仕事の失敗で落ち込んでしまうとなかなか立ち直れない……。
明日に持ち越してしまった仕事が気になって仕方がない……。
こうしたことがよくある人は、じつは「脳」がとても疲れているかもしれません。
脳の疲れを放っておくのは非常に危険。なぜならば、休んでも疲れが抜けなくなったり集中力が続かなくなったりするほか、うつ病のリスクも跳ね上がるから。脳の疲れは心身に悪い影響ばかり及ぼします。
そこで今回は、普段みなさんが何気なくやっているかもしれない「脳を疲れさせる5つの習慣」と、その改善方法をご紹介しましょう。
脳を疲れさせる習慣1:お昼はデスクでランチ
職場でのランチ。デスクから動くのが面倒で、お弁当をそのまま広げるという人はいませんか?
東京疲労・睡眠クリニック院長の梶本修身氏によれば、オフィス内のように温度や湿度が一定で変化のない環境ほど、脳は疲れやすいそうです。そのため、昼休みになってもデスクから動かず、そのままランチをとるのは、脳を疲れさせる習慣なのだとか。
梶本氏いわく、脳疲労の軽減には、木漏れ日、そよ風、せせらぎといった「自然のゆらぎ」のある環境に身を置くことが効果的だそう。オフィスの近くに公園や河川といった自然に触れられる場所があれば、お昼休みには少し足を伸ばしてみてはいかがでしょう。
脳を疲れさせる習慣2:ネガティブ感情をもちすぎる
仕事で失敗すると、ずっとモヤモヤした気分が続いてしまう、という方も要注意です。
精神科医で禅僧でもある川野泰周氏いわく、「ネガティブ感情」は脳を疲れさせる大きな原因になるとのこと。川野氏によると、ネガティブ感情は、脳内で感情をつかさどる扁桃体という部位を活動的にします。すると、理性をつかさどる前頭葉が、扁桃体を抑え込むために必要以上に働くことに。そのため脳が疲労するそうなのです。
そんな脳の疲労をなるべく起こさない、あるいは解消する方法として川野氏がすすめるのが「マインドフルネス」。「いま、目の前のことに集中する」ことです。過去の失敗や未来の心配をあれこれ思い浮かべるのではなく、「いまここで呼吸している自分」に意識を向けることが、脳の疲労軽減になるのだそう。
マインドフルネスの呼吸法については、精神科医の久賀谷亮氏が提案する以下の4つのステップを実践してみてください。
1、椅子に座って、お腹をゆったり、手は太ももの上に乗せる
2、身体の感覚に意識を向ける
3、呼吸に意識を向ける
4、雑念が浮かんだら、注意を呼吸に戻す
(引用元:リクナビNEXT|久賀谷亮さん-プロ論。-)
マインドフルネスは、短い時間でもいいので継続することが効果的だそう。久賀谷氏は、1日10分好きな時間帯に実践することをすすめますが、不慣れなうちは、たとえ1分も続かなかったとしても続けていければいいと言います。仕事の休憩時間や夜のリラックスタイムなどに、ぜひ実践し続けましょう。
脳を疲れさせる習慣3:マルチタスク
デスクでパソコンに向かい、プレゼンの資料をつくりながら電話の対応をする。複数の仕事を並行してこなす「マルチタスク」は、デキるビジネスパーソンのスタイルのようにも見えますが、じつは脳を疲れさせる悪習慣のひとつなのです。
精神科医の樺沢紫苑氏は、人間の脳の仕組みはマルチタスクに向いていないと言います。一度に複数のことを処理しようとすると、脳に負担をかけ、かえって集中力や生産性の低下を招くのだとか。
とはいえ、マルチタスクをまったくしないようにするのも難しい話。そこで、作業療法士の菅原洋平氏は「できるだけマルチタスクに陥らない状況を自分でつくることが大切」だと言い、以下のようなアクションを提案しています。
- 机の上に複数の案件の書類を広げない
- To Doリストの付箋をパソコンに貼らない
- 自分宛のリマインドメールをいくつも設定しない
このようにして、ひとつの仕事をしているときにほかの仕事に意識が向かないようにすれば、本当になくすことができない重要なマルチタスクに脳の限られたエネルギーを割くことができるようになります。自分で無駄につくり出してしまっているマルチタスクを減らして、脳の疲労を軽減させましょう。
脳を疲れさせる習慣4:情報収集をスマートフォンに頼りきっている
仕事の休憩中はネットサーフィン。帰宅後はSNSチェック。手軽で便利、時間潰しにももってこいのスマートフォンですが、使いすぎは脳疲労を蓄積する悪習慣です。
脳神経外科医の奥村歩氏によると、インターネットを通して絶え間なく多くの情報をインプットしていると、情報量の膨大さに脳の処理能力がついていけなくなるそうです。結果、脳が働きすぎで疲弊してしまうとのこと。
とはいえ、情報も娯楽も提供してくれるスマートフォンを、必要なとき以外は触らないというのも現実的ではありませんよね。そこで、「5分間ただぼーっとする」というとても簡単な方法で、脳のデトックスをしてみるのはいかがでしょうか?
