勉強中の休憩時間。スマートフォンでSNSをチェックしたり、テレビを見たり、ソファで横になったりして、ちゃんと休憩したつもりなのに、疲れがいまいちとれずやる気も戻らない……。
そんなことがよくある人は、以下のチャートをたどってみてください。
自身の状態に合った適切な方法で休憩をとれば、休んだあとの勉強効率を上げやすくなるものです。チャートでたどり着いたものが、いまのあなたに最適な休憩法。それぞれ詳しく解説しましょう。
【1】仮眠をとる
「頭がぼーっと」して「眠く」なってきた……。そんなときには、休憩時に仮眠をとるのがおすすめです。
精神科医の西田昌規氏によると、「眠い」と感じたら、集中力が切れた証拠。
そもそも、勉強などに集中しているあいだの脳は、疲れやすい状態にあるそう。勉強に必要な特定の感覚(例:視覚)をフルパワーで働かせているからです。
そのため、脳は長い時間集中し続けることはできないのだとか。「眠い」というのは、使いすぎた脳の部分に疲労がたまったことを知らせるサインのひとつである、と西田氏は言います。
そこで、もう一度勉強へ集中して取り組むために必要なのが、仮眠をとって疲れた脳を休ませること。株式会社DeNAのCHO(チーフ・ヘルス・オフィサー)室室長代理・平井孝幸氏が示すところによれば、NASAの研究で、仮眠をとると認知能力が34%、注意力が54%も向上したとわかったのだそう。
ただし、「長時間の仮眠」や「夕方以降の仮眠」だと、夜の睡眠を妨げるため注意が必要とのこと。16時までに、15分程度(長くても30分まで)の仮眠をとるのが望ましいそうです。加えて、ベッドで横になると深い眠りに入り長時間経ってしまう恐れがあるため、机の上で顔を伏せて眠ることを平井氏はすすめています。
眠くて集中できない……という状態のまま無理に勉強を続けても、パフォーマンスがさらに低下するだけ。15分の仮眠で脳を休ませれば、休憩後の勉強効率がぐんと上がるはずですよ。
【2】目を閉じる
「眠くはない」けれど「頭がぼーっと」して勉強がはかどらない……というときは、目を閉じて脳を休ませましょう。じつは、目を閉じるだけでも脳の疲れをとる効果があります。
耳鼻咽喉科専門医の梅岡比俊氏によると、脳が常に処理し続けている膨大な情報の約8割は、視覚から得ているもの。そのため、目を閉じて視覚情報を遮断するだけで、かなり脳が休まるそうです。
ただし、目を閉じても考え事をしていては脳の活動量は減らないとのこと。目を閉じているあいだは何も考えず、瞑想のように呼吸に集中するといいと梅岡氏は言います。
また目を閉じると、ちょっとした音に注意が向きがちになるもの。耳栓をつけて音を遮断すれば、より脳を休ませやすくなるそうです。
なお、睡眠専門医の坪田聡氏によれば、たった1分でも目を閉じれば、脳が休まるのだとか。トイレで座っているあいだだけでもいいそうですよ。
それほど眠気はないから、と休憩中にスマートフォンやテレビを見てしまうと、視覚や聴覚から情報が入り続けるため、勉強で疲れた脳を十分に休ませることができません。頭が少しぼーっとしてきたときに有効な「目を閉じる」という休憩法。ぜひ試してみてくださいね。
【3】散歩する
机に向かい続けて一生懸命勉強したら、「身体が疲れてだるくなってきた」みたい……。そんなときは、部屋でじっとするのではなく、散歩に出かけるのがおすすめです。
フィジカルトレーナーの中野ジェームズ修一氏によると、座りっぱなしの状態が続くと血流が滞り、体内に疲労物質がたまるのだそう。疲れたからと休憩中ずっと座ったままでいても、疲れる一方……。
そこで有効なのが、散歩です。中野氏いわく、歩いて脚の筋肉を動かし血流を増加させれば、疲労物質を体外に排出しやすくなるとのこと。勉強中座り続けたことによる身体の疲れが、散歩によってすっきり解消できるのですね。
ちなみに、精神科医の樺沢紫苑氏によると、散歩には「気持ちを前向きにする」「集中力を高める」などの効果もあるとのこと。これは、ドーパミンという脳内物質が分泌されるためです。たった5分や10分でも効果があるそうですよ。
勉強していて身体が疲れてきたときは、休憩がてらちょっと散歩に出かければ、その後の勉強がはかどるはずです。
【4】好きな音楽を聴く
頭も身体もそこまで疲れていないけど、どうも「やる気が出ない……」。こうした人は、好きな音楽を聴きながら休憩し、やる気をぐんと高めましょう。
カナダ・マギル大学の研究チームが科学誌『ネイチャー・ニューロサイエンス』に発表した論文によると、好きな音楽を聴いてワクワクすると、脳内でドーパミンが放出されるのだそう。音楽を聴いている最中はもちろん、聴く前の期待感だけでも放出されるとわかったとのことです。
先述のとおり、ドーパミンには、気持ちを前向きにしたり、集中力を高めたりする効果があります。ですから、休憩中に好きな音楽を聴けば、休憩後の勉強効率は上がると言えるでしょう。
音楽療法のCDを監修した医師の藤本幸弘氏によると、ドーパミンの分泌を促すには、オーケストラ演奏によるクラシック音楽が特におすすめだそう。さまざまな周波数の音からなる複雑な旋律が、深い感動を呼び起こし、ドーパミンを放出させるそうです。
どうもやる気が出ないな……というときは、いさぎよく休憩をとりましょう。そして「何を聴こうかな」とワクワクしながら好きな音楽を選んで、聴けば、やる気を思いっきり高められるはずです!
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ご自身の心や身体のコンディションに合わせ、最適な休憩法を選んでみてください。そうすれば、休憩後、勉強のパフォーマンスが格段によくなることでしょう。
【ライタープロフィール】
こばやしまほ
大学では法学部で憲法・法政策論を専攻。2級FP技能検定に合格するなど、資格勉強の経験も豊富。損害保険会社での勤務を通じ、正確かつ迅速な対応を数多く求められた経験から、思考法やタイムマネジメントなどの効率的な仕事術に大変関心が高く、日々情報収集に努めている。
(参考)
Sleep Styles|集中力は仮眠で回復!集中力アップの方法5つ【医師監修】
東洋経済オンライン|午後も全集中で仕事ができる「上手な仮眠」の掟
FYTTE|ドクターが解説! 目を閉じるだけで睡眠不足を補える!? 睡眠の質を上げるヒント
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日経ビジネス電子版|高価なイスでも座りっぱなしだと体が疲れるのはなぜ?
パラサポWEB|スポーツで頭がよくなる? 最新脳科学が解き明かした、スポーツと脳の意外な関係
AFPBB News|好きな音楽にワクワクする原因はドーパミン
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