モルガン・スタンレーで学んだ「超一流のメモ術」5選

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「海外の一流ビジネスパーソンのメモ術を知りたい」
「ワンランク上のメモ術で、仕事や勉強の効率を高めたい」
そんな方はいませんか?

今回は、外資系企業モルガン・スタンレーのハイパフォーマーが独自に発展させてきた、ユニークなメモのとり方を紹介します。実践するだけで、メモのスピードとクオリティが大きく変わるはずですよ。

メモひとつで数億ドルの損失!

私がモルガン・スタンレーのニューヨーク本社で駆け出しのトレーダーだった頃、最初の失敗はメモのとり忘れによるものでした。

下っ端の私の仕事は、先輩たちから矢継ぎ早に出される指示を瞬時に記憶して、処理していくこと。一瞬の迷いが大損につながるので、指示されたタスクの記憶と実行に全神経を集中させます。しかし、ときには覚えきれない量の指示が同時に出されることがありました。

優先順位と相関関係を意識しながらすべての指示をメモしていたのですが、抜け漏れがあり、損失を出してしまった経験も。幸い当時は市場が落ち着いていたので数千ドルの損失ですみましたが、場合によってはメモひとつで数億ドルの損失が発生することもあります。

ゆっくり言われた内容を正確にメモしていくだけなら、誰でもできるもの。しかし、正確性とスピードが求められる現場では、メモのとり方を工夫しないと、私のような失敗につながってしまうのです。

モルガン・スタンレーで学んだ「一流のメモ術」5選-01

今回は5つに分けて、世界的一流企業で活躍するハイパフォーマーのメモ術をご紹介します。1〜4はモルガン・スタンレーで習った場面ごとのメモ術、5つめは私の上司が実践していたユニークなメモ術です。ぜひ、仕事や勉強の参考にしてください。

メモ1.「暗号コード」で “ながらメモ”

モルガン・スタンレーの秘書スーザンは、スパイ映画の「暗号コード」を彷彿とさせるメモのとり方をしていました。入社間もない頃のある日、私のデスクにあったのは、こんな付箋。

“Stephen, John Can re 7y FMCR cb at 2 tks Sue” 1030

何を意味しているか、みなさんにはわかりますか? 答えはこちら。

モルガン・スタンレーで学んだ「超一流のメモ術」5選

文章を丸ごと書かずに、主要なキーワードを拾い書きするのがスーザンのやり方。必要最低限のワードで、要点だけを簡潔に記すことで、効率よくメモをとることができるのです。

電話に出ながら、会議に出席しながら――ながらメモをするのに、暗号コードのような「拾い書き」はぴったり。仕事で便利なのはもちろんのこと、英語リスニングのような勉強の場面でも応用できます。

【ながらメモのコツ】

  1. 英語の場合は、子音のみをメモする
    ※アルファベット26字のうち母音字(a・e・i・o・u)は5個、子音字は21個。子音字に比べて母音字は少ないので、母音字がなくても元の単語を推測しやすい。

    (例)
    spread …… sprd
    basis point …… bp 

  2. 日本語の場合も、漢字や仮名の代わりにアルファベットを使ってメモする
    ※アルファベットは漢字や仮名に比べて画数が少ないので、メモのスピードを上げやすい。

    (例)
    電話 …… tel
    株式会社ビックカメラ …… b cmr

以下で紹介するさまざまなメモでも使うテクニックですので、時短メモ術の基本として覚えておいてください。

メモ2.「略語・記号」で “定例メモ”

モルガン・スタンレーでは毎朝10分ほど朝会をします。このような毎日や毎週の定例会議では誰が何を話すかがある程度わかっているので、みなあらかじめメモのフォーマットを自己流で作成し、それに沿ってメモしていました。 

この朝会で使用していたメモのフォーマット例はこちら。ポイントは、毎回確認する事項を決めておくことと、事実なのか推測なのかという「情報の質」を分けることです。

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【定例メモの手順】 

  1. メモの「フォーマット」をつくる
    事前に記入項目をつくり、記入欄を用意(上の画像・左半分参照)。WordやExcelで作成し、印刷しておくのも手。

  2. 自分専用の「略語」「記号」を数多く用意する
    メモで使う略語や記号を数多くつくっておく(自分だけが理解できればOK)。

    (略語の例)
    例 / example …… eg
    つまり / that is …… ie 
    対して / ag …… against

    (記号の例)
    上昇・増加 / raise, increase …… ↑ 
    下降・減少 / reduce, decrease …… ↓  

  3. 取捨選択しながらメモをとる
    フォーマット上に「略語・記号」と前述の「キーワードの拾い書き」を用いてメモをとる。すべてをメモする必要はなく、自分の業務に関連する内容についてのみ記せばOK。「この人の発言は毎回メモをとろう」というように、毎回メモするに値すると思う人を決めておくのも手。

  4. 情報の性質を区別する
    たとえば以下のふたつに分けて、メモにつけ加える。

    事実 …… F(fact)
    推測 …… A/S(assumption)

上記の例を参考に定例メモ専用のフォーマットをつくっておくと、あらかじめ着目するべきポイントがわかり、すばやくメモがとれるようになります。さらに情報を整理しやすくなり、メモを効果的に業務につなげることができるようになるでしょう。

メモ3.「アクティブ・リスニング」で “不定期会議メモ”

