昨年は、あなたにとってどんな一年でしたか? 勉強や仕事で成果が得られた人もいれば、納得できない結果ではがゆい思いをした人もいるかもしれませんね。
「2023年を最高の年にしたい!」と願うビジネスパーソンのみなさんが、新たな気持ちで一年をスタートできるよう、「勉強」「仕事」に関する一流の知識人・成功者の名言を5つお届けします。
- 1. 齋藤孝氏「学んだら実践してください」
- 2. 中野信子氏「喜びとしての学び」
- 3. イチロー氏「体調管理できなければ、集中力は生まれない」
- 4. サンダー・ピチャイ氏「失敗は名誉の証」
- 5. アンジェラ・ダックワース氏「才能よりも大切なのは『やり抜く力』」
1. 齋藤孝氏「学んだら実践してください」
学んだら実践してください。多くの人は、情報をインプットしながら、ほとんどアウトプットをしない「インプット過多」に陥っています。すぐにアウトプットすることが自分を変えていくことになります。インプットした情報をアレンジして、独自の表現でアウトプットすることを心がけてください。
(引用元:NHK|齋藤孝さん/楽しい学び)
教育学者・明治大学文学部教授の齋藤孝氏がこう述べるように、学びで自分を成長させていくためには、書いたり話したりといったアウトプットが欠かせません。なぜなら、アウトプットを通じて、学んだ知識を “自分のもの” にすることができるから。その理由は、「記憶定着の深さ」にあります。
精神科医・樺沢紫苑氏によれば、「『書く』『話す』といった運動神経を使った記憶は(中略)一度覚えるとその後はほとんど忘れることはない」そう(引用元:樺沢紫苑公式ブログ|なぜアウトプットは、記憶に残るのか?)。そのため、アウトプットすることによってに記憶に残りやすくなるのです。
独立研究者・山口周氏も「学んだ武器は使ってこそ価値があるもの」と述べています。(引用元:ダイヤモンド・オンライン|【山口周×『独学大全』】残念な「勉強法ホッパー」と「独学を武器にできる人」の決定的な差)
今年はぜひ、学んだあとは「家族・友人に教える」「ノートにまとめる」などして、実際に知識を使ってみてください。きっと、学びがあなたを変えてくれるはずですよ。
2. 中野信子氏「喜びとしての学び」
大切なのは「喜びとしての学び」であり、そこにこそ学びの本質があるのです。
(引用元:STUDY HACKER|勉強能力を最短距離で上げる方法。「努力そのもの」を楽しむと、成績は落ちていく 以下中野氏の言葉は同資料より)
こう述べているのは、脳科学者の中野信子氏。「自分がつまらないと思うようなことを覚えても(中略)たいした意味をもちません」と言いきります。つまり「興味がないことは覚えられない」のです。
では、どうすれば「喜びとしての学び」に近づけるのでしょうか? 中野氏のアドバイスは「自分事化」することです。
たとえば、学生時代に「つまらない」と思いながら無理やり暗記した日本史の内容はほとんど覚えていないのに、歴史を扱ったドラマを「おもしろい」と感じてのめり込んだら、史実上の人物や出来事がどんどん頭に入った——このような経験はありませんか?
世界記憶力グランドマスターの称号をもつ池田義博氏は、「感情が伴った記憶は長く頭の中に残ります」と述べています。池田氏によれば、記憶をつかさどる「海馬のすぐ隣には『扁桃体』という場所があり、喜怒哀楽といった感情に反応」するそう。(引用元:東洋経済オンライン|年を取っても記憶力がいい人と低下する人の差)
つまり、「おもしろい」「深い!」などと自分自身が感情をもちながら勉強すれば、より覚えやすくなるのです。
「この現象はあのときの経験と同じだ」「もし、私がこの史実上の人物だったらこう感じるな……」など、勉強内容を自分や身のまわりのことに引きつけるクセをつけてみてください。自分だけのストーリーを組み立て、感情を動かすことで「喜びとしての学び」に近づけるはずです。
3. イチロー氏「体調管理できなければ、集中力は生まれない」
問 集中力を高める何か特別な方法はあるのですか。
答 それは自分の体調をしっかり整えることです。体調を管理できないと、集中力は生まれません。
(引用元:日経ビジネス電子版|22歳イチロー語った「僕は天才じゃなく運が良かった」)
このインタビューの言葉通り、元メジャーリーガーのイチロー氏が徹底的な自己管理に努めていたのは有名な話。ビジネスパーソンも同様に、仕事で集中力を発揮するためには、体調管理が基本です。
前出の樺沢紫苑氏は、仕事で「最大のパフォーマンスを引き出す」には「脳を最適化」することが必要と説きます。(NewsPicks|【樺沢紫苑】集中力が続かない原因はマルチタスクの“脳疲れ” 以下樺沢氏の言葉は同資料より)
脳の最適化するためのポイントとして樺沢氏が挙げるのは、「脳内物質『セロトニン』『オキシトシン』『ドーパミン』のバランスをとること」。それには「運動、睡眠、散歩」の3つの習慣が重要なのだそう。
朝は日光を浴びながら、歩いて通勤してみる。夜はできるだけ早く眠り、充分な睡眠時間を確保する……。基本的な生活を整えることが、脳を整えることにもなり、それが集中力アップ・パフォーマンス向上の近道となります。ぜひ、意識してみてください。
4. サンダー・ピチャイ氏「失敗は名誉の証」
Wear your failure as a badge of honour and start again.
