疲労がピークに達し、もう限界……。
やるべき仕事はまだ残っているのに、疲れで頭が働かない……。
疲れがたまりやすい終業直前や週の後半などには、こんなつらい状況に追い込まれてしまうことも多いものですよね。
疲労研究を手がける内科医の倉恒弘彦氏によれば、疲労感は、長時間の作業で傷ついた細胞が鳴らすアラーム信号なのだそう。たとえ「まだいける」と思っても、疲労感を放置したままではいけないのです。
仕事でもうひと踏ん張りしたいときにこそあえて休憩をとり、以下にご紹介する3つの方法で脳や身体をリフレッシュさせてあげましょう。
リフレッシュ法1. 1分間の「マイクロ・ナップ」
「疲れで頭が回らず、ボーッとする……」そんなとき、あなたはどんな方法で休息をとりますか?
気分転換にスマホゲームをする、YouTubeで楽しい動画を見る、読みかけの漫画を読む……という、多くの人がやりがちな過ごし方は、じつはどれもNG。
脳神経科学者の枝川義邦氏によると、疲労感は目の疲れ(眼精疲労)から生じるケースが多いため、休憩中にスマートフォンなどを見て目を使い続けると、疲労感は増すばかりなのだとか。効果的に脳をリフレッシュさせたいなら、目を閉じて視覚情報をシャットアウトすることが大切なのです。
目を閉じる時間は、たった1分でも大丈夫。睡眠専門医の坪田聡氏は、視覚情報を断って脳を休める方法として「マイクロナップ」という仮眠法を推奨しています。マイクロ=ごく小さな、ナップ=昼寝という意味で、数秒~1分程度のごく短い仮眠を指します。
坪田氏によれば、マイクロナップは以下のようなタイミングでとるといいそうです。
- ミスが増えてきたとき
- 考えがまとまらなくなってきたとき
- 眠気を感じる前
「頭が回らず仕事がはかどらない……!」と感じたら、その場でほんの少し目を閉じる。これをぜひ、習慣にしてみてください。
リフレッシュ法2.「まったく別の作業」をしてみる
「デスクに長時間向かい続けての作業に飽きてしまった……」そんなときはシンプルに、まったく別のタイプの作業に切り替えることをおすすめします。
神経内科医の米山公啓氏によると、脳には、しばらく同じ作業を続けると “飽き” を感じ、集中力を失ってしまう性質があるそう。脳のなかで「同じ回路」ばかりが使われ続けるためです。
そこで違う作業に取り組めば、脳の「別の回路」を使うことで意欲が再び湧きやすくなるほか、それまで働いていた回路を休ませられるとのこと。1時間を目安に作業を切り替えるといいそうです。
たとえば、「会議資料の作成」という業務に疲れを感じたら、「メールチェック」「発注業務」など、別のタイプの作業に切り替えてみると集中力を取り戻せるかもしれません。
あるいは、休憩を兼ねて「マグカップを洗う」「デスクを掃除する」などの作業をすれば、仕事のことをほどよく忘れられ、ちょうどいいリフレッシュになるはずです。
ただ、時には、別のことをしながらもそれまでの作業のことをぐるぐると考え続けてしまう……ということもあるでしょう。思考が切り替わらないと、リフレッシュ感が得にくいものですよね。
そんなときは、「眼球を右か左に限界まで寄せ、10秒間キープする」という方法を試してみてはいかがでしょうか。
作業療法士で脳の仕組みに詳しい菅原洋平氏によれば、この方法により眼球の動きをブロックすると、 “ぐるぐる思考” の原因である「デフォルトモード・ネットワーク」という神経回路が働かなくなるため、思考を停止させられるとのこと。
実際にやってみると、余計な思考が消え、頭のなかがクリアになったような感覚を得られますよ。
疲れがたまってきたら、作業も思考も切り替えて、脳をリフレッシュさせてあげましょう。
リフレッシュ法3. あえて「身体を動かす」
「デスクワークしかしていないのに、どうしてこんなに身体が疲れているんだろう……」と感じることはありませんか?
整形外科医の遠藤健司氏によれば、じつは、「長時間同じ姿勢をキープし続ける」というのは、人間の身体にとって不自然なこと。デスクワークは意外と重労働なのです。
そこでおすすめしたいのが、あえて身体を動かすことで身体を休ませる「アクティブレスト」(積極的休養)です。
管理栄養士・パーソナルトレーナーの西巻草太氏によれば、デスクワークによる疲れの一因は、長時間同じ姿勢でいて血行が悪化することによる、肉体的疲労(末梢性疲労)にあるとのこと。また、脳が常に緊張状態であったり、パソコン使用により脳や目を酷使し続けたりすることで、精神や神経の疲労(中枢性疲労)も蓄積してしまいます。
こういったデスクワークによる疲労は、軽い運動によって解消できる場合があると西巻氏。その具体的な効果は以下のとおりだそうです。
- 肉体的疲労の回復
血行が改善する。
肉体的疲労の回復に有効な神経伝達物質「セロトニン」の分泌が増える。 - 精神的疲労の回復
自律神経の働きが整う。副交感神経が優位になりやすくなる。
西巻氏によると、アクティブレストとしての効果が高いのは「10~30分程度行なう」「軽く汗ばむくらいの」「有酸素運動」であるとのこと。これらの条件にマッチするウォーキングは、まさにアクティブレストにぴったりの運動なのだと言います。疲れがたまっているなと感じた日の終業後などに行なえば、翌日以後に向けてうまくリフレッシュできるかもしれません。
また、勤務時間中などウォーキングが難しいときは、ストレッチ(ヨガ)で筋肉をほぐすことでもアクティブレストの効果が得られるとのこと。ゆっくりとした動きを意識すること、痛すぎず「気持ちいい」と感じる程度の強さで行なうことがポイントだそうです。深く呼吸して酸素を取り込めば、脳の疲れがとれる効果もあるとか。
身体がだるくなって集中力が落ちてきたときは、肩首・背中・脚など凝っている部位の筋肉をほぐしてみてくださいね。
***
「疲れが限界。でももう少しだけ頑張りたい……!」というときは、上にご紹介した3つの方法で脳や身体をリフレッシュさせ、ぜひ仕事への集中力を取り戻しましょう。
(参考)
医療法人仁泉会 MIクリニック|コラム① 疲労とは?
NIKKEI STYLE|疲れを感じない働き方 やる気引き出す「魔法の言葉」
Lidea|ナポレオン・ダヴィンチ・エジソン...。偉人達もしていた「昼寝」はなぜ脳にいいのか
ワコール|ぐるぐる思考をストップ!
NIKKEI STYLE|仕事の集中力と効率が上がる、脳の活性法
東洋経済オンライン|実は重労働「デスクワーク」疲れを楽にするコツ
ダイヤモンド・オンライン|デキる人はやっている!効果絶大な疲労回復法「アクティブレスト」とは
【ライタープロフィール】
佐藤舜
大学で哲学を専攻し、人文科学系の読書経験が豊富。特に心理学や脳科学分野での執筆を得意としており、200本以上の執筆実績をもつ。幅広いリサーチ経験から記憶術・文章術のノウハウを獲得。「読者の知的好奇心を刺激できるライター」をモットーに、教養を広げるよう努めている。