く

朝~午前中は集中力が高い時間帯。ネットサーフィンなどはせず、作業に集中しましょう。樺沢氏は、起床後シャワーを浴びたら、ネットやメールを見ることなく、すぐ執筆に取りかかるそうですよ。

また、ToDoリストを書いておくと、作業が終わるたびに「次は何をしよう」と考える必要がなく、集中力をリセットさせずに次の作業に取りかかることができます。樺沢氏によれば、リストに書くタスクは分解するとよいのだそう。たとえば「A社の案件」ではタスクが大きすぎるので、「資料取り寄せ」「見積書作成」などと細かく書きましょう。

さらに、集中力が低下している人には慢性的な疲労を抱えている傾向もあるので、後述する「脳疲労タイプ」の対処法もあわせて取り入れるとよいでしょう。

2. テンパるとミスが増える「ワーキングメモリ低下タイプ」の場合

「締め切り直前になるとミスが増える」「一気に仕事を頼まれると失敗してしまう」……こういった “テンパる” 状態でミスしやすい人や、そもそも子どもの頃からおっちょこちょいミスが多かった人は、脳のワーキングメモリが低下しているタイプの可能性があります。

ワーキングメモリは脳の作業領域とも言われ、どれだけの仕事を抱えられるかというキャパシティの大きさにつながります。樺沢氏が言うには、「生まれつきキャパシティがそれほど大きくない(=ワーキングメモリの容量が小さい)場合、少ない仕事量でもワーキングメモリ低下によるミスを起こしやすい」のだそう。

仕事でミスが多いときの対策4

そんな「ワーキングメモリ低下タイプ」向けに樺沢氏が挙げるのは、次のふたつの方法です。

  1. マルチタスクを避ける
  2. 話を聞いたら、すぐにメモする

「人間の脳はマルチタスクができない」と、樺沢氏は言います。一度に複数のことを処理しようとすると、脳の処理速度が落ち、余計に作業時間がかかるだけでなく、脳の許容度を超えた瞬間にミスが発生するためです。先述のToDoリストを書き、ひとつずつタスクをこなしましょう。タスクをリストに書くと、脳で記憶しておく必要がなくなるので、ワーキングメモリの容量を増やすこともできます。

上司や取引先に言われたことを忘れてしまったり、誤って記憶してしまったりすることがある場合は、話を聞いた瞬間……それも3秒以内に正しくメモする習慣をつけましょう。メモを書くと集中力が高まるので、聞き間違える可能性が減ります。また、書くことによって「注意の司令塔」である脳幹の網様体賦活系を刺激できるとのこと。重要なポイントを見極めて書き留めることを意識すると、より効果的だそうですよ。

3. 最近ミスを連発するようになった「脳疲労タイプ」の場合

「短期間にミスを連発している」「以前はこんな失敗しなかったのに、最近は失敗続きだ」……という人は、脳疲労タイプの可能性があります。樺沢氏によると、このタイプの脳では、ノルアドレナリンとセロトニンというふたつの脳内物質の分泌低下が起こっているそうです。

ノルアドレナリンは外的ストレスへの防御反応として分泌され、集中力や注意力と深く関わります。危機感を覚えると分泌されて脳を活性化させますが、その状態は長く続きません。セロトニンは心身の安定に関与します。不足すると精神的に不安定になり、集中力や注意力の低下につながる可能性があると考えられています。

脳疲労は、睡眠不足、慢性的なストレス、過度な仕事量、運動不足などが原因で起こりやすいとのこと。あなたには、思い当たる点はありませんか?

仕事でミスが多いときの対策5

脳疲労の原因からもわかるとおり、「脳疲労タイプ」の人は生活習慣の見直しが必要。下記の3点に気をつけましょう。

  1. スマートフォンを使いすぎない
  2. ストレスを解消する
  3. 軽い運動をする

樺沢氏いわく、「スマートフォンは脳に膨大な情報を送るため、脳疲労を起こす原因になる」とのこと。1日1時間以下を目安に、使う時間を決めるのがよいそうです。加えて、大阪市立大学大学院疲労医学講座特任教授・梶本修身氏は、「スマートフォンの使いすぎは脳の覚醒・興奮状態が長時間続く要因となり、睡眠に悪影響を及ぼす」と言います。特に、寝る前のスマートフォンは厳禁です。

また、慢性的なストレスや過度な仕事量に悩まされているなら、ストレス解消が先決。梶本氏によれば、外でランチを食べ、風や木漏れ日を感じるだけでも、脳をリラックスさせることができるそうですよ。運動不足が気になる場合は、ヨガやストレッチといった、汗をかかない程度の軽めの運動で血流を高めるのが効果的です。

4. 度忘れが多い「脳の老化タイプ」の場合

「頼まれていた仕事をすっかり忘れていた」「オフィスに戻ったら顧客へ連絡する予定だったのに、忘れてしまった」……こうした度忘れによるミスが目立つ場合は、脳の老化タイプかもしれません。じつは脳の老化は、若い人にとっても身近な問題。スマートフォンで手軽に情報収集できるようになったことで、思考や記憶など自分の脳を使う機会が奪われている、と樺沢氏は述べます。

また、福岡国際医療福祉大学教授・飛松省三氏が言うには、ホワイトボードに書かれたものをメモせずに写真で記録する人や、話を聞くときに録音に頼る人は要注意。なんでも “スマートフォン頼み” はよくないのですね。

仕事でミスが多いときの対策6

「脳の老化」タイプの人には、次のふたつの方法がおすすめです。

  1. 資格勉強や外国語の習得で脳を使う
  2. スマートフォンを非利き手で使う

スマートフォンに頼りすぎているせいで脳を使わなくなっているなら、別のことで意識的に脳を使いましょう。樺沢氏いわく、たとえば、制限時間がある「資格取得のための勉強」や、新しい単語を覚えなければいけない「外国語の習得」がおすすめ。特に外国語の習得は、意識的に記憶力を働かせることになるので、ワーキングメモリを増やすのにも効果的とのこと。資格勉強は、趣味で興味がある分野でよいそうです。

一方、スマートフォンの使い方としては、先述の「長時間使わない」に加えて、「非利き手で使う」ことも取り入れてみましょう。飛松氏によれば、普段あまり使わない手を動かすと脳の活性化を促すことができるそうですよ。

***
脳機能を整えると、これまで以上に作業がはかどり、仕事での失敗が減る可能性があります。さっそく、ミスを減らす対処法を実践してみましょう。

(参考)
樺沢紫苑(2017),『絶対にミスをしない人の脳の習慣』, SBクリエイティブ.
Precious.jp|すべての疲労は脳が原因!?スマホの見過ぎによる「脳疲労」とは?
NIKKEI STYLE|すべての疲れは「脳の疲れ」 脳疲労をためない新習慣
東洋経済オンライン|医者も実践「どんどん進む脳の老化」を防ぐ習慣
飛松省三(2019),『脳が若返る15の習慣』, フォレスト出版.

【ライタープロフィール】
かのえ かな
大学では西洋史を専攻。社会人の資格勉強に関心があり、自身も一般用医薬品に関わる登録販売者試験に合格した。教養を高めるための学び直しにも意欲があり、ビジネス書、歴史書など毎月20冊以上読む。豊富な執筆経験を通じて得た読書法の知識を原動力に、多読習慣を続けている。

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