「どこに行っても信用される人」になるために、順に上がっていきたい4つのレベル

石川明さんインタビュー「信用される人になるための4つのレベル」01

社内外問わず、多くの人と関わりながら仕事を進めなければならないビジネスパーソンにとっては、良好な人間関係を築く力が重要であることは言うまでもありません。でも、どんな組織でも周囲から好かれたり評価されたりする人もいれば、逆に味方を増やせない人もいます。その違いはどこにあるのでしょう?

社内起業のサポートに特化したコンサルタントであり、多くの人間関係を現場で見続けてきた石川明(いしかわ・あきら)さんが、よい人間関係を築く方法とあわせて教えてくれました。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹

組織の仕事に対する考え方を汲み取る

異動して新しいチームに入っても、転職しても、自然と好感をもたれやすくいい人間関係を築きながら仕事ができる人には、いくつかの特徴が見られます。

当たり前のようですが、まず、他人に対して優しい、嘘はつかない、約束を守る、しっかりとあいさつをするなど、ベースとして「いい人」であることが大切です。まるで小学校の道徳の授業内容のようですが、いい人ではない人が周囲から好かれるはずはありません。

ただ、それはあくまでもベースです。いい人であったうえで、自分が所属する組織の「価値観」をしっかりと認識できることも重要です。なにをもっていい仕事と言うのか、どういうことを大事にして働いているのか、そういった価値観は組織によって違ってくるものだからです。

客から急ぎの仕事をお願いされたとします。みなさんならどう対応しますか? 「お客さまからの依頼だから、なにを差し置いても最優先でご要望にお応えするべきだ」という考えもあれば、「いやいや、バックヤードや現場スタッフの事情もかんがみて、できない場合にはきちんと誠意をもって断るべきだ」といった考えもあるでしょう。もちろん、どちらかが正解ということはありません。組織によって仕事に対する考え方は違って当然なのです。

ですから、異動したり転職したりした場合には、いち早く新しい組織の仕事に対する考え方を汲み取るべきです。そうでなければ、その組織から浮いてしまうことになります。

先の例で言えば、後者のように「他のスタッフに無理な負担をかけるべきではない」ということを重視している組織のなかで、前者のように「客の要望にはなにがなんでも応えるのが当然でしょう?」なんて言ってしまうようなケースです。周囲からは、「もちろんそういう考え方もあるのだろうけど、うちの場合はさ……」と引かれるのがオチです。

それまでの自分の考えに縛られず、柔軟にそれぞれの組織の考え方を理解し、取り込んでいくことが大切なのです。

石川明さんインタビュー「信用される人になるための4つのレベル」02

「自分が最優先」「アドバイス好き」の人は要注意

一方、仕事は頑張っているのにどういうわけか孤立しがちで、人とあまり協力し合えない人にはどんな特徴があるでしょうか? そのひとつには、「自分が最優先」という考え方になりがちな傾向があります。人と人が関わって進めるのが仕事です。自分を優先したい場面もあるかもしれませんが、相手の立場からも物事を見て周囲を優先できる人のほうが、「この人とは一緒に仕事をしやすそうだ」と思われるものでしょう。

また、「アドバイス好き」という人も、一見相手を思いやってではありますが、注意が必要です。これも、「自分が最優先」だからこそ生まれる特徴と見ることもできます。

ゴルフでもなんでもいいのですが、なにかの趣味やレジャーを楽しんでいる場面で、たくさんのアドバイスをしてくる人に辟易した経験はありませんか? せっかくのアドバイスをうっとうしく感じるのは、こちらが必ずしもアドバイスを求めていないからです。つまり、「自分が最優先」ゆえに「アドバイスをしたい」という自分の思いを優先し、相手がアドバイスを求めているかどうかはまったく気にしていないため、アドバイス好きの人は周囲からうとまれるのです。

これと同じようなことは、仕事のなかでもありがちです。協力関係を築くには、たしかに「他者貢献」がポイントのひとつなのですが、相手から求められてもいないアドバイスをするのは単なる親切の押し売りであり、それによって相手から好感をもたれることはありません。

石川明さんインタビュー「信用される人になるための4つのレベル」03

「信用される人間になる」ための4つのレベル

では、仕事仲間から「一緒に頑張りたい」「困ったときには相談したい」と思ってもらえる好人物になるには、具体的にどのような行動をすればいいでしょうか。

ここまでの話のなかにもその回答がいくつか含まれていますが、シンプルに言うと「信用される人間になる」ということなのだと思います。

ただ、信用にもいくつかのレベルがあります。わかりやすく図で表すとこういうイメージです。

石川明さんインタビュー「信用される人になるための4つのレベル」04

まずは、冒頭でお伝えした「いい人」であることがベースです。嘘はつかないし約束を必ず守るとなれば、周囲からミニマムの信用を得られます。

その上のレベル2は、先にも触れた、「自分が所属する組織の価値観」を共有できているということです。価値観を共有し「仲間だ」と思われることが必要です。

さらに、レベル3は、「組織として成果を挙げていくという目標にコミットできる」ことです。企業が利益を生むために存在する組織である以上、成果を挙げるために積極的に関われるのか、それとも他人事のように傍観するのかによって、周囲からの評価は大きく変わります。たとえ結果的に目標達成に至らずとも、最後まで頑張りきれる人かどうかが問われます。そういう人であれば、たとえ失敗しても信用して任せてみようと思われるのです。

そして、レベル4として、「組織に有用な知識やスキルをもつ」ことがあるのだと思います。いくらいい人で、組織の価値観を共有できて、成果に対して自らの責任を果たそうという姿勢をもっていたとしても、肝心のビジネススキルや知識に欠けていたらどうですか? それこそ、「あの人、いい人なんだけど実力が……」と、「いい人どまり」で終わってしまうことは容易に想像できます。

もちろん、スキルがあればいいわけではありません。いくら優れた知識やスキルをもっていたとしても、いい人でもなければ組織の価値観の共有もできていないとなれば、上司からすれば「使いにくい人間」になりますし、同僚からもうとまれてしまいます。「信用される人間になる」ための4つのレベルを順に上がっていくことが大切なのだと思います。

石川明さん

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【プロフィール】
石川明(いしかわ・あきら)
1966年2月11日生まれ、大阪府出身。株式会社インキュベータ代表取締役。1988年上智大学文学部社会学科卒業後、リクルートに入社。リクルートの企業風土の象徴である新規事業提案制度「New RING」の事務局長を長く務め、新規事業を生み続けられる組織・制度づくりと1,000件以上の新規事業の起案に携わる。2000年に総合情報サイト・オールアバウト社の創業に携わり、事業部長、編集長等を務める。2010年、企業における社内起業をサポートすることに特化したコンサルタントとして独立。これまでに100社、2,000 案件、4,000人以上の企業人による新規事業を支援。自身のビジネス経験、そしてコンサルタントとして数多くのビジネスパーソンの仕事ぶりを観察することで、新規事業を成功させるためには、人や組織を巧みに動かす「ディープ・スキル」の必要性を痛感。そうした要素も含めた「創造型人材の育成」にも力を入れている。早稲田大学ビジネススクール修了。大学院大学至善館特任教授、明治大学専門職大学院グローバル・ビジネス研究科客員教授。経済産業省起業家育成プログラム「始動」講師などを歴任。著書に『はじめての社内起業』(ユーキャン学び出版)、『新規事業ワークブック』(総合法令出版)がある。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。

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