脳を休めるには “ほんの数秒” あればいい。瞬間的「脳の休憩法」5選

仕事の合間にカラダを伸ばして、つかの間の休憩をするビジネスパーソン

『種の起源』を書いたチャールズ・ダーウィン氏も、フランスの天才数学者アンリ・ポアンカレ氏も、イギリスの大文豪チャールズ・ディケンズ氏も、シリコンバレーの経営者や創業者たちも、成功したいからこそ労働時間を制限し、休息を大事にしていた(いる)そうです。

そうはいっても多忙な時期は、なかなか理想どおりにはならないもの。そこで今回は、どんなに忙しくても仕事の合間にすぐできる、瞬間的な脳の休憩に着目しました。数秒から数分間のあいだ、脳を休めたり、リフレッシュしたり、リラックスしたりする方法です。選りすぐりの5つを紹介しましょう。

1.【鼻から息を吸い込む】:脳を休息モードに

企業向けメンタルヘルスサービスの「株式会社セーフティネット」サイト内のコラムによると、脳は暑さにとても弱い部位なので、熱から保護するシステム(選択的脳冷却機構という)が備わっているそうです。具体的には、鼻腔の奥に脳とつながる毛細血管がたくさん通っているため、鼻呼吸で冷たい空気を通過させることにより、脳を冷やせるのだとか。鼻は「脳の冷却装置」だといいます。

また、東京疲労・睡眠クリニック院長の梶本修身氏は “よい睡眠” について語る際、「脳を冷却して休息モードにしてから眠ることが大事」だと述べ、鼻呼吸をすすめています。つまり、鼻呼吸によって脳が冷えるという事実に加え、脳が冷えると休息モードになるという側面もあるわけです。

梶本氏によれば、あらゆるストレスが増すと自律神経中枢の負荷が大きくなり、脳が発熱しやすくなるとのこと。そうして脳がオーバーヒートして働きが鈍くなると、体内のコントロールも乱れるのだとか。仕事が忙しいときほど、深い鼻呼吸を意識的に行なうべきかもしれません。

試しに、パソコン仕事の途中で鼻から深く息を吸い込み、ゆっくりと吐き出してみたら、息を吸い込む瞬間にキーボードを叩く手や、マウスを動かす手が自然と止まり、息を吐き出したあとは、頭と気分が少しスッキリしました。

兵庫医科大学の中村望助教らが25名の男女を対象に行なった研究では、息を吸い込むとき集中力や注意力をつかさどる脳部位(右側頭頭頂接合部、右中前頭回、背内側前頭前皮質)の活動が低下し、集中力が散漫になることがわかったとのこと(兵庫医科大学2022年9月21日のニュースリリースより)。

脳の冷却とはまた違う観点ですが、「鼻呼吸で瞬間的に脳を休ませる」というテーマにおいては、覚醒や注意に関わる脳部位の活動低下は、ひとつの要因とも言えるのではないでしょうか。

仕事の合間に瞬間的に脳を休ませるため、深く息を吸い込んだビジネスパーソン

2.【筋肉からのアプローチ】:緊張をほぐす

『精神科医が教える 後悔しない怒り方』(ダイヤモンド社)の著者で精神科医の伊藤拓氏によると、筋肉の緊張を一気にゆるめ(脱力させ)、心身をリラックスさせる方法を筋弛緩法と呼ぶそうです。やり方は次のとおり。

  1. 力を込めて両肩をギューッと上げる
  2. そのまま15秒キープ
  3. 一気に力を抜いて両肩をおろす
    (※すべて腕は下げたまま)

こうすることにより、「筋肉」と「心の緊張」を同時にほぐせるのだとか。

たとえばパソコン作業を何時間も続けていて、腕、肩、首などが凝り固まり、気分がモヤモヤし始めたときに試すとわかりますが、本当に肩の筋肉の緊張がとれると同時に、心の緊張もストーンとほぐれた気分になります。頭もスキッとするので、瞬間的な脳の休憩として活用できるのは間違いありません。

心の緊張がほぐれて気分がよさそうなビジネスパーソン

3.【冷たい刺激】:リフレッシュ

また、前出の伊藤氏によると、脳は皮膚から冷たい刺激が入ることにより、スイッチが切り替わったように覚醒するそうです。

たとえば、冷たい水で顔を洗ったり、冷えた缶入りの飲み物を額に当てたりといったことです。重い気分やイライラ気分をリフレッシュするのに有効なのだとか。冷たい水を飲むのもいいそうです。

特に冷えた飲み物の容器を額に当てる、冷たい水を飲むといったことは、瞬間的な脳の休憩として、仕事の合間に気軽に取り入れられそうですね。

冷たい水を飲んでリフレッシュしているビジネスパーソン

4.【花の画像を見る】:ストレス緩和と休息

農業や食品産業の研究開発を行なう「農研機構」は、筑波大学などとの共同研究により、"花の癒し効果" を科学的に実証したそうです(2020年7月1日のプレスリリースより)。

