苦手な人ともいい関係を築きやすくなる「2つの思考法」。まずは自分の○○を可視化しよう

苦手な相手ともいいチームワークで働いている人たち

「誰とでも円滑にコミュニケーションをとりたいのに、あの人とだけは関わるとどうしてもイライラする」
「人間関係に神経を使うことが多く、仕事の効率まで落ちてしまう」

苦手な人と関わって感情が乱され、仕事に100%の力を発揮できなかった経験はありませんか? いつでも全力を出したいのに、感情の問題で仕事に影響が出てしまい、どう対処すべきか悩む人も多いでしょう。

この記事では、苦手な人ともいい関係を築き、仕事のパフォーマンスを上げたい人に向け、自分の感情をうまく管理できるようになる思考法を紹介します。

【ライタープロフィール】
澤田みのり
大学では数学を専攻。卒業後はSEとしてIT企業に勤務した。仕事のパフォーマンスアップに不可欠な身体の整え方に関心が高く、働きながらピラティスの国際資格を取得。現在は国際中医師合格を目指し毎日勉強している。勉強効率を上げるため、脳科学や記憶術についても積極的に学習中。

(参考)

朝日新聞EduA|効率的な学習やセルフコントロールを実現する「メタ認知能力」、どう高める?
熊平美香(2021),『リフレクション(REFLECTION) 自分とチームの成長を加速させる内省の技術』, ディスカヴァー・トゥエンティワン.
コグラボ|リフレーミングとは?練習方法を徹底解説。具体例や一覧も紹介
STUDY HACKER|相手と意見が合わなくても「成果につなげられる人」は “この4つ” を大切にしている

1. 物事を「多面的」にとらえる

「相手の嫌な面ばかり目につき、ストレスがたまる」
「よくないとわかっているけれど、自分の感情を抑えられず、苦手な人に嫌な態度をとってしまう」

苦手意識が募って人間関係にすれ違いが生じ、仕事に悪影響が出てしまう……そんな事態に陥ったときは、“物事のとらえ方” を見直すことが解決の糸口になるかもしれません。

大阪大学と鳴門教育大学の名誉教授で心理学専門の三宮真智子氏いわく、「私たちにストレスを与えるのは出来事そのものではなく、その出来事をネガティブに捉えるという解釈の仕方」なのだそう。(カギカッコ内引用元:朝日新聞EduA|効率的な学習やセルフコントロールを実現する「メタ認知能力」、どう高める?

たとえば、ミスが多い同僚Xさんに対し、AさんとBさんが次のように考えたとしましょう。

Aさん:「Xさんはいつもミスばかりする。本当に迷惑だ!」
Bさん:「Xさんは負担の多い仕事をたくさん抱えているから、余裕がないのかもしれない」

Aさんは、Xさんの「ミスばかりする」という一面だけを見て、ネガティブにとらえています。一方Bさんは、Xさんの置かれている状況を多面的に考慮し、ネガティブな感情をいったん脇に置くことができていますよね。

AさんとBさんは物事の受け止め方が違うので、ストレスの感じやすさも違うはず。この先Xさんとうまく関係を築けるのはどちらなのか、想像するのもたやすいでしょう。

このように、物事を多面的にとらえられるかどうかで感情の在り方が変わり、それによって人間関係の良し悪しも変わってくるとと言えるのです。

とはいえ、物事を多面的にとらえることを難しく感じる人もいるでしょう。そんな方が実践してみるといいのが、「Want のリフレーミング」です。臨床心理士・公認心理師で心理カウンセリングルーム代表の藤本志乃氏は、下記のように説明します。

Wantのリフレーミングとは、現状から理想の状態へと視点を変えるやり方です。具体的には、「それなら(あなたは)どうしたい?」という質問を通じて、自分の望みを明らかにし、そのための行動を模索します。

(引用元:コグラボ|リフレーミングとは?練習方法を徹底解説。具体例や一覧も紹介 ※太字は編集部が施した)

目の前の嫌な状況ばかりにとらわれず、「自分はどうしたいか」を考えれば、新たな視点を得られるのですね。

「自分はどうしたいか」を考えることで得た新たな視点

筆者には以前、詮索好きな同僚との関係に強くストレスを感じて出勤が憂鬱になり、モチベーションが下がった経験があります。当時を思い出しながら、Wantのリフレーミングを実践してみました。

【現状】仕事に関係ないプライベートな詮索ばかりされ、面倒だし、毎日会うのでストレスがたまる。

 ↓(それならどうしたい?)

【理想】気持ちよく働き、仕事に集中するためにも、職場の人とは節度をもった距離感で付き合いたい。

 ↓(そのためにできる行動は?)

