本当に仕事ができる人がもつ「奥深い力」。磨くには「人の気持ちを考える」習慣が何より大切だ

石川明さんインタビュー「本当に仕事ができる人がもつ力『ディープ・スキル』とは何か」01

「仕事ができる人」というと、どんな人を思い浮かべるでしょう? 論理的思考に長けていたり、素早く的確な判断ができたり、学習意欲が強かったり、重要な場面でこそ集中力を発揮できたりなど、イメージは人それぞれかもしれません。

ただ、社内起業のサポートに特化したコンサルタントとして活躍する石川明(いしかわ・あきら)さんは、「人や組織を巧みに動かす『ディープ・スキル』をもっている人」こそが仕事ができる人だと言います。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹

「ディープ・スキル」=人間心理と組織力学から成り立つ実行力

周囲から「仕事ができる人」と思われる人は、さまざまな力をもっているものです。しかし、仕事で成果を挙げるために最も重要な力となると、「実行力」なのだと私は考えています。どんなにすばらしいビジネスプランを発案できたとしても、実際にそのプランを動かすことができなければ、ただの絵に描いた餅で終わってしまうからです。

では、その実行力とは具体的にどういうものかというと、「人間心理」「組織力学」に対する深い洞察に基づいたヒューマンスキルだと私は見ています。

どんな仕事であっても、誰かと関わりながら進める必要があります。組織に属さず孤高の職人のように見える人だって、お客さんがいるからこそ仕事が成立するのです。それこそ会社に勤めるビジネスパーソンなら、社内外問わず多くの人たちと関わりながら仕事をしなければなりません。だからこそ、周囲の人たちがどんな気持ちをもっているのか、なにを自分に求めているのかといった心理を汲み取る力が重要になってきます。

また、そこから先に進むと、複数の人たちで成り立つ組織を動かす力も必要となってきます。組織におけるプロジェクトは、自分ひとりで動かせるようなものではありません。それに関わる関係部署や経営陣の感情的な共感が得られていなければ、サポートを得られないばかりか、逆に抵抗に見舞われるなどしてそのプロジェクトは頓挫してしまうでしょう。

しかし、この人間心理や組織力学を洞察することで実行力を身につけるのは、簡単なことではありません。同じ言葉を投げかけても、それに対する反応は人それぞれ。人間心理や組織力学は、「こういうものだ!」と単純な理屈で言いきれるものではないのです。

だからこそ、簡単に身につけることができない奥深い力として、この実行力を「ディープ・スキル(Deep Skill)」というふうに名づけました。

石川明さんインタビュー「本当に仕事ができる人がもつ力『ディープ・スキル』とは何か」02

「人の気持ちを考える」かどうかで評価や成果に差が生まれる

私は、これまでの自分自身のビジネス経験や、社内起業をサポートするコンサルタントとして多くの人間関係を目のあたりにしてきた経験のなかから、実行力を磨く方法を少なからず発見できたと思っています。

実行力を磨く第一歩は、とにかく「まわりの人の気持ちを考えながら仕事をする」ということに尽きます。こう言うと、まるで小学生に言っているようなことだと思われるかもしれませんが、これこそが真理です。

たとえば、ただ「自分が言いたいことを言う」のか、それとも「相手が求めていることを言う」のかだけでも、周囲の反応やその後の周囲との関係性はずいぶんと違ってきます。もちろん、自分が「これが正しいはずだ」と思う主張が求められる場面もあります。ですが、そういう主張をすべき場面なのか、あるいは主張を抑えるべき場面なのかを判断するにも、やはり人の気持ちを考えることが欠かせません。

若い人であれば、上司からなにかを問われたときには、「上司はなにを知りたいと思っているのだろう?」「自分になにを期待しているのだろう?」と考えて答えるかどうかで、上司からの評価も変わってくるでしょう。

逆に上司の立場の人であれば、部下のモチベーションを高めたり維持したりすることも、重要な使命です。ただ、だからといって「やる気を出せ」と指示したところで、やる気を出してくれるはずもありません。部下たちの気持ちを汲み取り、それぞれに合ったかたちでのコミュニケーションによって、モチベーションを高める必要があるのです。

石川明さんインタビュー「本当に仕事ができる人がもつ力『ディープ・スキル』とは何か」03

「人の気持ちを考える」ことを習慣にする

もちろんそういった姿勢が求められるのは、社内の人間に対してだけではありません。ビジネスパーソンにとって、お客さんの気持ちを汲み取ることが重要であるのは言うまでもないでしょう。

「ここがうちの商品のウリです!」と商品の持ち味をアピールする方法もありますが、気の利いた営業マンであれば、「どんなことにお困りでしょう?」と聞いてお客さんの気持ちを汲み取ったうえで、その困り事を解決できる商品のポイントをアピールできます。成果を挙げられるのは、間違いなく後者の営業マンです。

そして、この「人の気持ちを考える」ということを日々の習慣とすれば、実行力は着実に伸びていきます。いわば、マーケティングにおけるリサーチ法のひとつである「観察調査」を日常的に行なうのです。

マーケティングでは、お客さんの行動に対してさまざまな想像をします。売り場で自社の製品を手に取らずに他社製品を買ったお客さんがいたとしたら、「どうしてあのお客さんはうちの商品ではなくこっちを選んだのだろう?」と、お客さんの気持ちや背景を想像します。そして、「きっとこういう気持ちだったに違いない」「だったら、こういう商品にすれば売れるはずだ」という仮説を立て、商品を改善していくことが求められます。

人と仕事をするうえでも、それと同様のことをするのです。誰かがなんらかの発言や行動をしたら、そのつど、「この人はどうしてこんなことを言ったのだろう?」「こんな行動をしたのだろう?」と考える。それが習慣となれば、あなたの実行力——ディープ・スキルは間違いなく伸びていきます。

石川明さん

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【プロフィール】
石川明(いしかわ・あきら)
1966年2月11日生まれ、大阪府出身。株式会社インキュベータ代表取締役。1988年上智大学文学部社会学科卒業後、リクルートに入社。リクルートの企業風土の象徴である新規事業提案制度「New RING」の事務局長を長く務め、新規事業を生み続けられる組織・制度づくりと1,000件以上の新規事業の起案に携わる。2000年に総合情報サイト・オールアバウト社の創業に携わり、事業部長、編集長等を務める。2010年、企業における社内起業をサポートすることに特化したコンサルタントとして独立。これまでに100社、2,000 案件、4,000人以上の企業人による新規事業を支援。自身のビジネス経験、そしてコンサルタントとして数多くのビジネスパーソンの仕事ぶりを観察することで、新規事業を成功させるためには、人や組織を巧みに動かす「ディープ・スキル」の必要性を痛感。そうした要素も含めた「創造型人材の育成」にも力を入れている。早稲田大学ビジネススクール修了。大学院大学至善館特任教授、明治大学専門職大学院グローバル・ビジネス研究科客員教授。経済産業省起業家育成プログラム「始動」講師などを歴任。著書に『はじめての社内起業』(ユーキャン学び出版)、『新規事業ワークブック』(総合法令出版)がある。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。

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