「周囲の協力をさくっと得られる人」は何をしているのか? 頼み事に “罪悪感” なんて不要です

頼み事ができる人は強い01

人に何かを頼むのが苦手で、どんなに忙しくても全部ひとりで請け負ってしまう……そんな人はいませんか?

人に頼らず物事をこなすことで身につくスキルもありますが、頼み事を適切にできることも、社会生活を送るうえでは重要です。今回は、上手に頼み事をするためのコツや心がけをご紹介しましょう。

頼み事をしづらい理由

なぜ「頼み事をしづらい」と感じてしまうのでしょうか。社会心理学者のハイディ・グラント氏は、頼み事をするとき、人の脳は体に痛みを感じたときと同じ反応をすると指摘しています。頼み事を拒絶されたり弱い人だと思われたりするリスクを脅威に感じてしまうことが原因なのだそう。

しかし、仕事はメンバーと協力し合って遂行していくもの。また、仕事を分担するだけでなく、自分よりもスキルをもった人に教えを乞うことも頼み事のひとつと言えます。自分のスキルを高めるうえで、頼み事をする能力は重要な鍵となるでしょう。

グラント氏いわく、職場で協力してもらえる人の75%〜90%は、本人が直接誰かにお願いをしているのだそう。まわりから助けてもらえる人になるためには、まず「人に頼み事をするのは怖いことではない」という認識をもつ必要があります。

頼み事ができる人は強い02

人助けは幸福感をもたらす

とはいえ、誰かに頼み事をしたとき、「本当は嫌々やっているのでは……?」「相手に負担をかけているのでは……?」と心配になる人もいるかもしれませんね。しかし、その心配は無用。

科学雑誌「Nature Communications」にて発表された論文によると、人のために行動したほうが、「自分のために行動するよりも幸福感を感じるとのこと。研究では、被験者を「次の4週間のあいだに『誰かのためにお金を使う』グループ」と「同期間のあいだに『自分のためにお金を使う』グループ」に分けました。その結果、誰かのためにお金を使うグループのほうが幸福感が増していたことが判明したのです。

同様に、イエール大学精神医学部助教授のエミリー・アンセル氏の研究では、人助けの効果が示唆されています。研究では、18歳から44歳までの成人を対象に、毎日その日の行動を細かくチェックし、なんらかの人助けを行なったかどうかを調査。すると、人助けを行なうとポジティブな気分になって1日の幸福感が高まったのに対し、人助けが少ないとネガティブな気分になってその日の幸福感も低くなったのだとか。また、人助けを多くする人は感情や精神の健康も保たれていたそうです。

誰かのために行動することは、自分自身をも幸福にしてくれる効果があるのですね。人を頼ると、相手に負荷を与えているように感じてしまうかもしれませんが、必ずしもそうではないのです。

頼み事ができる人は強い03

協力してもらいやすい頼み方はこれ!

前出のグラント氏によると、頼み事をするときにNGなワードがあるそう。それは、「ちょっとお願いしてもいいですか?」――丁寧に見えますが、相手に断りづらい空気を出してしまうからです。また、「申し訳ないのですが〇〇をお願いできますか?」のように謝罪を加えた頼み方も、何かネガティブなことをお願いされたような気分にさせてしまうのとか。

ここからは、相手に気持ちよく引き受けてもらえるようになるコツを3つ紹介していきましょう。

1. 「一緒に」という言葉でチーム感を出す

まずポイントとなるのが、お願いする相手のことを「仲間」として認識していることを示すこと。人は本能的に、チームや仲間などの社会的な組織に所属していたい願望があるため、仲間であると認識した相手には協力したいと感じやすいのです。

スタンフォード大学のピリヤンカ・カー氏とグレッグ・ウォルトン氏は、「一緒に〇〇やりましょう」というフレーズを使うことをすすめています。「一緒に」というキーワードを使うことで、頼み事をされた人は、チームの一因となった喜びを感じてモチベーションが上がるのです。

2. 事前に感謝を伝える

「感謝」も、上手に協力を得るためには重要です。

アメリカのソフトウェア会社Boomerangが350,000件のメールのやり取りから分析をした結果、お願い事をするメールに「ご協力ありがとうございます」「ありがとうございます」などの言葉を添えた場合、63%〜66%の割合でポジティブな返信が返ってくることが判明。「よろしくお願いいたします」と添えた場合は51%〜54%という結果だったそう。

お礼の言葉を事前に添えることで、不思議と相手の協力を得られる確率が上がったのです。感謝ができる人に対しては、助けたい気持ちが湧きやすいのかもしれませんね。

3. お願いした相手に結果を共有する

お願いする相手のモチベーションを上げるには、「協力してもらったおかげで、どのような結果が出せたか」をしっかり伝えることが重要です。これによって相手の自己有用感を上げ、また手伝いたくなる気持ちを起こすことができます。

ペンシルベニア大学ウォートン校の心理学教授であるアダム・グラント氏が行なった実験をご紹介しましょう。「自分が行なっている仕事が、どのような影響を与えているのかが見えたほうがモチベーションが上がる」という仮説のもと、コールセンターの従業員たちに週に1回、5分間利用者の人たちと話をする時間を設けたそう。その結果、1ヶ月後にはコールセンターの実績が倍増したのだとか。

人は、自分がとった行動に対して、相手がどのように助かっているか知ることでモチベーションが上がるのです。何かをお願いした相手には、「○○さんに資料づくりを手伝っていただいたおかげで、先日のプレゼンは大成功でした」など、あとから結果を報告するようにするとよいでしょう。そうすることで、次からも快く引き受けてくれる可能性が高まります。

***
多くの人は、こちらが思っているよりも快く協力してくれるものです。ご紹介したコツを意識して、上手に頼み事ができる人になりましょう!

(参考)
Harvard Business Review|How to Get the Help You Need
TED|How to ask for help -- and get a "yes"
Nature Communications|A neural link between generosity and happiness
Yale School of medicine|Ansell: Helping others dampens the effects of everyday stress
Stanford News|Stanford research shows that working together boosts motivation
Boomerang|Forget “Best” or “Sincerely,” This Email Closing Gets the Most Replies 
Wharton School of the University of Pennsylvania|Putting a Face to a Name: The Art of Motivating Employees

【ライタープロフィール】
Yuko
ライター・翻訳家として活動中。科学的に効果のある仕事術・勉強法・メンタルヘルス管理術に関する執筆が得意。脳科学や心理学に関する論文を月に30本以上読み、脳を整え集中力を高める習慣、モチベーションを保つ習慣、時間管理術などを自身の生活に取り入れている。

会社案内・運営事業

  • 株式会社スタディーハッカー

    「STUDY SMART」をコンセプトに、学びをもっと合理的でクールなものにできるよう活動する教育ベンチャー。当サイトをはじめ、英語のパーソナルトレーニング「ENGLISH COMPANY」や、英語の自習型コーチングサービス「STRAIL」を運営。
    >>株式会社スタディーハッカー公式サイト

  • ENGLISH COMPANY

    就活や仕事で英語が必要な方に「わずか90日」という短期間で大幅な英語力アップを提供するサービス。プロのパーソナルトレーナーがマンツーマンで徹底サポートすることで「TOEIC900点突破」「TOEIC400点アップ」などの成果が続出。
    >>ENGLISH COMPANY公式サイト

  • STRAIL

    ENGLISH COMPANYで培ったメソッドを生かして提供している自習型英語学習コンサルティングサービス。専門家による週1回のコンサルティングにより、英語学習の効果と生産性を最大化する。
    >>STRAIL公式サイト