【行動】「プライベートな話をするの苦手だから、ごめんね」と伝えてみよう。

Wantのリフレーミングを実践してみると、「それならどうしたい?」という自問により、当時のネガティブな感情から離れ、冷静になることができました。

さらに、「私といい関係を築こうとしてコミュニケーションをとろうとしてくれたのだろう。価値観が違っただけかもしれない」と、それまでの考えを直すきっかけも生まれたのです。自分の望みの可視化によって、状況改善のための建設的な視点を得られ、嫌な状況から目を離せたのだと思います。

また、「やめてほしい」と心の中で相手に求めるばかりで言葉にしていなかったことにも気づき、自分が改めるべき点も明確化しました。我慢するばかりでは状況は変わりませんよね。

もし、相手への苦手意識などのネガティブな感情のせいで仕事に悪影響があるなら、目の前の状況をどうしたいのか自問してみると、別視点から状況を改善できるかもしれません。

物事を多面的にとらえて考える女性

2.「自分の価値観」を可視化する

人の数だけ意見があります。そのぶん、チーム一丸となって仕事を進めていくのは大変ですよね。

時には、苦手な人と意見が対立してしまい、お互いに歩み寄れず、いつまでも平行線で話し合いにならないこともあるもの。できることなら傾聴したいけれど、相手に対する嫌な感情が邪魔して、うまくいかない……というときは、「リフレクション」を試してみるといいかもしれません。

リフレクションとは「​​自分の内面を客観的、批判的に振り返る行為」だと話すのは、昭和女子大学キャリアカレッジ学院長の熊平美香氏。(カギカッコ内引用元:熊平美香(2021),『リフレクション(REFLECTION) 自分とチームの成長を加速させる内省の技術』, ディスカヴァー・トゥエンティワン.)

“苦手な人の意見を聞いて、自分はどう感じているのか”、“本当に自分の意見だけが正しいのか?” と振り返りができれば、対立する意見からも学びを得ることができます。さらに、先述の物事を多面的にとらえることにもつながるはずです。

とはいえ、それができないから悩んでいるんだ……と感じる人もいるでしょう。そんな方におすすめしたいのが、「自分自身の意見がどこから出てきたものなのかを知る」ために、「意見」「経験」「感情」「価値観」を切り分けて可視化する「認知の4点セット」です。

意見:あなたの意見はなにか?
経験:その意見に関連する経験(知っていることも含む)はなにか?
感情:その経験にはどのような感情がひもづいているか?
価値観:そこから見えてくる、あなたが大切にしている価値観はなにか?

同氏によると、「相手の意見、あるいは自分自身の意見がどこから出てきたものなのかを知ることで、客観的視点をもつことができ、リフレクションがしやすくなる」のだとか。(カギカッコ内および枠内引用元:STUDY HACKER|相手と意見が合わなくても「成果につなげられる人」は “この4つ” を大切にしている

筆者が同僚との関係に悩んだ経験を先述しましたが、どうやら当時同僚は、「積極的に自己開示することが人間関係を築くうえで大切」だと考えていたようです。筆者はこの考えに違和感を覚えていたため、「積極的な自己開示」に関する認知の4点セットを紙に書き出し、自分の考えを深掘りしてみました。

こちらが、書き出す前の状態です。

自分の価値観を可視化するリフレクション実践のためのフォーマット

(画像は筆者作成)

考えを整理し、書き出した結果がこちらです。

自分の価値観を可視化するリフレクション実践画像

(画像は筆者作成)

筆者の場合、紙を使って気持ちを整理しましたが、スマートフォンのメモ機能などを活用してもいいと思います。

実践してみてわかったのは、このテーマに対する意見は明確でも、そこから導き出される価値観は不明確であること。言語化はとても難しかったのですが、意見をもつきっかけとなった出来事、そのとき感じた気持ちを思い出しながら書き出すうちに、思考が整理され、これまで認識していなかった価値観を見いだせた気がします。

また、価値観が明確になると、自分の意見を相手にぶつけるだけではなく、お互いに歩み寄るきっかけを得られるのではと感じました。当時の筆者は、もやもやするばかりで、自分の考えをうまく言葉にできませんでした。しかし、価値観が明確になったいまなら、「私はプライベートを話すのが心理的に負担で、居心地が悪くなってしまいそうです」と自分の気持ちを伝えられるでしょう。

自分の価値観を整理できていれば、苦手な人と対立しても「私はこんな価値観のもとにこんな意見をもっているのだけど、あなたはどう?」と意見を出し合えるはずです。互いを知ることで、新たな視点から学びを得られる可能性もあるでしょう。問題に直面したときは、チーム内で認知の4点セットを実践してみるといいかもしれませんね。

意見を出し合って互いに歩み寄るビジネスパーソンたち

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自分のことはよくわかっているつもりでも、客観的に自己を振り返るのは難しいもの。苦手な人ともうまく付き合って仕事していくためには、自分自身を深く振り返る必要がありそうです。

職場の苦手な人との関係改善に、この記事が少しでもお役に立てたら嬉しいです。

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