この研究では、ストレスを与えた実験参加者に(パソコンの画面に映し出された)花の画像を見せたところ、恐怖や嫌悪感などが減少してポジティブに転じ、上昇していた血圧も3.4%低下、ストレスによって上昇するホルモン(コルチゾール)の値も21%低下したのだとか。

具体的には、20代の実験参加者35名を対象に不快な画像(事故現場やヘビ、虫など)を6秒間提示したあと、「花」「青空」「椅子」の画像をそれぞれ “6秒間提示⇒26秒間安静“ を各10回ずつ繰り返して血圧の変化を記録。合間に気分の報告も求めたそうです。

その結果、不快な画像でネガティブな感情が起こりましたが、「椅子」以外の「花」と「青空」の画像でネガティブ感情が改善したそう。そして、血圧がより低下(最大3.4%低下)したのは花の画像だったそうです。つまり、心地よい青空の画像は心理的な改善効果はあるものの、カラダに生じた生理的ストレス反応をより効率的に低減させるのは花だと示されたわけです。

また、20代の実験参加者32名に対して不快画像を4分間提示したあと、「花の画像」と「花のモザイク画像」を8分間提示し、コルチゾール値を比較したところ、「花のモザイク画像」では減少しませんでしたが、「花の画像」ではコルチゾールの値が約21%減少したそうです。

ちなみに花の画像は、先に大学生を対象に花のイメージを調査し、その結果をもとに典型的な花のかたちを決定し、写真を選定したとのことです。

甲南大学 知能情報学部 准教授の前田多章氏によると、コルチゾールは血糖値維持などの作用もあるので、朝の起床前後には分泌が最大になり、睡眠初期では分泌が抑制されるとのこと。つまり、日中活発に過ごすときは増え、夜の休息時は減少するわけです。

この事実は、どんなに仕事が忙しくても、好きな花の画像をパソコン画面などに映し出し、可能なら数分間、無理なら数秒間でも眺める行為を仕事の合間に挟み込むことにより、ストレスが緩和され、そのあいだは脳が休息モード寄りになると期待できるのではないでしょうか。

実際にやってみたところ、とても心地よく、時にはずっと眺めていたい気分になったので、効果を確認できたと感じています。

癒やし効果を求めて。蓮の花の画像

5.【目を閉じる】:瞬間睡眠

精神科医の岡田尊司氏によると、横になるだけで肝臓や腎臓への血流が数十パーセント増えて、代謝や老廃物の排出が進むそうです。また、目を閉じることで、脳からα波が出て休息状態になるとのこと(2011年発売の岡田氏著書『人はなぜ眠れないのか』より)。

また、脳科学者で精神科医の久賀谷亮氏いわく、脳は目に入ってくる情報をいくつもの段階を経て処理しなければならないので、目を閉じ視覚の情報を断つことは、「脳を休める手っ取り早い方法」とのこと。

もちろん仕事中に横になるのは難しいですが、ちょっと目を閉じることならできるはず。仕事中に疲れを感じたら、ほんのわずかな時間だけでも目を閉じて、瞬間睡眠を取り入れてみてはいかがでしょう。

実際に、目と脳が疲れすぎると頭が回らなくなる筆者も、しばしば数秒単位で取り入れていますが(ただ目を閉じるだけ)、ものすごく効果を感じています。

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仕事の合間にすぐできる「瞬間的 “脳” 休憩」を5つ紹介しました。よろしければお試しくださいね。

(参考)
ダイヤモンド・オンライン|【精神科医が教える】心を今すぐ落ち着かせたい時に使える、驚くほどすぐに効くリラックス法
甲南大学|第3回 夜の過ごし方を変えて,良質の睡眠を手に入れる! /「勉強に効果てきめんな睡眠」の手に入れ方
サワイ健康推進課|暑さ、ストレス、働きすぎ……自律神経の酷使による「脳のオーバーヒート」にご用心!
クロワッサン オンライン|身も心も軽やかに。専門医に聞く、脳を休める暮らしの小さな9つのルール。
ananニュース – マガジンハウス|快眠のカギは脳の冷却にアリ!? 寝る前に行いたい“脳の冷活”新習慣
Fujisan.co.jp|労働より休息を!世界の天才は「最高の休息法」を実践していた
兵庫医科大学|集中力低下は「息を吸う瞬間」と関係していることが明らかに
幻冬舎plus|眠れないときは眠らなくてOK!目を閉じるだけで脳は休息状態に
セーフティネット|脳のストレスを予防する ~脳冷却と水分補給に気を付ける~
農研機構|(研究成果) 花の観賞は心身のストレスを緩和する

【ライタープロフィール】
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