「ぼーっとしている」とき、脳内では「デフォルト・モード・ネットワーク(以下DMN)」という機能が働いています。奥村氏によると、DMNとは「何もしていないときにだけ稼働する、脳のメンテナンス機能」。DMNの状態のとき、脳は不要な情報を整理し、心身のバランスを整えているそうなのです。
たとえば、通勤電車で普段はスマートフォンを見て過ごしている時間のうち、ほんの5分だけ情報を遮断し、ぼんやり窓の外を眺めて過ごすというだけでも効果的。また奥村氏は、家事や散歩といった無心でできる単純な運動も、DMNを稼働させるのには最適だと言います。ランチ後にほんの5分だけあたりを散歩してみる、というのも簡単にできそうですよね。
脳を疲れさせる習慣5:先延ばし
取引先からの連絡や急に持ち込まれる案件に対応していて、日中は手一杯。ようやく自分の仕事に取りかかれる時間になったが、どうしても疲れて面倒になり、明日に持ち越してしまう。こんなふうに仕事を先延ばしする習慣は脳を疲労させる、と上述の菅原氏は言います。
たとえば、部下から頼まれたトラブル対応に取り組んでいる最中に、先延ばしにした自分の資料作成業務のことを思い出す、といったことが起きるだけで、脳は必要以上に働いてしまうそうなのです。
そんな先延ばしの習慣の改善策として菅原氏が提案するのが「ひとつの仕事を終えたら、次の仕事に少しだけ手をつけてひと区切りとする」という方法。菅原氏が著書で挙げている「企画の打ち合わせ」という例であれば、「打ち合わせが終わった時点」ではなくて「デスクに戻って企画書を1行書くまで」でひと区切りにするのです。
打ち合わせ終了の段階で仕事を区切ってしまうと、「打ち合わせ内容から資料をつくる」という次の仕事に移るとき、脳は新しい命令を出さなければなりません。脳に負担がかかるため、「面倒くさい」と感じてしまいます。
ですが「デスクに戻って企画書を1行書くまで」でひと区切りにすれば、脳はあらかじめ次の仕事の準備をすることができます。作業を再開するときにはスムーズに体に命令を下せるようになり、「面倒くさい」という気持ちが起きなくなるのです。
自分の仕事に手をつける余裕がないときでも、「1行だけ資料を書く」「1通だけメールを送る」というほんの少しの作業ならできるはず。これが、先延ばしを防いで脳疲労を軽減するコツなのです。
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頑張る人ほどやってしまいがちな脳を疲れさせる習慣。あなたの頑張りは本当に尊いものだからこそ、元気に仕事に立ち向かえるよう、この記事を役立てていただきたいと思います!
(参考)
NIKKEI STYLE|すべての疲れは「脳の疲れ」 脳疲労をためない新習慣
STUDY HACKER|“精神科医の禅僧” が教える「脳が疲れる2つの原因」。現代は “脳に悪いこと” が多すぎる。
リクナビNEXT|久賀谷亮さん-プロ論。-
NewsPicks|【樺沢紫苑】集中力が続かない原因はマルチタスクの“脳疲れ
STUDY HACKER|マルチタスクによる脳への負担を減らす方法。「○○を正す」のが意外と効果的
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菅原洋平 (2019), 『「疲れない」が毎日続く! 休み方マネジメント』, 河出書房新社.
【ライタープロフィール】
月島修平
大学では芸術分野での表現研究を専攻。演劇・映画・身体表現関連の読書経験が豊富。幅広い分野における数多くのリサーチ・執筆実績をもち、なかでも勉強・仕事に役立つノート術や、紙1枚を利用した記録術、アイデア発想法などを自ら実践して報告する記事を得意としている。