(失敗は名誉の証として身につけて、もう一度やり直してください)
(引用元:Business Insider India|#AskSundar: 5 valuable lessons from Google CEO Sundar Pichai ※カッコ内の和訳は筆者による)
この言葉は、Google入社後たった11年でCEOに就任したサンダー・ピチャイ氏のもの。母校・インド工科大学でピチャイ氏の指導教官だったインドラニル・マンナ氏は、ピチャイ氏について「リスクを恐れない姿勢があった」と述べます。(朝日新聞GLOBE+|グーグル率いる「スーパーインド人」ピチャイ氏はどんな人? 周囲が語るその素顔 より)
経営学者の楠木建氏も、失敗を恐れないようすすめるひとり。「『何事においても、自分の思い通りになることなんて一つもない』を前提として仕事に臨む」ことを推奨しています。それによって、「成果への期待から生じる不安やストレスを解消」できるのだとか。(引用元:ダイヤモンド・オンライン|経営学者・楠木建氏が「どうせ失敗する」と思って仕事に臨めと語る理由)
「失敗してはいけない」「失敗は怖い」と思って仕事をしているうちは、たとえば社内で新プロジェクトのメンバー募集があっても飛び込めず、ただ定型業務をこなすだけの日々となるでしょう。そうなれば、新しいスキルを得ることはできず、成長や成功も見込めませんよね。
しかし、「失敗はつきもの」「成功しなくても当たり前だ」という姿勢でいれば、余計な緊張を捨て、チャレンジングな内容の仕事にも取り組めるようになり、成長のチャンスを得られるでしょう。
ピチャイ氏のように、成長が速い人ほど「失敗」を肯定的にとらえるもの。新しい仕事に挑戦するとき、ピチャイ氏の「失敗は名誉の証」という言葉を思い出してくださいね。
5. アンジェラ・ダックワース氏「才能よりも大切なのは『やり抜く力』」
「――長い目で見れば、才能よりも大切なのは「グリット(やり抜く力)」なのよ」
「肝心なときにどれだけがんばれるかは、もちろん重要なことだが、進歩の妨げとなるのは途中でやめてしまうことだ」
(引用元:アンジェラ・ダックワース著, 神崎朗子訳(2016),『やり抜く力 GRIT(グリット)――人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につける』, ダイヤモンド社.)
最後に「GRIT」理論を提唱した、アンジェラ・ダックワース氏の言葉を紹介しましょう。
GRIT理論とは、脳科学者・茂木健一郎氏の説明によると、「IQの高さよりも、『やり抜く力』の方が成功と相関が高」く、「ゴールに向かってやり抜く力」が重要だという理論のこと。(引用元:ONE CAREER|【密着取材】茂木健一郎、天才の鍵は、グリット(Grit)にあるーコモディティ化する偏差値 )
やり抜くといっても、なんでも必死に頑張るのではありません。ダックワース氏は著書『やり抜く力 GRIT』のなかで、「重要性の低い目標にまでしがみついて、どれもこれも必死に追い続けることではない」と述べています。目標のなかには、途中でやめてもいいものもあるかもしれません。しかし、本当に達成したい目標に対しては「やり抜く力」を発揮すべきなのです。
このGRITに関連して、茂木氏は「Desirable difficulty(望ましい困難)」が必要と説明します。「望ましい困難」とは、「困難があったほうがそれを乗り越えようとしてオリジナルな能力が発達するという考え方」のこと(引用元:同上)。「恵まれない環境」にあることは必ずしも悪いものではないのだそう。
たとえば、「仕事が忙しく勉強する時間がない」という状況を悲観したらそこで終わりですが、「限られたスキマ時間を利用して勉強するぞ」と思えれば、「望ましい困難」に変えられるのではないでしょうか。
大切なのは「やり抜く力」。「自分には能力がないから」「時間がないから」と諦めたくなったときには、困難こそが成功のカギとなることを信じて、ぜひ最後までやり抜いてみませんか?
***
立ち止まることがあったときは、成功者の言葉を思い出してみてください。2023年があなたにとって大きな成長の年になりますように……!
(参考)
NHK|齋藤孝さん/楽しい学び
樺沢紫苑公式ブログ|なぜアウトプットは、記憶に残るのか?
樺沢紫苑(2018),『学びを結果に変えるアウトプット大全』, サンクチュアリ出版.
ダイヤモンド・オンライン|【山口周×『独学大全』】残念な「勉強法ホッパー」と「独学を武器にできる人」の決定的な差
STUDY HACKER|勉強能力を最短距離で上げる方法。「努力そのもの」を楽しむと、成績は落ちていく
東洋経済オンライン|年を取っても記憶力がいい人と低下する人の差
日経ビジネス電子版|22歳イチロー語った「僕は天才じゃなく運が良かった」
文春オンライン|イチロー「驚異のルーティーン」に学ぶ
NewsPicks|【樺沢紫苑】集中力が続かない原因はマルチタスクの“脳疲れ”
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朝日新聞GLOBE+|グーグル率いる「スーパーインド人」ピチャイ氏はどんな人? 周囲が語るその素顔
ダイヤモンド・オンライン|経営学者・楠木建氏が「どうせ失敗する」と思って仕事に臨めと語る理由
アンジェラ・ダックワース著, 神崎朗子訳(2016),『やり抜く力 GRIT(グリット)――人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につける』, ダイヤモンド社.
ONE CAREER|【密着取材】茂木健一郎、天才の鍵は、グリット(Grit)にあるーコモディティ化する偏差値
APA PsycNet|Making things hard on yourself, but in a good way: Creating desirable difficulties to enhance learning.
【ライタープロフィール】
青野透子
大学では経営学を専攻。科学的に効果のあるメンタル管理方法への理解が深く、マインドセット・対人関係についての執筆が得意。科学(脳科学・心理学)に基づいた勉強法への関心も強く、執筆を通して得たノウハウをもとに、勉強の習慣化に成功している。