情報共有やプロジェクトの進捗報告など、不定期に開催される社内ミーティングでは、定例会議のフォーマットとは異なるやり方でメモをとります。  

以下は、モルガン・スタンレーの同僚が使っていたオリジナルのフォーマット例。ポイントは、ミーティング当日のパフォーマンスを最大化するためにメモの用意を通して事前準備を徹底的に行なうことと、「アクティブ・リスニング」を通してメモをとることです。  

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【不定期会議メモの手順】 

  1. ゴールを確認
    あらかじめミーティングの目的(Goal)を確認しておく。ミーティングの主催者に聞くのも手。

  2. 質問項目を洗い出す
    共有資料があれば事前に目を通し、不明箇所や質問項目(Question)を書き出す。この際、数字で優先順位をつけておく。書き出した質問はそのまま「会議中の発言」材料となり、ミーティングにおけるあなたの価値や存在感を高めることにつながる。

  3. アクティブ・リスニングしながらメモ
    会議の決定事項・未決事項や懸案事項を区別して記載していく。このとき必要なスキルが 「アクティブ・リスニング」(=受動的ではなく能動的に耳を傾け、物事の相互関係などの本質を深く理解し、記憶にとどめながら聞く方法)。関係性を理解しながらメモをとることで、欠落している情報に気づけるようになる。

  4. 5W1Hを意識してメモ
    自身およびチームメンバーに割り当てられたタスクをメモする。特に、Who(だれが)、When(いつまでに)、Where(どこで)、What(何を)、How(どのように)行なうかを意識するとよい。

ミーティングではときどき、タスクの責任者や締切日を決めないまま、話が進んでしまうことも。そんなとき、「担当者を決めませんか」「納期はいつにしますか」などと提案できると、チームに貢献できるようになります。この積み重ねがチームメンバーからの信頼につながり、あなたの存在価値を高めることに直結するのです。

メモ4.「ロードマップ&着席順」で “営業メモ”

顧客との打ち合わせや営業活動には「ロードマップ&着席順」のメモが使えます。モルガン・スタンレーの同僚が顧客との打ち合わせに使っていたフォーマット例はこちら。  

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【営業メモの手順】

  1. 最終目的到達のためのロードマップをつくる
    事前に最終目的到達までにやるべきことを書き出す(=ロードマップづくり)。たとえば契約獲得のためには、顧客の予算・想定期間・契約内容について話し合う必要があるので、あらかじめそれらの各項目を洗い出し、ブレインストーミングしておく。

  2. 優先順位と相互関係をふまえ、関係性を視覚的にメモ
    打ち合わせでは、前述の「アクティブ・リスニング」と「5W1H」を意識し、各項目を埋めていく。このとき、情報の優先順位と相互関係を押さえることが大切。優先順位は数字や番号で、相互関係は矢印や印で記す。「ゆえに」は「→」「∴」、「なぜなら」は 「←」「∵」など、自分が使いやすいものを決めておくとよい。

  3. 着席順に沿って顧客全員の氏名と特徴をメモ
    打ち合わせ中に、席の位置関係とともに、各参加者の特徴をメモする。外見・パワー(最終決定権をもつか否かなど)・思考(保守的か革新的か、消極的か積極的など)・チーム内の関係性(先輩か後輩など)を記しておく。

  4. ネクスト・アクションに記号や色をつける
    打ち合わせ後に何をすべきなのか、目立つようにメモ。色を変える時間が無駄なのでメモ中は色分けせず、★や〒などの印をつけておく。その後、読み返すときに色分けするとよい。

打ち合わせ前にしっかりと準備しておくこと。そして打ち合わせ後に何をすべきなのか確実に認識すること。これにより、最終目的に向かって効果的に話を進めることができます。今後の戦略を考えるうえでも役立つでしょう。

メモ5. 「机いっぱいに広げた画用紙」に “自由なメモ”

メモの書き方について、モルガン・スタンレーで習った順にご紹介しました。最後におまけとして、直属の上司がやっていたメモ術もお伝えします。

それは、大きな画用紙をメモ帳代わりに使い、机いっぱいに広げて自由にメモするという、一風変わったやり方。

モルガン・スタンレーで学んだ「一流のメモ術」5選-06

業務についてだけでなく、個人的なことから子どものような落書きまで、いろいろなことを書いていました。 そんな画用紙メモのメリットはこちら。

【画用紙メモのメリット】

  1. 画用紙のような真っ白でフィールドの広い紙面は、ノートと違って横線などで発想を制限されることがないため、思考を広げやすい

  2. 自由にレイアウトを変えられるので、 思いつくままに情報の相関関係や優先順位をメモし、視覚に訴えるかたちで残しやすい 

  3. 机いっぱいに広げた画用紙には、文字だけでなくイラストも好きなように書けるので、息抜きにもなる

見ているだけでワクワクするようなメモで、とても印象的でした。

***
気になるメモ術はありましたか? まずはひとつ選んで、試してみてください。メモを変えれば、おのずとパフォーマンスも変わるはずですよ。

【ライタープロフィール】
Stephen Pong(スティーブン・ポング)
青山学院大学卒。モルガン・スタンレーNY本社に新卒で入社し、東京支店でも勤務。リーマン・ブラザーズに移り、東京支店およびNY本社でキャリアを重ねたのち、メリルリンチ日本証券にて初代WEBマネージャーを務める。その後、ライブドアへ転職し、WEB事業部・戦略コンサルティング事業部(電通へ出向)・ファイナンス事業部にて勤務。現在は独立し、ビジネスパーソン向けに外資系企業への転職支援を行なう。

■連載『外資で働くための「一流ワークハック術」』一覧はこちら

連載『外資で働くための「一流ワークハック術」』

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